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教習車を興味津々に見つめる女の子に手を振りながら思ったこと

教習車幕のバスを運転していると、けっこう街行く人の視線を集める。

しかも“女性ドライバー”が走ってるってことでか(運転席に座るとめっちゃ小柄に見えるのも手伝ってか)余計に注目されている感が。

そして、運転士は男性がやっているイメージの職業ってこと、小学校入学前にイメージ付けされている子もたぶん少なくないと思う。
職業的ジェンダー観ってやつね。

ある日、信号待ちで右側車線に停まってきた車の助手席にいた女の子。すごく興味津々にこちらを眺めていた。
眺めていたのには、教習車への興味の他に、珍しい!って意味もあると思う。女の人がバス運転してる!って。
そんでもってその女の子、目を輝かせてたから、きっとその光景にワクワクしてくれてたんだと思う。

せっかくならその子に喜んでもらいたくて、目が合った時に(教官寝てるしいいよね!)って思って手を振ってみたらすごーく喜んでくれて、自分も楽しくなった。
(教官、寝ていていいのかってツッコミはここでは置いておくものとする……)

でもその時なんか直感的に、女の子に手を振って反応するかどうかで、その子の今後の人生なり人生観なりを変えてしまうような気がしたんだ。

手を振らなければ「珍しいなぁすごいなぁ」くらいで終わっていた女の子の気持ちを「すごい!かっこいい!私もなりたい!」くらいに変えてしまったかもしれないし。
バスは男の人が運転するものだとばかり思っていたかもしれない女の子に、手を振ることで新しい視点をより鮮烈な形で見せることになったかもしれない。

でもそういう心境の変化が起こるのは自分としては嬉しいこと。たまたま出会って手を振るだけのことで女の子の人生に責任を持つことは出来ないししようともしないわけだけど、あの「手を振る」は、女の子の中のジェンダー観を良い意味でぶち壊すものだった気がしたんだ。

あの子の中で、たぶん世界が広がる出来事になったんじゃないかなと思う。
大袈裟だと思われるだろうけれど、あの子の目を見ているとそう感じられた。

手ひとつ振るだけで誰かに喜んでもらえるなら、誰かの希望になれるなら。安全な場所でならいくらだって手のひとつやふたつ振りますよ。
教習中に調子乗るなって言われるかもしれなくても。


……とはいえ、バタバタと教習をこなしているうちに「教習車」として走れる時間もあと僅かになった。

あと3日後には、順当に行けばもうお客さんを乗せている。
ただ路線を覚えることとバスで走り慣れることばかりを頑張ってきた自分にとって、ちょっとあまりにも信じられないことだが、いつかはお客さんを乗せて、そしてひとり立ちをせねばならぬのは当然のこと。

お客さんを乗せるようになれば、もっともっとたくさんの出来事が起きて、考えることも増えると思う。

お客さんからは当然のように女性運転士として見られることになる。

女性運転士というだけでもまだ珍しいが、そんなものをさらに超えて走っていきたいのが自分だ。

どうだろう。
あの女の子が就職しようとする頃、社会は、男だろうが女だろうが、今よりは少しくらい自由に職を選べるようになるだろうか。

わからない。わからないけれど、男とも女ともつかぬ自分は、大きな車両でお客さんや街ゆく人達の視線を否が応でも集めながら、ただ走ろうと思う。

自分という存在を、社会の中にただ見せていこうと思う。

それだけのことでも、長い年月をかけていけば、なにか少しでも意味あるものになると信じて。

現状、自分の生き様や思考を晒しているだけなので全記事無料です。生き様や思考に自ら価値はつけないという意志の表れ。 でも、もし記事に価値を感じていただけたなら、スキかサポートをいただけるとモチベーションがめちゃくちゃアップします。体か心か頭の栄養にしますヾ(*´∀`*)ノ