見出し画像

「変化する逗子の未来が作品」 逗子アートフェスティバル2018


逗子新聞、発刊後の初取材は、10月12日(金)から開催されている
逗子アートフェスティバル(ZAF)2018

今年のテーマは右下にある「いまだカオス」
何やら意味深な様子。。。
逗子の街を舞台に、どんなカオスが待っているのか。
早速カメラを持って取材に出かけた。

まずは、JR逗子駅を出てすぐのマクドナルド前。
逗子市民の憩いの広場では手すりや樹木を毛糸でデコレーションする
ヤーンボミングで飾られている。


ヤーンボミング(Yarn Bombing) とは、Yarn(毛糸)とBombing(爆発)を組み合わせた造語。

街の中でアート作品というと、壁やシャッターでのペイントや社会風刺など攻撃的なものが多いイメージだが、毛糸だと柔らかく愛らしい雰囲気だ。
スプレーやペンキと違い、毛糸なら取り外しも簡単で、会期が終わったら取り外すことができる。
見慣れた駅前のベンチや街路樹が毛糸で可愛らしくデコレーションされている様子に、思わず気持ちが温かくなった。

駅前の交差点を抜けて、逗子のメインストリートである銀座通り商店街を海岸に向かって進む。
右手に駐車場の隅に、ヤーンボミングに彩られたカラフルなカウンター?が登場した。

と、そのカウンターをよく見ると、金髪のお兄、、いや、お姉さんが。

たかけろおねえさん
「逗子アートフェスティバルへようこそ!
コンシェルジュを担当しているたかけろおねえさんで〜す!
このカウンターと私が座っているベンチは、シティキャンバスプロジェクトとして、逗子市民の有志でつくりました〜」

たかけろおねえさんの言葉は、高い声で話しているように脳内変換してお読みください。


逗子生まれ逗子育ち・逗子在住たかけろおねえさん
フラワーアーティストでもあり、ラジオ番組やネット配信のパーソナリティーとして活躍している。
逗子アートフェスティバルを運営する逗子アーティストネットワーク(ZAN)の一員として、ボランティアの運営や、来場者をアテンドするコンシェルジュ部門を取り仕切る、運営責任者の一人だ。

このカウンターは、そもそもは昨年のアートフェスティバルで壁画作品として設置された。

工事前の壁画とワークショップの様子。(ZAFのFacebookページより)

逗子アートフェスティバル開始前の約3ヶ月かけて、住民が集まるきっかけとなるカウンターへと生まれ変わった。

たかけろおねえさん
「わたしもこの辺りの色を塗りましたー!」

自分が関わったり、手を動かした結果が作品として街並みに残っていること、その様子を人に話せることがとても誇らしそうだ。

ここからは、逗子市民として、コンシェルジュとして逗子アートフェスティバルを知り尽くしているたかけろおねえさんに、見どころを案内していただくことなった。

まずは、商店街の来た道を戻り、JR逗子駅前の菊池ビルへ。
一階にあるスズキヤさんの店舗を入って奥。
レジの先にある自動ドアのその先。

たかけろおねえさん
「今年のアートフェスティバルの目玉といえばこちらです〜。」
普段の買い物だと見落としがちな、この奥にあるエレベーターか階段で屋上へ向かう。


階段にも展示が施されている。
ビルの屋上はかつてはゴルフ練習場だったそうだが、今はほとんど使われておらず、逗子市民でも屋上が存在したことを認識している人は少ないという。
ここでの展示は、逗子出身・在住で、国内の芸術祭などでも作品を発表しているアーティスト・松澤有子さんの作品。

ぼくたちのうたがきこえますか

「空にイチバンチカイウミ」
と名付けられているように、海の水面が広がっている。
その先の広がる空を眺めていると、溶けてしまいそうな感覚になる。
空の色が天気や時刻によって変わるので、来るたびに見える景色が変わるという。


たかけろおねえさん
「この作品は、向こう側にまわることができるんです。
海の中にいるように見える、絶好の撮影ポイントなんですよ〜!」
指差した方向へ、足元にペイントしてある矢印に沿って、たかけろおねえさんが進む。

たかけろおねえさん
「見て見て〜!どうですか〜!」

本当だ。
たかけろおねえさんが、まるで波間に微笑む人魚のようだ。

波に見えるのは、細く切ったクリアファイル。
舟が空中に浮かぶ船は、逗子海岸に漂着したプラスチック片を拾い、糸を通し、つなぎ合わせたものである。

海岸で素材となる漂流物を集める準備など、この作品でも工程の一部を公開制作として参加者を募り、のべ500人以上が参加したという。
3年かかると考えられた作品は、3ヶ月で披露することができた。

これまで見てきた3つの作品に共通すること。
それは、制作過程に市民や住んでいなくても興味を持った有志が参加していること。
2013年から始まった逗子アートフェスティバルは、17年の実施まで逗子市が主導し行われていた。
今年は市の緊縮財政により、金銭的支援がカットされることなり、一時は休止も検討されたそうだ。
そこで、これまでの逗子アートフェスティバルに関わっていた人たちが中心となり、有志が実行委員会を結成。逗子アートネットワーク(ZAN)が立ち上がる。
クラウドファンディングなどによる資金集めや広報活動など、全て自分たちで行い、開催に至ったという。

たかけろおねえさんに、一番オススメの展示を教えてもらう。
カウンターから、さらに商店街方面へ。

ヤーンボミングをたどり、「銀座通り入り口」の三叉路を左に曲がる。

逗子会館3階で行われているのがアートフォリオ展


「アートフォリオ展」は、逗子のアーティストの発掘・紹介・育成を目指しています。「アートフォリオ」とはアート+ポートフォリオ(実績をアピールするための作品集)を意味し、選考により選ばれたアーティストの作品を展示します。
逗子にゆかりのあるアーティストの登竜門的な展示を目指します。
(公式HPより抜粋)
※10月21日(日)までの展示のため、展示は終了しています。


トイレまでが作品になったアーティスティックな空間。

たかけろおねえさんがオススメの作品はこちら。
矢部基子さん『Easy Dress』


たかけろおねえさん
「針も糸もはさみも使わないドレス。
一枚の布地からつくり、一枚の布地に戻します。」

ドレープや優雅な雰囲気のプリーツを見ていると、とてもこのドレスが1枚の布でできているとはとても思えない。

たかけろおねえさん
「今75歳だけど、100歳を活動のピークにすることを目指して活動しているおばあちゃん。
作品を広めてもらいたいけど、インターネットなどが使えない。
だから、発表する場を欲しがっていたんです。
展示ができてとても喜んでいます。」

アートフォリオ展は、市民の芸術活動の発表の場として昨年からスタート。
実はたかけろおねえさん、昨年はアーティストとして出展していた。

昨年のたかけろおねえさんの作品。
ドライフラワーで四季を表現した。

たかけろおねえさん
「逗子で活動したい、お花を出したいという気持ちはありましたが、機会がありませんでした。
そんな時にアートフォリオ展の募集があって、いち早く申し込んだ。
終了後、逗子アートフェスティバル2017を企画していたシバさん(柴田雄一郎さん)さんに、『来年は一緒に盛り上げて欲しい』と誘われて、イベントをつくる側になりました」

逗子新聞
「せっかく生まれた発表の場から身を引くことに抵抗はなかったですか?」

たかけろおねえさん

「アートフォリオ展に出したことで、シバさんをはじめ、新たな出会いがありました。
アーティストとしても一歩進めたんですよね。
だから今度はつくる側として、より深く関わり、アートフェスティバルをパワーアップさせようと思いました。」

逗子アートフェスティバルの運営について語るうちに、気づいたらおねえさんが、運営の裏方・逗子アートネットワークのたかけろさんになっていた。

たかけろさん
「初めて自分のオリジナル作品を出したのがアートフォリオ展だった。
それだけで、ZAFの歴史に名前を刻んでいるんですよね。
将来、大きな作品展や世界に出た時に、『一番最初にどこに出したんですか』と聞かれたら、自分が育った街のアートフェスティバルで。
逗子アートフォリオ展で、と胸を張って言える。
初めての場所を大切にするために、今後は逗子アートフェスティバルを引っ張ったり、新しい人を発掘したいと思っています。」

逗子新聞
「去年の自分が参加したという体験を、運営にどう生かしたんですか?」

たかけろさん
「去年は作品を出す以外にも、ボランティアとして駅前で道や展示の案内をしました。
けど駅前にいるだけ。招待作品など詳しいことがわからず、説明が全然できなかったのです。
作家さんや、ボランティアさん、きてくれた人も、バラバラだった。
だから、今年の運営チームの目標は、企画者と参加者をつなぐ、としました。」

逗子新聞
「会期はまだ終わっていませんが、今年活動して、つなぐことはできましたか?」

たかけろさん

「ボランティアは人員が足りないところから始まったけど、なんとか集まったし、体験してくれた人がみんな楽しかった、またやりたい、と言ってくれるのが嬉しかったです。」

逗子新聞
「確実な変化ですね!
ではたかけろさんから見える、逗子アートフェスティバルの今後の展望を聞かせてください。」

たかけろさん
「市民全体に知られるようになって、『逗子はアートの街だよね』と言われるように、名物になって欲しいです。
それにはやっぱり、企画者、作家さん、ボランティアさん、運営チーム全員が繋がっていかないとできないことがあります。
新しい人、興味ある人どんどん呼びかけて引き込む。
そういう力が必要かなと思います。
今年のアートフェスは終わるけど、来年の準備もそうだし、続けるためにやるべきこともあります。
今回関わった人たちの一人一人の意識も大切です。」


逗子市からの金銭的支援がなくなるという刺激により、運営の主体が逗子市民の手に移ったことで、市民の間に当事者意識が芽生えた。
その結果、関わる誰もが参加者であり、街を発表の場とする、参加型・共創型のイベントになった。
逗子アートフェスティバルは、昨年までと同じ名前でも、関わる人や内容、目線が全く違う新しいイベントに生まれ変わったのである。

開催期間中、市内には様々なイベントが行われたり、作品が展示された。
アートフェスティバルが終われば、こうした展示はほとんどが撤去されてしまう。
しかし、関わった人同士で生まれたつながりや感動は、逗子市の街づくりや毎日の暮らしに確実に変化を生み出す種火として消えることなく残るはずだ。
こうした変化こそが、逗子アートフェスティバルの作品と考えることができる。
逗子アートフェスティバルは、逗子市民が、逗子に愛着を持ち、目の前の課題や現状を自分に引きつけて考え、行動を起こすきっかけとなったのではないだろうか。


いよいよ会期も今日を入れてあと3日。
今回取材した「ぼくたちのうたがきこえますか」の展示は明日27日(土)まで。
27日(土)・28日(日)には、アートフェスのクロージングイベントとして池子の森自然公園を舞台にした池子の森の音楽祭が開催。

また運営母体となる逗子アーティストネットワークも参加するメンバーを募集しているという。

最後に、フラワーアーティストたかけろおねえさんに戻っていただき、今後の逗子や逗子アートフェスティバルでの活動の目標を聞いてみた。

たかけろおねえさん
「華道は、一人前になるのに2,30年かかると言われています。
続けていきながら、将来的にはメインビジュアルに関わりたいです。
ただ。。。」

逗子新聞

「ただ?」

たかけろおねえさん
「去年も今年も、メインビジュアルを担当した人は、みんな逗子を出ていってしまってるんですよ。
自分が担当したら、逗子を出なきゃいけなくなるかもー!?!?
けど逗子の良さを世界に広げられるならいいかな。
来年どんな歴史が生まれるのか、今からワクワクしています。」

イベントの顔ともいえる、メインビジュアル。

これを担当するアーティストは逗子から消える(2年連続)

なんとも不吉なジンクスが早くも生まれている、新生・逗子アートフェスティバル。

まさにカオス。

<取材協力>
たかけろおねえさん 
twitter https://twitter.com/toitakakero
公式ホームページ  花と福祉と若者と三浦半島元気プロジェクト

柴田優一郎さん

松澤有子さん

逗子アートフェスティバル

池子の森の音楽祭


この記事が参加している募集

イベントレポ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?