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神田伯山新春連続読み『畔倉重四郎』2024 1日目

講談師、神田伯山先生の新春連続読みの記録。

今年は6日間にわたって東京と名古屋で行われる毎年恒例の新春連続読み。その名古屋公演の通しチケットを入手し通うことになったので、個人の忘備録として毎日書いていきたい。

まずは参加前の個人的な気持ち。
先の記事でも書いている通り、昨年9月に出産した。妊娠中は講談も落語も平気で聴きに出掛けていたが、産後となるとそうもいかない。まして6日連続なんて……。
と思っていたのだが、6日間連続で予定の融通を利かせられる年は今年を逃したらもう当面無いから行ってこいと相棒が強くプッシュしてくれた。たしかに、一昨年は職場で勤務の融通を利かせてもらいまくって初参加したが、それは独り身だったから出来たこと。今後は育休復帰したら日頃から子どもの保育園や体調の都合で融通を利かせてもらわねばならず、それ以上のお願いなんてとても出来ない。

しかも今回の連続読み、悪人の話が生で聴ける。個人的に、伯山先生が悪人を演じるのを生で聴きたくて仕方がなかった。生で聴いたことないわけではないが、悪人が主役の連続読みは聴いたことがない。
もう今年を逃したら、連続読みフル参加は、子育て期間を考えるとあと20年くらい不可能かもしれない。

なので生後4ヶ月の我が子は相棒に託して通うことになった。(その代わり、相棒には「志の輔らくご」を聴いてこいとプッシュしたのでwin-winである……はず。)

さて前置きはそこそこに、いや既に長くなってしまったが、ここからようやく初日の記録に入っていきたい。

初日は前夜祭ということで、楽しい話が中心で盛りだくさんな会だった。弟子の青之丞さんが一席、そして伯山先生がなんと四席。
楽しい話をするのは、新春だからというのもあれば、楽しい話をしてから『畔倉重四郎』に入ると畔倉の悪人性がより際立つからというのもあるそうだ。

和田平助

話の内容が楽しかったのはもちろんだが、印象に残ったのはそこではなくて。青之丞さん、マクラや話の間の大学サークルの話などを入れられていて、しかもそれがおもしろくてすごいと思った。前座のうちにそれをさせる師匠の伯山先生もすごいなと。客席の反応もしっかりとキャッチして反応を返してくれるの、ああ前座でもプロなんだ、プロってすごいと改めて思い知らされた。
1年ちょっと前(といっても年で言えば一昨年)に相棒と東京に行った時、偶然、前座の神田派の講談師さん達の前座会があることを知って急遽行ってみたことがあった。そこで初めて見た青之丞さんは話を教わったままに忠実に、という感じだったので、それで今回のすごいなという感想につながった。どれだけの時間、芸と向き合って己を磨いているのだろう?そんなことを考えてしまった。
応援したくなった。

阿武松

ここから伯山先生の四席が始まる。正月に能登で大きな地震があったことから、そこに縁のある人物の話を、と読み始められた話。
その流れで出てくる人物が「ああ飯が食いたい」「飯が大好きだぁ〜」をひたすら貫くキャラクターで描かれているのだからおもしろい。気持ちの良い話ながら、そういうほっこり感もあって良かった。

出世浄瑠璃

http://koudanfan.web.fc2.com/arasuji/03-03_shussejyoururi.htm

これもおもしろくて気持ちの良い話。浄瑠璃を披露したのがバレたかと思ったら猪退治の話になっていて、どうするどうする?となっている二人の様子がとても楽しい。でもその二人が良い人で、立派に成長したから結果丸く収まるというのも昔ならではの良さだよなと。現代だったらこうはいかないんだろうなあ。

五貫裁き

http://koudanfan.web.fc2.com/arasuji/02-05_gokan.htm

これも描写がおもしろく、大笑いした。十中八九作り話だとしても、だったら大岡越前守の上手い裁きを考えた人って誰なんだ?と気になってしまう。知ろうとは思わないけど。
初めて聴いたので、裁きの内容を聞いた時は大岡越前守の思惑として、万右衛門の手を煩わせつつ、もし八五郎が全てを払い終えた暁には五貫文を八五郎に返すということかと思った。そんなところまで進展するはずがなかったどころか面白い展開になりすぎて楽しかった。

荒川十太夫

http://koudanfan.web.fc2.com/arasuji/93-02_arakawa.htm

中入りを挟んで最後の一席。義士伝をあまり聴いたことがない私だが、どうやら講談師の間では「名古屋で義士はかけるな」と言われているのだそう。なるほど名古屋近辺ばかりで聴いていると聴きようがないわけだ。東京に行った数度のうちには聴いたが。
中入り前まで笑っていたのが一転。気持ちよく張りつめた空気に包まれた。現代人には想像でしか分からない切腹の場面。“個人”の概念がなかったであろう時代の感覚は、今からでは計り知れない。にもかかわらず切腹の場面に美しさすら感じられるのだから不思議だ。
愛山先生曰く、義士伝は“別れの話”だから現代でも人気があるとのこと。マクラで伯山先生のお祖母様の話があったのも手伝い、その意味が少しかもしれないけれどわかった。少なくとも今までで一番よくわかった。伯山先生の著書で内容は知っていたけれど、生の講談で聴くとやはり重みが違った。


当日は見当たらず、翌日見つけて撮ったもの


さて、こんな盛りだくさんのラインナップの翌日から『畔倉重四郎』が始まっていく。
一体どうなっていくのか。わくわくしながら会場を後にした。


現状、自分の生き様や思考を晒しているだけなので全記事無料です。生き様や思考に自ら価値はつけないという意志の表れ。 でも、もし記事に価値を感じていただけたなら、スキかサポートをいただけるとモチベーションがめちゃくちゃアップします。体か心か頭の栄養にしますヾ(*´∀`*)ノ