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Dear… 第17話「優しくて暖かい人」






「君のお母さんはね、すごく、すごく…」



○○)ハッ!はぁはぁ…


夢を見た。

忘れたくない、僕のお母さんに関する夢を。


??)入るよ〜?


○○)は〜い。


??)おはよう、よく眠れた?


○○)おはよう、美波。ちゃんと寝れたよ。


美波)よかった。ご飯できてるから一緒に食べよ?




○○)うん、今行くね。



僕に微笑みかけるこの人は梅澤美波。

さくらのおかあさん。


血は繋がっていないからおかあさん。



○○)おはよう、さくら。


さくら)おはようじゃないよ、おそようだよ!





さくらと挨拶を交わす。


おそよう、とはさくらが考えた言葉だ。

あんなに小さかったさくらも、気づけば小学生になっていた。


○○)そうだね笑、おそよう、さくら。


さくら)おそよう!

○○)じゃあ、


美波、さくら、○○)いただきます!



美波が作るご飯はとても美味しい。

みんなで食べてるから尚更そう思うのだろう。


○○)さくら、ちゃんと残さず食べるんだぞ?


さくら)うん!


美波)そうだよさくら。パパみたいに口にご飯粒つけちゃダメだよ〜?笑


○○)え?あ、…


さくら)あはは、パパおもしろ〜い!笑


美波)ほら、じっとしてて?


美波は僕の口についたご飯粒をとって食べた。


○○)ご、ごめん…


美波)まったくもう…



さくら)ん〜!パパ、パパ!


○○)ん、どうしたさくら?


さくら)見て!


さくらは口にご飯粒をつけていた。


○○)な、さくら〜?


さくら)食べて!


○○)しょうがないな〜笑、はいっ。


さくら)えへへ〜


美波)はぁ〜…



喜ぶさくらと対照に、呆れている美波だった。


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美波)さくら、ママはパパを見送ってくるから先にお風呂入ってて?


さくら)は〜い!パパ、いってらっしゃい!


○○)行ってきます!


さくらは笑顔でそう言って、お風呂へ向かった。



○○)…ねぇ、やっぱり言ったほうがいいんじゃないかな?


美波)まだ早いよ、もう少し待たないと。


○○)でも、このまま嘘をつき続けるのも…


美波)う〜ん……とりあえず、今は仕事行ってきな?


○○)うん、いってきます。


美波)いってらっしゃい。



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A.M.1時


○○)いらっしゃいませ〜。


陽気な機械音楽が鳴る方を見て、近くに置いてある雑誌には見向きもせずに声を出す。


相変わらず、この時間に来る客はろくな奴がいない。

いつまで経っても深夜のコンビニなどそんなものだ。



なんだかんだ、ここに戻ってきてしまった。


どこへ行っても、面接の一番初めに飛鳥のことを聞かれる。

そのことに嫌気がさして、ここに戻ってきた。

店長は何も言わずに僕を迎え入れてくれた。

「好きな時に辞めていいし、好きな時に戻ってくればいい。」


ここにも愛はあったんだ。



??)○○さん!


○○)お、麻衣さん!終わりましたか?


麻衣)はい!ちゃんと数通りに発注しました!




○○)ありがとうございます。今は特にやることないので、適当に時間潰しててください笑



今は新人の白石さんと2人体制でやっている。

どうやら白石さんも子供がいて、シングルマザーらしい。


○○)麻衣さんは育児どうしてるんですか?


麻衣)父の家に住んでるんです。なので家のことは基本父がやってくれてて…ご飯だけは私が作ってます。


○○)大変ですよね…?


麻衣)そうですね…笑、でも子供の笑顔を見ると、その辛さも全部忘れられるんです。だから、辛いけど辛くないんです。



○○)…そうですね。子供のためになら、どんなことでもできる…。


麻衣)はい!あ、いらっしゃいませ〜!


元気に声をかける麻衣さんの背中は、大きな母の背中だった。



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美波)○○、寝なくていいの?


○○)うん、明日休みだし今日はゆっくりしようかなって。



美波と○○は寝室でくつろいでいた。




美波)そっか。もうそろそろさくらも帰ってくるし、ゆっくりしてな。


○○)うん、ありがとう。



ふと、飛鳥の写真が目に入った。



美波)飛鳥さん、今何してるだろうね。


○○)…きっと、僕たちを見守ってくれてると思う。


美波)そうね、そうだと思う…。





……。




……。




○○)美波。


美波)どうしたの?


○○)やっぱり、言おうと思う。飛鳥のこと。


美波)前も言ったでしょ?まだ早いって。


○○)でも、さくらには知っておいてほしいんだ!飛鳥のこと、お母さんのことを!!



「ただいま〜!」



美波)でも、それで昔のあなたみたいになったら…!


さくら)パパ〜?ママ〜?どうしたの?



いつの間にか、さくらが帰ってきていた。




○○)さくら…あのねさくら、聞いてほしいことがあるんだ。


さくら)なに〜?



○○)実はね、さくらの本当のお母さんは美波じゃないんだよ?


さくら)え?ママはママだよ?


○○)ううん、さくらを産んだのは違うママなんだよ。


さくら)ママじゃないの?




美波)…そう。さくらにはもう1人、本当のママがいるの。



さくら)じゃあ、本当のママはどこにいるの?どんな人なの?




○○)君のお母さんはね、すごく、すごく、、、、







優しくて、暖かい人だったんだよ。








Dear… fin.

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