よろしくお願いしまーす。カラーモデルをしに、初めての美容院に来た。

出迎えてくれた女性スタッフ。写真で見るより可愛いなーなんて思いながら席に案内される。

今日はカラーはどうしましょうか？

お決まりのフレーズ。私は準備がいいから、予め保存しておいた画像を見せる。…それではそんな感じでやっていきましょう！スムーズにカウンセリングが終わり、施術開始。

今日はどちらから来たんすか？

…すか？可愛らしい今時の女性だと思ったら、言葉遣いが男らしい。フランクな話し方だからか、緊張しいで人見知りな私でも目が無くなるくらい笑っていた。

どうやら、彼女は野球が好きなようだ。だが、よく聞くと野球そのものではなく、推しの選手がいるそう。

沖縄出身でめっちゃデブなんすよ〜！

ディスっているのか、好きすぎて愛のある言葉なのか。元々は、ジュノンボーイが好きで、その後はジャニーズ→EXILEの亜嵐くん→沖縄デブの野球選手の順でハマっていったそうだ。

地元の友達に、埼玉に行ってから変になったのかって心配されたんすよ〜

話を聞く限り、亜嵐くんとその野球選手は顔のタイプも体格も全く違う。それでも彼女はすごく楽しそうにフランクに話し続ける。

そんな話をしながら、施術も終盤。ドライヤーを当ててもらう。目を瞑り前髪を乾かし、後ろの方へ風が動く。

どうっすか〜？

そっと目を開ける。暗めブルーアッシュの透き通る髪色。満足である。……あれ？なんか

コンタクトがずれた

確実にずれた。目を開ける度ずれていく。今にも目から落ちてしまいそうだ。それでも、彼女はまた好きな野球選手の話を楽しそうにしている。

お疲れですか？

丁寧な言葉遣いで心配される。目からコンタクトが落ちるのを防ぐために目を瞑っていたのだ。いや、そんなことないですよ〜！この楽しい時間を止めたくない。変に心配されたくない。また、コンタクトがずれた。目を開けたからずれた。

落ちる手前で、目を閉じる。そんな戦いを15分程。今日はありがとうございました〜！ドアを開け、帰路に着く。お祭りの帰りで道路に人が沢山だ。道の片隅に止まり、そっと目薬をさす。