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職業:悪あがき

先日、突然、大学時代の友人に呼び出されて、彼の勤務先の近くにあるもつ焼き屋さんで久しぶりに飲み明かした。

2年前から奥さんと離婚調停中で、さらに天下りの使えない上司に立てついたせいでこの春に子会社に飛ばされたばかりの彼は、実際に会うと、そんな逆境も何のその、とても元気そうだったから、ひとまず安心した。

いや、本当はたいして心配もしてなかったけれど。

それくらい彼はタフな人間というか、きっとどっかに自分の心を置き忘れてしまったのではと思えるくらい鋼のハートの持ち主だからだ。

だから、本人の前では口が裂けても言えないけれど、最近は彼に会うたびに必ずと言っていいほど、そのひたむきな姿にいたく勇気づけられてまた明日から頑張ろうって気持ちになっている。

「ボクもどうせならアイツみたいにカッコよく生きたいなぁ・・。」

などと思わされるのは本当は癪でしょうがないんだけど(苦笑)

そんな彼を見ていると、結局、すべてはどれだけ「悪あがきできるか」にかかっているような気がする。

たとえば、たとえ年に2回しか娘さんに会えなかったとしても、決してその状況を憂いたり嘆くのではなく、その限られた環境の中で父親として自分が彼女に出来ることについて真剣に考え続ける、とか。

どうせまたいつものように上司にろくに目を通されないままゴミ箱に捨てられることが予め分かっていたとしても、絶対に会社やお客様のためになるって自分が信じて疑わない資料を徹夜で作り続ける、とか。

そんな悪あがきをひたすら繰り返しているうちに、よく見たらその顔には余裕の笑みが浮かんでいる

そんな彼みたいな人間に

やはり僕だってなりたいのだ。

そんな僕は彼と会った次の日、ここ数年の自分の仕事の集大成と呼ぶにふさわしい報告書を無事に完成させた。

しかし、夕方、同僚から聞いたアイデアがとてもよいって思ったから、またその資料を一から作り直そうとし始めている。

そのとき僕は彼とこんなやり取りをしたんだよね。

「どうせ会社はまたいつもの調子で僕らの声に耳を傾けないだろうけど、それでもできるだけ悪あがきをするのが僕らの仕事だよね。」

この時の僕は確かに軽やかに笑っていて、少しはアイツに近づいたかもしれないってふっと思ったんだ。


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