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「好きなことを仕事にしたい」人が知っておくべき3つのこと

「好きなことを仕事にしたい」A子の相談

「絵を描くのが好きなんです。将来はイラストレーターになりたいぐらい。」

A子さんは、ごく普通の四年制大学の文学部に通う21歳の女性。

本を読んだり、絵を描いたり、創作活動をすることが好きで、文学部に進学を決めたのも、いずれ小説を出版したいと思ったからだった。

しかし、小説家への道は険しい。ひとつまみの限られた才能人だけがベストセラー作家になり、それ以外の文筆家は食うもやっとの世界。

現実を知った彼女は、小説を書くことを諦め、絵で生計を立てられないかと考えていた。

そんな折、友達の紹介で、キャリアコンサルタントのB男と話すことになった。

「そうなんだ。ちなみに、絵はどれぐらい続けているの?」

「小学生のときから、暇な時間にちょっとずつ、なので10年は続けていると思います。」

「すごいね!10年も続けられるのは才能だ。」

その言葉に、A子は少し表情を緩めた。

彼女自身、イラストレーターも決して楽な仕事ではないことは分かっている。

それでも、自分が事務仕事をしたり、営業で外回りをしている姿は想像できなかったし、少ない収入でも、絵描きを仕事にし続けられたら幸せだと思っていた。

「でもね、好きで続けられているからといって、それが仕事になるわけではないんだ。むしろ、好きなことだからこそ、仕事にしてはいけない場合もあるんだよ。」

B男は言葉を選びながら言った。

A子にとっては、反対も想定内のことだったので、決して驚きはしなかった。

「はい。きっとそう言われると思っていました。でも、誰に聞いても、『無理じゃないの?』と言われるばかりで、ちゃんと理由を教えてくれる人がいないんです。」

「そうなんだね。それじゃあ、僕からいくつか話せることがあるから、それを聞いたうえで、自分で判断してほしい。」

B男はそう前置きすると、頭を巡らすように少し視線を泳がせ、すぐにA子に向き直った。

「好きなことを仕事にしてはいけない場合は3つあるんだ。」

唯一の「息抜き」である場合

まず1つ目。その好きなことが、唯一の「息抜き」である場合。

仕事はね、息抜きにはならないんだ。仕事で積もったストレスを仕事で発散することはできない。

そもそもストレスというのは、外部からの刺激によって生まれる緊張状態のことなんだ。これを発散するには、その緊張をほぐしてあげなければいけない。
でもね、仕事には必ずお客さんがいて、お客さんの期待や要求によるプレッシャー、あるいは納期への不安などがついてまわる。

だからね、仕事をしている以上は、どんなに好きなことでもストレス解消にはならないんだ。

もしあなたにとって絵を描くことが唯一の息抜きである場合、それを仕事にすると、息抜きの手段を失ってしまう。
こうなると、仕事のストレスを解消することができず、潰れてしまう。

でも、他に息抜きの手段があるなら、そちらに逃げることができるよね。
ストレスを溜めないためには、逃げ場があることが何よりも大事なんだ。

堂々と値付けできない場合

次に2つ目。その好きなことで作った作品や、やり遂げた仕事に、堂々と正当な値段を付けられない場合。

仕事はビジネスだ。ビジネスではお金を稼がなければいけない。
「もっと効率よく、たくさんお金を稼ぐためにはどうすればいいか」を考えることが、ビジネスを成長させたり、維持するための原動力になるんだね。

でも「絵を売って儲けるなんてイメージできない」「私の絵に高い値段なんてつけられない」「誰もこんな絵は買わないだろう」などと思うなら、いずれ苦しくなるからやめたほうがいい。
そう思っている限りは、仕事にはなりえない。それは趣味だよ。

そういうのはお客さんにも伝わる。お客さんもビジネスのプロなんだから、自信のない人は徹底的に安く買い叩くか、そもそも商売相手としては付き合わない。これじゃあビジネスは成立しない。

もし、あなたにパートナーがいて「絵を描いてくれるだけでいい、俺が売ってくる」と言ってくれるなら話は別だ。
でも、自分自身で仕事の価値を決めなきゃいけないのであれば、自信を持って値付けできないことを仕事にするのはやめよう。

自分が好きなものを守り続けたい場合

最後に3つ目。その好きなことで作った作品が、ずっと自分の思ったとおりのものでいてほしい場合。

好きなことを仕事にするということは、あなたの作品を売り物にするということだ。
売り物は、売った瞬間にあなたのものではなくて、買い手のものになる。所有権が移るんだね。著作権や意匠権はあなたに帰属するけど、買ったものをどうしようと、どんな感想を発信しようと、基本的にはその人の自由だ。

もしSNSで「思ったよりつまらなかった」「買ったけど後悔している」「今回はハズレだったな」なんて言われても、あなたにはどうすることもできない。
依頼主から「もう依頼しません」「申し訳ないんですけど、結局使いませんでした」なんて伝えられることもあるかもしれない。

文句を言う人に噛み付くのもあなたの自由だけど、そんなことをして得をする人は誰もいない。それがビジネスの世界だ。

作品を発表せず、身内や友人に見せて回るだけなら、あなたは傷つかないで済む。他人の意見や感想に影響を受けて、自分の作風が変わってしまうようなこともない。
ずっと、自分が好きな自分の作品を守り続けられる。

それでもあなたは、多くの人に作品を届けたいと思うかい。

「好きなことを仕事にする」ということ

上の話は僕の創作です。
が、A子さんのように悩んでいる人は多いのではないでしょうか。

ミシガン州立大学のある研究チームが「好きなことを仕事にする者は本当に幸せか?」というテーマの大規模調査を行ったそうです。

研究チームは、被験者の「仕事観」を2パターンに分類しました。

●適合派:「好きなことを仕事にするのが幸せだ」と考えるタイプ。「給料が安くても満足できる仕事をしたい」と答える傾向が強い

●成長派:「仕事は続けるうちに好きになるものだ」と考えるタイプ。「そんなに仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しい」と答える傾向が強い

一見、適合派のほうが幸せになれそうに見えます。自分が情熱を持てる仕事に就けば毎日が楽しく、金目当てに働くよりも人生の満足度は高まりそうな気がするでしょう。

ところが、結果は意外なものでした。適合派の幸福度が高いのは最初だけで、1〜5年の長いスパンで見た場合、両者の幸福度・年収・キャリアなどのレベルは成長派のほうが高かったからです。

いかに好きな仕事だろうが、現実には、経費の清算や対人トラブルといった大量の面倒が起きるのは当然のことです。

ここで「好きな仕事」を求める気持ちが強いと、そのぶんだけ現実の仕事に対するギャップを感じやすくなり、適合派のなかには「いまの仕事を本当に好きなのだろうか?」といった疑念が生まれます。その結果、最終的な幸福度が下がるわけです。

好きなことを仕事にしないほうが「幸福度」「年収」「仕事の継続率」が高い、という事実について。

とはいえ、僕は好きを仕事にしたいタイプなので頑張ってます。

「好き」だけがモチベーションだと続かないことも、「自信がある」「たくさんお客さんがいる」「他のことでも稼げる」みたいな要素があれば、仕事としてちゃんと続いたりするのではないかと思う今日この頃。

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