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   『春の海』

葉山の文学シリーズ その2


かいのどうぶつえん 園長です。今回は、世界に誇る箏曲の”宮城道雄”が作曲した『春の海』(Spring Sea)です。
1894年(明治27)、神戸に生まれた宮城道雄は8歳で失明。11歳で生田流箏曲の免許皆伝を受けました。以降、西洋音楽の要素を邦楽に導入し、新しい音楽世界を開拓。箏(こと・そう)の天才的な演奏家として、また作曲家として活躍。1929年(昭和4)に箏と尺八の二重奏曲『春の海』を発表。3年後、フランスの女流ヴァイオリニスト、ルネ・シュメーと協演し、レコードも発売され、世界的な名声を得ました。また随筆家・内田百閒のすすめで1935年(昭和10)に、口述筆記の随筆集『雨の念仏』を出版。葉山真名瀬(しんなせ)の、熊野神社近くの別荘が舞台の名作など、川端康成から文才を高く評価されました。
ずっと後の1944年(昭和19)に、戦火を避けて葉山別荘に疎開し三年余。葉山の自然を視覚以外の全身で満喫したものの、早朝バスに乗れずに逗子まで歩いたり、満員の横須賀線での東京往復に苦労したそうです。そして、1956年(昭和31)6月25日未明、関西演奏旅行へ向かう途中、列車から転落、逝去されました。享年62。葉山別荘は補修され、今も大切に遺されています。

箏を奏でる宮城道雄
葉山別荘門

2003年の開園時より、貝たちとは「割らない」「塗らない」「削らない」と固く約束して制作しています。園長

           <貝の配役>
★宮城道雄(箏):アマオブネガイ/スズメガイ/フジノハナガイ/スガイ/ハナマルユキ/ヒメキリガイダマシ 他
★吉田晴風(尺八):アマオブネガイ/スズメガイ/フジノハナガイ/スガイ/ハツユキダカラ/ツノガイ 他
★箏(こと・そう):オオマテガイ/ガンガゼ/アカウニ/タコノマクラ ★屏風:ヒオウギガイ ★床:ホタテガイ

☆受賞歴:東京音楽学校(現東京藝術大学)教授就任(1937)/日本芸術院会員(1948)/第1回放送文化賞受賞(1950)
☆活動:作曲数400以上。十七絃、八十絃、短琴、大胡弓などの楽器考案。『雨の念仏』など随筆集多数。
☆箏と琴のちがい:箏は柱(じ)と呼ばれる可動式の支柱で弦の音程を調節し、琴は柱がなく弦を押さえる位置で音程を決めます。
☆余談:園長が葉山で生まれた年(1947)、宮城道雄は葉山別荘に住んでいました。今回、随筆を読み返し、視覚以外の聴覚・触覚・味覚・嗅覚を総動員して描写する、宮城道雄ならではのユーモアセンスを堪能。「眼の二重奏」など圧巻の随筆をぜひ、ご一読ください。
☆資料:『定本 宮城道雄全集』東京美術刊 上・下巻 (随筆209篇)
☆「宮城道雄オフィシャルサイト」(リンクフリー)
https://www.miyagikai.gr.jp

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