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PERFECT DAYSについての少し暗すぎるかもしれない感想

どうも、暗い三十代づかづかです。
PERFECT DAYSという映画をみて、観終わった後、なんかつまらない映画だったなと思いました。しかし、数日経って心境に変化、というよりも「あれってもしかして、、、」という思いが募るようになったので、一週間位経った今、発散しようと思って書いています。

ガンガンネタバレするので、未視聴の方は観てからの方がいいかもしれません。

また、この映画については、僕の思った感想と、違う感想がたくさんあります。僕の感じ方が間違っているのかもしれません。
先に、全然違う角度の面白い記事を貼っておきます。
1つが非常に好意的に評価する感想です。

こちらは、映画の成立背景も含めた解説記事です。

さて、自分自身の感想に入っていきます。

最初に、最後のシーンから話を始めようと思います。エンドロール後に「木漏れ日」についての「外国語に翻訳できない言葉」的な解説が出てきます。主人公・平山は、仕事の合間、ランチの時に、写真で近くの神社で木漏れ日の写真を毎日撮り、現像し、いい写真を残すということを趣味にしています。これが僕にはかなり重い意味を持つように感じました。
そして、エンドロール前の主人公・平山が車を運転する時に見せるなんとも言えない表情です。悲しいような、寂しいような、諦めているような、少し嬉しそうな、僕の言葉では表現できないような表情でした。
今の僕には、これは、主人公が、人生の「木漏れ日」、一瞬で離れてしまう瞬間を掴み損ねて生きている人間にしか思えないのです。

主人公の趣味は、現像した木漏れ日の写真のうち、いい写真を残すというものです。それは、逆説的に、自分の勝手な判断で、木漏れ日に価値判断をして、気に入らない瞬間を捨てるという行為に他なりません。
主人公の姪が家出して、主人公の仕事についてきた時、彼は彼女の写真を撮ります。そして、それを現像した時、普段は袋から写真を無造作に引き出して写真を選別するところ、その現像した袋から写真を取り出せなくなります。それは虚しさに気づいたということではないかと僕は思うのです。
そう思った時に、記憶にある色々なシーンが繋がるような気がしました。

次に、上で述べた、運転するシーンの前には、主人公が通い好意を持っている飲み屋の女将さんの元夫が主人公と問答をするシーンがあります。元夫は再婚していたが、癌に冒されており女将さんのところにやってきたといい、主人公と「人の影と人の影が重なった時に、その影が濃くなるか」という話をして、主人公は軽妙に「濃くなるに決まっている」と元夫を励まします。
これは木漏れ日と対比されているような感じがします。人との関係を持つときにその人の形をしたある種形を持った影と影が重なって意味が出てくる、実感を持って現れるはずだと主人公は主張しており、一方で主人公より人生の階段を登っている元夫はそうした実感は持てないでいます。

別のシーンでは、主人公は姪に対して、姪の母親(おそらく主人公の妹)とは別の世界を生きていて、交われないと語っており、この主張に僕は違和感を覚えました。主人公は人との関係において消極的な態度を見せ続けていたからです。

このシーンの主人公はやけに軽妙で、つまり、やはり逆説的には、元夫は「木漏れ日」を掴んできて、でもそれは掴んだという実感があるものではなく、なんとなく幸せに生きていたが、死を間近にして何も残せなかったのではないかと不安になっているという状態で、主人公は「影」を求めて自分は人との関係を築いていないのに、人と関係を築けば実感があるはずだと主張している状態だったのではないでしょうか。

最後に、この「PERFECT DAYS」というタイトルについては、皮肉と達観が含まれているのではないかという感想を覚えました。

主人公はアナログなカセットテープで音楽を聴き、古本を読んで生活しています。
カセットテープを愛好し、Spotifyもサブスクも知らない生活は、一瞬ステキに見えますが、詳しそうな仕事の後輩に対しても無口で没交渉的だったことを感じさせます。
また、古本については、姪と話した時に内容を覚えていないような態度や、古本屋のおばちゃんの蘊蓄をスルーしている様子から、寝るために読んでいただけだったのではないでしょうか。僕も普段寝つけない時に深夜ラジオをつけて聴くともなく過ごすことがあります。

そんな文化資本に守れて、木漏れ日の写真を撮り、真面目に働く日々。その程度が、主人公にとってはすでに最良であり、完全な日々ということなのではないか、でも主人公はそれを前向きに守っていかないということなのではないか、と思ってしまったわけです。

本当に、僕自身の生活じゃないかとこの数日、頭を悩ませてましたので、少しスッキリしました。
暴力的にもなれず、自分の愚かさもわかっていて責任転嫁もできない、そんな日本版の「タクシードライバー」、そんな印象をこの映画に対しては持ちました。

締めにこの映画に近いかもしれないYouTubeの動画を載せます。僕の感想が暗すぎたので、少しでも笑っていただければ。

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