見出し画像

Dear… 第十話「壁の崩落」




「齋藤飛鳥、一般人と結婚を発表!お相手はコンビニ勤務の年下男性、齋藤飛鳥を堕とした男の魅力とは…」



○○)だそうですよ、飛鳥さん。


飛鳥)魅力か〜、なんだろうね。


○○)幸薄いところ?


飛鳥)いや、別にそれ魅力じゃないから笑


○○)ですね笑


飛鳥さんの家で、2人のんびりとしている。



あの日、飛鳥さんは僕からのプロポーズを受けた後、記者たちの目の前でとんでもないことを言った。


「私、この人と結婚しま〜〜〜す!!!」


その宣言は瞬く間に広まり、テレビやネットなどを通して全国に広がった。

僕はあっという間に有名人になってしまった。




○○)飛鳥さんこそ大丈夫なんですか?仕事、減っちゃいましたよね?


飛鳥)まぁね。でも、この程度で降板させるってことはその程度の関係だったってことでしょ。だから、別に気にしてないよ。


やっぱり飛鳥さんは強いな。



飛鳥)それより、そろそろ敬語やめよ?


○○)えぇ、僕以外と好きなんですけどね〜…


飛鳥)なんか壁があってヤダ。結婚したのにまだ敬語とか聞いたことある?


○○)確かにないですけど…


飛鳥)だから、敬語禁止。いい?


○○)わかりました、じゃないや、うん。


飛鳥)ふふ、幸せ…



飛鳥さんは隣に座る僕に体を預けて、僕の肩に頭を置く。



○○)飛鳥さん、結婚してから甘えるようになりましたね。


飛鳥)敬語、だめ!


○○)ああ、ごめん。


飛鳥)私は甘えちゃダメって言うの?


○○)そうじゃないよ笑


飛鳥)私だって甘えたくなるの。いいでしょ?


○○)うん、好きなだけ甘えていいよ。


飛鳥)じゃあお言葉に甘えて。


そう言うと飛鳥さんは、僕の肩に頭を預けたまま、目を閉じた。

僕もつられたように、飛鳥さんを抱きしめたまま、眠りに落ちた。




-----



○○)ただいま。


真夏)おかえり!ギュ~ッ!


○○)おかあさん、苦しいって笑


真夏)だってずっと帰ってこなかったじゃん!


○○)ごめんね、飛鳥さんのところに泊まってた。


真夏)あ、そうだ!改めて、結婚おめでとう。


○○)ありがとう。


そう、あれ以来僕は家に帰っていなかった。

ずっと飛鳥さんの部屋に泊まっていたため、おかあさんやおとうさんとは実に一週間ぶりに会う。



○○)記者の人たちはあれからどうだった?


真夏)確か梅澤さん?って人が追いやってくれたの。「これ以上ここに居座るようでしたら、警察を呼びますよ!!」って。


梅澤さん、あの後も僕のために…

あの人には、感謝してもしきれない。


真夏)ご飯、これから作るところだから食べる?


○○)うん!


---



○○)ご馳走様でした。やっぱりおかあさんの料理が一番美味しい。


真夏)ありがとう。でも飛鳥ちゃんも料理するでしょ?


○○)ううん、飛鳥さんはあんまり料理しないよ。


真夏)そうなの?


○○)うん、気分次第で作るって笑


真夏)じゃあ今度一緒に料理しちゃおうかしら。笑


○○)いいね笑


そろそろ言わないとな、あのこと…。



○○)おかあさん、お願いがあります。


真夏)ど、どうしたのそんな急に改まって。


○○)実は、飛鳥さんの部屋に引っ越そうかなって思って…


真夏)うん。


○○)もうずっとここに暮らしてて、全然不便はないんだけどね、なんだか申し訳ないな〜って思って。ほら、お金だって家に入れてないし。


実際、僕は家に全くお金を入れてない。

バイトで稼ぎはあるが、おとうさんとおかあさんの気遣いで自分で使うものにしか払っていない。



○○)僕ももう24だしさ、そろそろ親元を離れるのもいいかな〜って。


真夏)…うん、いいよ。


○○)あ、え?



案外すんなり了承してもらえた。


真夏)本当はすごい寂しいけど、親元を離れるって子供なら誰でもあることだしね?飛鳥ちゃんだって忙しくて大変だろうから、○○が支えてあげないとダメだもんね。だから、全然大丈夫!


○○)ありがとう、おかあさん。


真夏)何かあったら、またすぐ帰ってくればいいよ。私たちはいつでも歓迎するから、ね?


おかあさんは、僕の手を両手で優しく包みこんだ。



○○)うん、ありがとう。


やっぱり、僕の周りは愛が溢れている。

飛鳥さんの言った通りだった。

自分で壁を作って、愛を受け取ろうとしなかっただけ。


こんなにも愛は溢れていたんだ。



○○)おかあさん、ちょっといい?


真夏)ん、どうしたの?


○○)ちょっと立って。


真夏)うん。


○○)…ギュッ。


真夏)あ…


僕はおかあさんを抱きしめた。


○○)真夏さんがおかあさんでほんとによかった。ありがとう、大好き。


真夏)○○、立派になったね〜、、、ヒグッ!



○○)もう、泣かないでよ笑


真夏)うぅ、ううぅ…


○○)よしよし…



-----



○○)ついた…


タクシーを降りて荷物をもらう。

スーツケース一つで足りるくらい、僕の荷物は少なかった。


今日から飛鳥さんの部屋に引っ越す。

期待と楽しみでいっぱいだ。




美波)あら、○○くん?


○○)梅澤さん!


美波)久しぶり!


○○)お久しぶりです。なんでここに?


美波)飛鳥さんとちょっとした女子会笑、そっちは…引っ越しかな?


○○)正解です。飛鳥さんの部屋に住もうと思って。


美波)いいね〜、新婚さんばんざい!


○○)やめてくださいよ笑、梅澤さん。


美波)ん〜?


○○)本当に、ありがとうございました。色々とやってくれたみたいで。

美波)いいのよ、2人のためだから。




○○)…やっぱり、飛鳥さんがいなかったら僕絶対に梅澤さんのこと好きになってました。飛鳥さんがいなかったら。


美波)はいはい、もうその話はいいから。笑


○○)また改めて、お礼させてください。


美波)じゃあ、楽しみにしてるね笑


○○)はい!

---



ピンポ~ン…




ガチャッ!

飛鳥)いらっしゃい。


○○)今日からお世話になります。


あれ、なんだか前よりも片付いてる?

○○)飛鳥さん、もしかして梅澤さんに掃除手伝ってもらった?


飛鳥)ギクッ!、そ、そんなことないよ!


○○)絶対嘘だ、手伝ってもらってたでしょ?


飛鳥)…ちょ、ちょっとだけ、ちょっとだけだから。


○○)隠すのが下手。笑


飛鳥)うぅ…仕方ないだろ、家事とかできないだもん…


○○)じゃあこれからは僕が家事をしますね。


飛鳥)お願いします…。あ、それから、飛鳥さんじゃなくて飛鳥、ね?ほら、言ってみ?


○○)飛鳥?


飛鳥)ん…///


○○)自分で言って自分で照れないでよ笑


飛鳥)うぅ、うるさい!


○○)ふふっ。





今日から、飛鳥との同棲が始まった。





To be continued……

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?