東大ロー 2021(令和3)年度 再現答案 公法系【69点】

公法系 69点

第1 設問(1)(以下この設問において行政事件訴訟法は略)
1 37条の5第1項にいう「償うことのできない損害」とは、金銭賠償などにより事後的に原状回復を図ることが困難なほどの損害をいう。
 (1)本件で、申立ては本件集会をふれあい広場にてするために行われている。本件集会
は、皇室典範の改正により、男系女性天皇を肯定することについての是非を問うために行われようとしているものである。そして、このような皇室典範の改正は、極めて政治性の高い事項であり、直近の世論調査で肯定派が否定派を上回ったとはいえど、反対派も有力であることから、その後に世論の変動が生じることが十分に考えられる。また、本件集会のように肯定派という一方の集会について開催を許可しなければ、否定派に世論が傾くことは十分に想定できる。そして、このような世論の変動は、改正により皇室典範の内容を変えてしまいうる性質を有しているから、事後的に金銭で原状回復を図ることが困難であるといえる。
 (2)従って、本件申立てを認めなければ、「償うことのできない損害」が生じうると言える。
2 そして、本件申立ての期日は9月3日であり、集会の期日は同月23日と右損害を「避けるため緊急の必要がある」といえる。
3 よって同条第1項にいう「償うことのできない損害を避けるため緊急の必要がある」ときにあたる。
第2 設問(2)(以下、憲法は略)
1 Y市の主張の前提として、そもそも判例は、申請者に集会の自由(21条1項)が保障されることを前提に、市民会館の施設利用に関して、申請者がその設置目的に適合する利用方法で当該施設を利用する場合、原則として利用を拒んではならない、としている。
2 そして、Y市の主張としては、A地区ふれあい広場はA地区ふれあい広場条例(以下本件条例)1条にて、「地域コミュニティ活動の場を確保し、その活発な展開と効果的な運営に寄与することにより心触れ合うまちづくりを推進するため」としていて、集会を開くことは目的としていない。そうすると、本件申請は、目的に適合しないため、上記判例の射程が及ばないとする。
3 一方で、X側としては、ふれあい広場は、本県条例の目的としては「集会」することを含んでいないものの、実質的には、パブリックフォーラム、設置がなされる限りは集会を認めるべき施設として、「公の施設」(地方自治法244条2項)に該当すると意見している。
4 では、右Yの主張は認められるか。
(1)まず、「集会」(21条1項)とは、一定の目的のため不特定または多数人が一時的に集合することをいう。本件集会は、皇室典範改定の賛成について伝えるという目的のもと、Xら多数人が一時的に集合するため、「集会」にあたる。
よって、Xらに集会の自由が保障される。
(2)では、ふれあい広場は、設置されたが故に集会を認めるべきパブリックフォーラムに該当するか。
本件で問題となるふれあい広場は、Y市が設置・管理する広場であり、Y市の市街地にある公園・広場としては大きい。また、実際に祭り、野外カラオケ大会等の催しが主催されていることから、一定程度の規模の集会を開きうるほどの広さを有していたと言える。もっとも、同広場には、屋根付きの休憩スペースやジャングルジム等の遊具も備えており、普段より市民の憩いのスペースとなっていたこと、及び、周囲が閑静な住宅街に囲まれており、集会の用に適しているとは言えず、集会の用に作られたとは言えない。また、実際に集会の用に供されたという事実はない。
よって、ふれあい広場は、設置されたことを持って集会を認めるべきパブリックフォーラムには該当しない。
(3)よって、Y市側の主張するように、ふれあい広場は設置目的として集会を開くことを想定していない以上、本判決の射程が及ばない。
第3 設問3
1 では、本件申請は許容されるべきか。
2 上記のように、Xらに集会の自由が保障されている。
3 そして、本件申請が拒否された場合、Xらはふれあい広場での集会ができなくなるから、Xらの集会の自由が制約される。
4 では、制約が正当化されるか。
 (1)まず、本件集会が開かれれば、皇室典範の改正及び、男系女性天皇の賛成という政
治的な事項に関して、意見表明を通じて、自己の人格形成に資する自己実現の価値を有する。また、政治的な内容についての集会であるからこれが開かれることにより民主制に資するから、自己統治の価値を有する重要な権利である。
 (2)もっとも、上記のように、本件ふれあい広場は「公の施設」に該当しない。そうすると、「行政財産」(地方自治法238条の4第7項)として、その利用を許可するか否かについては、行政庁の広い裁量が認められる。そうすると、他事考慮・考慮不尽など、その裁量の逸脱・濫用が認められる場合には、その申請は正当化されないと解する。
 (3)本件で、上記のように、ふれあい広場は、その設置目的は集会を開くことを含まず、また、その周囲の状況からも、音を発する集会を行うことが適切ではない。
また、XはY市に設置されているひばりヶ丘公園を使うようにY市側から打診されているところ、これを拒否した上でふれあい広場での使用許可を申請している。ひばりヶ丘公園という代替施設があり、そこでも本件集会の目的を達成しうる以上、ひばりが丘公園があることを考慮しても多事考慮とは言えない。また、現にインターネット上で本件集会に反対し、実力行使を厭わない旨の意見もあったことからすると、本件集会を拒むことにつき、相当性もある。
 (4)従って、裁量の逸脱・濫用はない。よって、申請は認容されるべきではない。
以上


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