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HSPな自分が励まされた桂宮治の生き方

「あんな“笑いの塊”みたいな人が、元々は人前で話すのが大の苦手……?」

TVer限定配信の番組『最強の時間割』で、落語家の桂宮治が自身の半生を語っていた。(TVerアプリにて無料で視聴可能だが、配信終了時期が明記されていないので、ご覧になりたい方は是非お早めに。)
宮治といえば、あの『笑点』のメンバーに抜擢されたのをきっかけに知った人も多いのではないだろうか。

自分もまだ生の高座で観たことはないと記憶しているが、しかし『笑点』メンバーになる前からテレビ等で目にしており、気になっていた落語家の一人だった。
元は化粧品の実演販売(ワゴンDJ)でかなりの好成績を残していた営業マンであり、31歳にして落語家のキャリアを築き始めたという経歴。“令和の爆笑王”などと言われ、小学校に赴き小学生から落語で大爆笑をかっさらう腕前。どこでどの落語家が発言したことだったか失念してしまったが、宮治の笑いを「脇の下をくすぐるような笑い」と評していたのも聞いた。
そうした情報を知るにつけ、いつか機会があれば生で落語を聴きたいと思わずにはいられなかった。同時にこんな推測もしていた。幼少期の宮治はクラスのムードメーカー的存在で、積極的に人前に出てひょうきんな振る舞いをしているタイプだったのではないかと。

そんな宮治が『最強の時間割』で、「元々は人前で話すのが大の苦手」「人見知り」「人嫌い」と語った。さらには学校に行っておらずカウンセラーの面談を受けていたそうだ。
衝撃を受けた。現在の姿から想像するものとはあまりにもかけ離れていたから。

続けて宮治は「人嫌い」な理由について、人と会うと「この人は何を考えているんだろう」「僕のことをどう思っているのか」と永遠と考えてしまって、人と会わない方が楽だからと語った。
さらに衝撃を受けた。急に親しみが湧いたから。自分の場合は「人嫌い」ではなく「人間観察好き」の方向に向いたとはいえ、考えすぎる性質も考える内容もあまりに同じだった。きっとHSP(人一倍敏感な人)であるがゆえに起こるものだと思う(宮治が実際そうであるのか、そう認識しているのかはわからない)。少なくとも生きるのに人一倍、頭と神経を使うタイプだ。

宮治はそうした性質を持ちながらも、それを「今お客さんはこう思っているだろうから、この方向に導いてあげればいいんじゃないか?」と、客の心を掴むための武器にしていったそうだ。

ここまで聞いて、自分の心に光が差したような気持ちになった。
短所だった部分を上手に活用するという発想の転換ができて、かつ実践していることは本当に素晴らしく、尊敬する。考えることは出来てもその通りに動くことが出来ないのが、今の自分だからだ。
けれど、今の自分にも、無理に変わろうとせずとも“今の自分のままで”良い方向に向かえる可能性があると知ったことが、意図せず自らにとっての希望の光となった。

一方で自分は、3年前から大学で縁のあった先生にお声がけいただき、授業でゲストスピーカーをするようになった。その時に、自分の体験談などを語る中で「以前は、今こうして人前で話しているのはありえないと思うほどのあがり症でした」と話すと、毎回複数の学生から「私もあがり症なので勇気が出ました」という趣旨のコメントが返ってくる。
こうしたコメントを返してくれる学生から見たら、まだまだ未熟な自分の話もまた、その学生への希望の光になれているのかもしれない。自分にとっての宮治のように。
とするならば、宮治のおかげで、自分の話を聞く学生側の気持ちの擬似体験も出来たのかもしれない。自分がしていることもまた意義のあることなのかも、と、頭ではなく体感で知ることが出来た。

個人的には、自らにHSPの傾向があると知っても、HSPであることが短所だとは思ってこなかった。しかし、マイナスな方向に作用する場面は山ほどあった。年数を経て性質と上手く付き合うことは出来つつあっても、上手く使いこなすのはとても難しいことのように感じていた。
HSPの共感性の高さはカウンセラー等のサポート役になるような仕事、つまりどちらかといえば裏方の仕事に向くとされがちだ。しかし、宮治はワゴンDJにせよ落語家にせよ、完全に表舞台に立つ仕事で成果を上げている。「人の気持ちに繊細になれる性質なのだから、人相手の仕事であれば表舞台に立つ仕事でも生かせる」と言ってしまえば、それは間違いではない。だが、表舞台に立てば繊細さを上手く使うより先に周囲の目が気になりすぎて、生かすより先に潰れてしまうのが関の山だと考えていた。だから宮治のエピソードを知った時、驚かずにいられなかったわけだ。

使いこなしさえすれば、HSPの性質を持っていても表舞台でも活躍出来る、落語家になれる人だっているのだと、可能性をぐっと広めてくれること。これは繊細さゆえにどんどん日陰に入っていきがちになるHSPにとって、とても勇気づけられるものだ。日陰も良いものだが、日陰にも日向にも自分のままでいられる居場所があると分かるのはもっと良い。

ところでちょうど昨日、またゲストスピーカーとして大学の教壇に立たせてもらった。いつもよりも前を向いて、学生の様子を視界に広く入れながら話が出来た。宮治のエピソードを聞いた後だったおかげだろう。

まだこんな自分にも、自分が思っているよりもやれることがある。そんな希望をごく純粋な気持ちで抱くことができた。


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