平行世界 ➲

ある場所、かつての湖沼盆地というものは、カモメが朗詠し、白鷺が高く舞い上がる美しいものであった。

▂はその盆地の内部にある田園地帯の集落で生まれ、よく泣く赤子として知られていた。
母親はいつも誰かを家に招き、井戸から汲んだ水でお茶をたて、少しのお茶菓子を出す。そしてそのお茶会とでも言うべきものは、日が暮れるまで続いた。ある晩には騒がしく、ある晩にはみな寝静まっていた。

小屋から離れた場所の荒れ果てた田んぼには、常時バスケットが設置されていた。少し水が漏れだしていたためか、藁が一面に敷かれ、その中に赤子は入れられていた。
夜になると、母は子守唄を口ずさむようにして田へ行く。赤子が泣き疲れ眠ったところに母は頬擦りをし、手の中に包み込むと、月明かりの中へ入っていった。赤子は藁にまみれ、傷跡も目立っていた。しかし、その真夜中の世界には、ほんのわずかながらも母の温もりに包まれていた赤子はいた。

ある日、赤子はいつものように藁だらけのバスケットの中で泣いている。
赤子は子宮から血を流し
バスケットの隅には、へその緒が絡まっていた


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