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Dear… 第十二話「命の選択」




○○)飛鳥っ、!!


扉を開けると、横になりお腹をさすっている飛鳥がいた。


飛鳥)びっ、くりした〜…どうしたのそんな焦って。



○○)大丈夫なの?!


飛鳥)全然大丈夫だよ笑


マネージャーさんの話によると、撮影中にいきなり腹痛を訴え、あまりにも辛そうにしていたため撮影を中断。

病院へ向かったら妊娠だとわかったそうだ。


医師)旦那様ですよね?よろしければご覧になりますか?


○○)え?


飛鳥)赤ちゃんのこと。みたいでしょ?


○○)え、見れるの?


飛鳥)当たり前でしょ笑、ほら。


モニターに映し出されたのは、手のひらほどの小さな命。


○○)こ、これが…子供?


飛鳥)そうだよ。


○○)飛鳥と、ぼく、の…こどもなの?


飛鳥)うん。


○○)くっ、うぅ…!!


飛鳥)これからお父さんになるんだよ。


どんな言葉で表せばいいのだろうか。


言葉にできない気持ちに襲われる。



でも、この涙は間違いなく、悲しみのせいじゃない。



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「○○…○○…」





声が聞こえる。夢でよく聞いた声が。


「お父さんになるんだね。おめでとう。」



目の前に1人の女性が現れる。


この声は、目の前の女性の声なのだろうか。


「あの子を、守ってあげて。きっと、飛鳥ちゃんは私みたいに…」



○○)ん…。


目覚めてしまった。


あの女性は誰なんだ。

なぜ飛鳥のことを知ってる。

なぜ僕のことを知ってる。


飛鳥は私みたいに、どういう意味なんだ?



飛鳥)おはよう。


○○)あ、おはよう。


飛鳥)どうしたの?


○○)なんか変な夢見ちゃって…


飛鳥)変な夢?


○○)うん。知らない女性が出てきて、その人は僕とか飛鳥のことを知ってるんだ。お腹の中の子のことも。


飛鳥)え、怖…誰なんだろうね。


○○)わからない。でも、ちょっとだけ懐かしい気もするんだ…


飛鳥)変なの。あ、今日梅が来るって。


○○)梅澤さんが?


飛鳥)うん、懐妊祝いだってよ。


○○)久しぶりだな〜。


飛鳥)そ、だから部屋の片付けするよ?


○○)僕がするから飛鳥はゆっくりしてて。


飛鳥)私だって掃除くらいはできるよ?


○○)いいからいいから。お腹の子だってゆっくりしたいって言ってるよ?


飛鳥)聞こえてないくせに…笑、じゃあお言葉に甘えようかな!


○○)お任せあれ。笑



妊娠が発覚してから2ヶ月。


それほど経ったというのに、テレビをつければまだ話題に上がっている。

それほどまでに、飛鳥の影響力は凄まじかった。


現在飛鳥は休業中になっている。

そのおかげで、飛鳥は少しだけ家事ができるようになった。

とはいえあまり負担をかけるわけにもいかないので、これまで通り全て僕がやっている。



○○)よし…終わったよ〜!


飛鳥)タイミング良っ笑、ちょうど梅も今ついたって。


ピンポ~ンッ!




美波)やっほー!色々持ってきたよ〜!


梅澤さんが来たのを合図に、懐妊祝いと称した3人でのパーティーが始まった。


梅澤さんが持ってきてくれた高そうなお酒と、僕が作った料理。

と言っても、飛鳥とお腹の中の子のことを考えて作ったから、そんなにオシャレとは言えないけど。笑


飛鳥)ねぇ、やっぱり私にも飲ませてよ〜!


○○)だめだよ、お腹の子に刺激になっちゃうから。


飛鳥)2人だけ飲むなんてずるい〜!


美波)飛鳥さん!じゃあこれ飲んでください!


梅澤さんはいちごミルクを渡した。



飛鳥)おい。


美波)すいません笑


飛鳥)も〜いや〜!!



もちろん飛鳥にお酒は飲ませない。


そりゃちょっとくらいなら飲ませても大丈夫なんだろうけど、この反応が見てて面白いから飲ませない。

拗ねる飛鳥は可愛い。


美波)今2ヶ月でしたっけ?


飛鳥)……。


○○)そうです。


美波)拗ねちゃった笑、そっか〜、ここからだね!辛くなるよ〜?


○○)そんなにですか?


美波)うん、ほんとに辛いからね〜。ちゃんと飛鳥さんのこと守ってあげて?


○○)はい!飛鳥?


飛鳥)……。


○○)まだ拗ねてるの?笑




飛鳥)……バタンッ!



○○)飛鳥?




飛鳥)…ぃ…た、ぃ…





○○)え?


飛鳥)痛いっ!!いだいっ、、!!


飛鳥は突然お腹を抑えてうめき出した。


○○)ど、どうしたの?!まさか陣痛?!


美波)いや、おかしい…早すぎるよ!!


飛鳥)違うっ!!違うのっ、!!


○○)飛鳥、飛鳥っ!!


飛鳥)ん"、あ"あ"〜っ、!!!!


美波)救急車、救急車呼ばないと!!


何が起こってる?どうしたんだ、飛鳥?





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○○)……。

美波)……。

ここについてから、30分が経過した。

今でも原因がわからぬまま、飛鳥は検査中になっている。


美波)○○くん、大丈夫?


○○)えぇ、大丈夫です…。


美波)ごめんね、何もできなくて。


○○)いえ、そんな…


美波)…こんな時に言うのもおかしいかもしれないけど、実は、私も子供を産んだことがあるの。



○○)え?


美波)詳しいことはまたいつか話すけど、この時期にここまで激しい痛みは普通ありえないのよ。だから、妊娠とはまた別の何かだと思うの。


○○)じゃ、じゃあ…


美波)でも安心して!!痛みには個人差があるって担当してもらった医師にも言われたから。きっと、大丈夫だよ。


○○)はい…




美波)ごめん、余計なこと言ったよね…。

○○)……。


妊娠の痛みじゃない。

だとすれば、なんだ…


今まで飛鳥がこんなに激しく痛みを訴えることはなかった。


胃腸炎になった時だってこんなに苦しそうにはしてなかった。


じゃあ何が原因で…

僕の料理か?食中毒なのか?

ぼくのせい、なのか?


医師)旦那様、ですね?


○○)先生、飛鳥はどうなったんですか?!無事なんですか?!


医師)落ち着いてください!


○○)落ち着いてられないですよ、!!どうなんですか?!



医師)…では、結論から申し上げます。このままでは、奥様かお腹の中の子、どちらかは助かりません。





○○)……は、、?






To be continued……

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