2019年2月前半 観たものまとめ

今月も、強めに感想を持った熱く書けるものを少なめに。

【映画】

・『斬、』
池松壮亮さんと蒼井優さんが出てるものはよっぽどのことがない限り観に行くのでこれはマストだった。『鉄男』の時も『野火』の時も、塚本監督は人間に興味がありすぎて場の設定にあまり興味がないのかなあと思ったけど、今回もそんな感じだった。『斬、』の村も歴史を感じる細部がなく、なんだか急にポンとそこに生まれたよう。そこのドライな感触が、世界でカルト的人気に繋がってるのは世界的作家の共通点だろうか。映画でも文学でも。

・『生きてるだけで、愛』
同じく菅田将暉映画はマストなので行ったけど、趣里さんが凄すぎた。趣里さん演じる寧子の社会不適合っぷりにイラつくのは普段の自分と重ねてイラついてるんだと気づいてから観ているのが辛くなった。どんなに大事な用事があっても起きれない日がある人は絶対観てほしい。『腑抜けども』の佐藤江梨子さん然り、『乱暴と待機』の小池栄子さん然り、本谷有紀子作品は、強い顔の女性によく似合う。これを書きながら『乱暴と待機』の予告を観ていて初めて気づいたのだけど、三四郎小宮さんの「積極的に麻痺していこうぜ」ってこの作品からの引用だったのかもしれない。全然ありえる気がする。


・『七つの会議』
池井戸作品にまさか自分がハマるとは。仲良くさせてもらってる東大生Youtuberの「もっちゃん」という女の子が激推ししていたので一応観に行ったら面白過ぎた。半沢(ながら見程度)や下町ロケット(ダイジェスト放送のようなのだけ観た)だけで、組織の中にいて組織の論理の中で一生懸命頑張ることを美徳とするのが池井戸潤原作、福沢克雄監督(池井戸原作のTBSドラマは全部この人)だと思い込んでいたけど全然違った。全上司が全部下にパワハラしてる世界観それ自体が主人公で、組織の原理に絡めたられ切れない不器用な及川光博さんを狂言回しとした『千と千尋の神隠し』のよう。その構造そのものが主人公なので、萬斎さん演じる八角というキャラクターがサボってるように見えて実は良い人でした、という伏線回収は蛇足だけど、ライト層向けの勧善懲悪的な色付けなのでご愛嬌。。

・『スクリーンで愛でる俳優・星野源』@新文芸坐
『ノン子36歳(家事手伝い)』
『箱入り息子の恋』
『地獄でなぜ悪い』
の3本のオールナイト上映。いずれも観たことあったけれど通して観ると、際物っぽい役から誠実な巻き込まれ演技が十八番の主演俳優へ、という進化がわかって面白かった。役柄の主体性と反比例するかのように劇中で遭う目が【軽傷】(『ノン子』、まあまあ自業自得)→【重傷】(『箱入り息子』、かわいそう)→【死亡】(『地獄でなぜ悪い』、何も悪いことしてない、完全に巻き込まれ、日本刀が頭に刺さる、めっちゃかわいそう)とどんどん悪化していくので笑ってしまった。次の出演映画は生涯7度も国替えをさせられた大名を描いた『引っ越し大名!』らしく、既にかわいそう。切腹オチとかじゃないことを祈る。


【ライブ】

・『RGZAZY〜RGがあるあるを歌い続け、 ZAZYがフリップネタをし続ける会〜』
1月18日@∞ホール
1月のまとめで書き忘れた。RGさんのこのシリーズを初めて観れた。洋楽の方が歌詞が邪魔にならないので洋楽であるあるを歌うことが多い、と話されていて納得。二人の芸がそれぞれに量産可能な形で成立しているので、このライブだけに向けてされた苦労がなさそうで緊張なく観られた。実際ZAZYさんのフリップは3セットほど余ったけれど、それも別の機会に観られるはず。ZAZYさんのフリップ、軟体動物と食べ物出てきがち。

・たかまつなな単独『お笑いジャーナリスト宣言』
45分ネタ、45分ゲストを迎えてのシンポジウムという構成。
2月10日の宇野常寛さんゲスト回と中田敦彦さんゲスト回を見学させてもらった。ネタは冒頭の「北朝鮮潜入ルポ漫談」が毎年恒例にしてほしいと期待するほど面白かった。シンポジウムでは宇野さんの「笑いは思考の運動、当たり前のことを当たり前じゃないところに持っていく過程を見せる運動」「表現者は意味のない手を一つでも打った奴から負けていく」という言葉が心に残った。たかまつさんに厳しくダメ出しする一方で「社会風刺をしづらくしてしまったのは我々大人の責任」とも述べられていた。中田さんはたかまつさんのネタを大絶賛。「ルールを作った人をルールの中では越えられない」ことを説明する例として『七つの会議』を挙げ、「みんな組織の中でワーワー言ってるけど誰も外に出ようとしないのが面白いので観た方がいい」と述べられていた。


【テレビ】

全然観れてないけどアベレージ高く企画が面白いのは『EXD44』な気がする。有識者と芸人がコンビを組んで時事ネタ漫才を作る回、LINEで誤爆したっぽいメッセージをランダムで友人に送り、返信が来るか競う回が特に。さらば青春の光・森田さんがどっちも出ていて凄い。時事漫才はパンクブーブー佐藤さん×舛添さん、ミキ・昴生さん×岸博幸さんのがちゃんと漫才として面白かったのに対し、古谷経衡さんがお笑い的には滅茶苦茶なことしてるのに勢いでウケてしまってるのが興味深かった。相方の森田さんも言ってたけど何でウケてたんだろう、、こういう奇妙な笑いは同番組の社内ベンチャーみたいなスタイルだからこそ生まれると思うので末永く続いてほしい。


【ラジオ】

物心ついてから情報源にしてきた『デイ・キャッチ』が3月で終わってしまうと知ってから、ラジオクラウドで1.5倍速にして意地で毎日聴いている。金曜の宮台真司さんとのやり取りで特に、荒川強啓さんがちょっと古すぎるスタンスで聞き手をされていて話が進まずもどかしいことが増えてきたように思っていた一方、強啓さんや近藤勝重さんのような世代の人たちの時事に関する声を聴ける貴重な機会だったなあと思う。2月15日の放送回で宮台さんの代打でダースレイダーさんが来た。まず語り口が宮台さんにそっくりで笑ってしまうのだけど、「ジャーナリズムとか権力と言うと大きくて自分と関係ないことのように思ってしまうけれど、権力関係と言うのは家族にも職場にもどこにでもある。そこでの権力がおかしいなと思ったらちょっと外の人に話を聞いてもらう、それがジャーナリズム」(勝手に要約したけど大体こんな感じ)と非常に明瞭に有効にニュースの問題点を抽象していて、これからはこの世代の言葉をもっともっと聴きたいな、とポジティブな気持ちになった。後枠は報道にはならないそうだけど。
受験の企画に追われていてエンタメを摂取する時間がなかったので感想がほぼレポになってきましたが、3月以降どんどん豊かになるので良ければ今後もお付き合いください。説明なく固有名詞をガンガン出してますが、面白いものの話しかしてないんでわからなくて興味ある方は片っ端からぐぐってみて下さい。

文章を書くと肩が凝る。肩が凝ると血流が遅れる。血流が遅れると脳が遅れる。脳が遅れると文字も遅れる。そんな時に、整体かサウナに行ければ、全てが加速する。