向日葵が好きだと言っていた貴女にとびきりのやつを買おうと最寄り駅の一つ手前で降りたのに、新幹線停車駅なのに駅前に花屋一つ無いとはこれ如何に

カーシェアリングで車を手配していたので山道をひた走る。途中花屋がないかキョロキョロしながら走っていたらネコチャンが飛び出してきて、ネコー危ないよ！と口に出して注意する。思った事は口に出す事が重要である。例え伝わらなくとも

40数km走ったのだが結局花屋は見つからず、コンビニだけは無数にあるので斎場まで残り数キロのセブンに停車。食欲はあるのかないのかわからないが、とりあえずおにぎりと野菜ジュースを買ってみる。全然食えるけど味はしないな、こういう時ってそういうもんだ

目的地にたどり着く手前、最後の最後に大きいドラッグストアと大きい電気屋があったので、一縷の望みを掛け入ってみる。花はなかった、最期に何か喜ぶ事をしてあげたかったのに。ごめんねグレーさん。

1時間前に斎場に着き、ご家族にご挨拶。こんな時のセオリーだと生前お世話になったと伝えるものなのだろうが、「生前」なんて口に出すと、現実になってしまう気がして「あの、大変お世話になったものです、タカナシです」と伝えるのが精一杯である。
御霊前へ。お顔を拝見するのがこれまたセオリーなのだろうが、今は無理。こんな弱い俺もいる

お焼香を済ませる。
遺影にはダブルピースの貴女が。
個展の時の写真のようでバックに魔獣が写っている。凄くいい写真だ、素敵な笑顔だ

家族葬なのに俺なんかが来てよかったのかと思ったが、ご家族に暖かく迎えられ、改めてご挨拶をする。
伺っていた通りの、本当に気さくで温かいお人柄のお父様。「グレーさんはお父様の事ずっとご心配されてましたよ、怪我した時とか」と伝えると、「塀から落ちた時のやつか、あいつに電話して救急車呼んでもらってな〜」と、それ全まじゅらーが知ってるやつですお父様。病人のくせに人の心配ばかりで、って、それも全まじゅらーが知ってるやつで

大きいバイクはもう危ないからスーパーカブを買ってプレゼントした話、LINEのグレーという名前をお兄様に茶化される話、スタンプ作ってると打ち明けた時に「お姉ちゃんの作ってるのこれでしょ」と妹さんがうさまるを見せてきた話、全部みんな知ってる話だ

時間通りに葬儀が始まり、首から手ぬぐいをかけ、お清め豆腐と清酒を一人づつ。なんだか全然知らないしきたりだが、わかってる体で進める。

故人の旅支度を整える。髪を梳く時、カナサシさんは「俺が触ると多分怒るから」と言って泣き笑い。あんた本当によくやってくれたよ、あんたがいたからグレーさんも少しは安心して逝けたんじゃないかな。本当にありがとう

最期のお別れ。一緒にいれてあげたい物を、と促され、俺は家から連れてきたすあまとすあまのチビを。
グレーさんが天国で寂しくないように、「かあちゃんを頼むぞ、よろしくな」と伝えたが、言葉になっていたかな？
でもすあま達には伝わっているはずだ、ずっと一緒にいた家族だから

ツイキャスで、グレーさんに「うちの等身大の名前はすあまとすあまのチビです」って言ったら「呼び方可愛いな」って。
会うのは初めてだけど、お前達のかあちゃんだ。ちゃんとかあちゃんに挨拶できるよね、すあまです。すあまのチビです。ってね

ご家族も等身大のあざこざをご用意されていたので4匹の魔獣と、沢山のお花に囲まれて、最期のお別れ。
「グレーさんが好きな向日葵買ってこようと思ったんだけど、売ってなかった」と訳の分からない挨拶をする俺。何やってんだアホか

蓋棺。火葬場へ、グレーさんの火葬場は「虹の間」
火葬を待っている間に、ギャラシャダイのお姉さんが「今年の壁紙のテーマ、虹ですよね」と。

グレーさんの掛ける虹の袂にはやっぱりあざらしさんがいるんだろうな、「オレだよ」って、ね

火葬を待っている間に、ご兄弟が「お兄ちゃんって、お姉ちゃんのお友達からブラックさんって呼ばれてるらしいよ」って言ってて、「なんでですか、こんなに清い心の持ち主なのに」ってお兄さん笑ってた
お父さんからは「あいつが生きた証に」と画集を近所のお店に置いてもらった話を聞いた。

グレーさんが旅立っても、グレーさんが残した生きた証はいつでも俺たちを励ましてくれる。絵文字で、着せ替えで、イラストで、キーホルダーで、ぬいぐるみで、缶バッチで。　　

俺たちは「ひとくん」だ

いつでもあざらしさんのそばにいる、ひとくんだ

励まされ、喜び合い、いつも楽しく、これからもずっとあざらしさんと一緒に生きていける。
そして貴女の残したあざらしさんスタンプは、いつでも大胆かつ繊細に私たちの気持ちを届けるよ。
あざらしさんスタンプは、いつまでも大胆かつ繊細に私たちの気持ちを届けるよ

今までありがとう、おやすみなさいグレーさん

でも俺寂しいよ、グレーさん