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そろそろ日本酒は「賞味期限」から逃げられない。

一昔前に比べて味わいが多様化してきた日本酒

昔ながらの日本酒には無いような、果物のような華やかな香りや甘さがあったり、爽やかな酸味をウリにしたものも数多く登場していますね。
また春酒や夏酒などのように、その季節に合わせて様々な商品が店頭に並んでいきます。

色んな商品があって楽しいのですが、ここで問題も出てきています。

その問題について、今回は書いていこうと思います


そもそも賞味期限とは

袋や容器を開けないままで、書かれた保存方法を守って保存していた場合に、この「年月日」まで、「品質が変わらずにおいしく食べられる期限」のこと。


しかし、日本酒は賞味期限の表示義務が無く、製造年月の記載義務しかありません。この製造年月はお酒が出来たタイミングではなく、「販売の意思をもって瓶に詰めて製品化した時」なので、製造からどれだけ経過したものかはラベルに記載が無い限りはわかりません。

なら大丈夫じゃないって思うかもしれません。
ただ、上記の記事に書いてあるようなお酒は「一般的な」日本酒、特にコンビニなどで見かけやすい大手酒造メーカーの商品に当てはまるものです。
現在の地酒シーンにはそのままは当てはめられないと思うのです。


今、何が問題なのか

・風味が変化している場合
ほぼすべての日本酒が冷蔵庫保管されていたり、常温保管されていても熟成タイプだけだったりと、現在の地酒専門酒販店ではほとんどの場合適切な管理がなされていて、購入した時点で風味が悪くなっていることはほとんど無くなっていると思います。
とはいえ、少し前に話題になっていた薄青瓶であったり、常温保管されているものの一部では出荷当初に比べると多少変化している可能性は無いとは言えません。
また、無濾過生原酒のようなフレッシュさが特徴的な商品の場合、製造から数カ月すると大幅な味わいの変化が予想される場合もあります。

酒質や味わいは健全であっても、素人目に見たら「こんな味なの?」と思われる可能性もありますね。

当初の味わいから変化してしまう場合、そのボーダーラインは「賞味期限」と言えるでしょうか。

・売れ残っている商品だった場合
「旬」を逃した季節商品など、味わいに特に問題は無いけれど本来の目的から外れたものの場合はどうでしょうか。
春酒や夏酒というように時期を限定して造られたお酒も色々ありますが、その時期を越えてしまうと味わいに問題が無くてもその商品の価値は下がるでしょう。
酒販店に卸してからある程度経過したお酒の回収や交換をする、という事を行っている蔵元さんもあります。
先日は宮城の新澤醸造店さんでのニュースがありましたね。この時に廃棄になっていたものは春の季節商品のにごり酒。ニュースが流れた時が5月下旬、春は終わったとも言える時期でしょう。

想定していた飲用シーンを逃してしまった場合、これも「賞味期限」と言えるでしょうか。


ただしお酒には「熟成」の概念や需要もあるため、常温保管や味わいの変化が悪いことだとは一概には言えません。
むしろ熟成は今後より需要が増えてくる可能性もあります。

ただし、製造元や小売側がそれを理解した上で対策を打てているのかどうか。

今の日本酒を見ていると、正直疑問なところではあります。


あなたの「美味しい」はどこまでですか?

日本酒に限らず、お酒というものは嗜好品であるがゆえに「分かっている人は分かっている」という安心感がどこかにあるのでしょうか。
お酒のパッケージは、その酒類をよく飲む人に向けた商品説明やラベル標記であることが多いです。

そのラベルには法律で定められた記載義務がある事柄しか書いてないことが多く、
どのような味で、
どう造られたのか、
どう扱ったらいいのか、など追加の情報が具体的には記載されていないので
よく知らない人には非常に不親切に感じるでしょう。

そういった商品を目にすると、失礼かもしれませんが素人目線にすると
「造ったものをただ出荷しただけでは?」
と思う部分はあります。

そのお酒が飲み切られるまでにどのような経過を辿るのか

開栓してからの変化が早い日本酒で、
どこまでの味わいの変化がそのブランドとして許容されるのか。
また、この頃までには飲んで欲しい、というような期限はあるのか。

その商品の「美味しいの期限」は、販売や提供側に丸投げしていいものでしょうか


全てのものに書く必要は無いと思います。

常温で流通しても大丈夫であったり、開栓後すぐではなくしばらくしてからが本領のお酒もあります。

ただ、開けたてが一番美味しいと感じるものや「旬」のあるものなどは、そういった期限は設けてもいいのではないでしょうか。

この記載をすることで、扱う側からはもしかしたら扱いにくいと感じるかもしれません。
しかし、そういったことに目を向けることで変わってくるものもあるのでは。そう思っています。


数多くある「ただ美味しい日本酒」から頭一つ抜け出せる可能性が、そういう小さな所にあるかもしれませんね。

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