池永寛明|社会文化研究家

コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・…

池永寛明|社会文化研究家

コロナ禍・ウクライナ紛争を契機に構造変革しつつある日本社会の過去・現在と未来を構造的・文化的に捉え、未来を展望・発信。AIと社会をつなぐデータビリティコンソーシアム事務局長・Well‐Being部会長、堺屋太一研究室主任研究員など。著書(「日本再起動」「上方生活文化堂」など)

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迷子のニッポン。現在、どこにいるの?―未来社会はどうなる(上)

迷子になっている。目をきょろきょろしている。 現在地は、どこだろう?どこにいるんだろう? コロナ時代4年目の現在、なにがおこっているのだろう?これからなにがおこり、どういう社会になろうとしているだろう?その未来に向けて、どう考え、どう行動していけばいいのだろうか?そんな未来は予測できるのだろうか? 未来は予測できない 1 はじめての道を、夜中に濃霧のなかを車で走っている 未来は、予測できない 未来を予測するとは、はじめての道を、夜中に濃霧のなかで走る車のヘッドライトのよ

    • 坂の上の雲から50年―さまよう日本はどこに行く(下)

      日本は「坂の上の雲」をめざした。1968年から1972年の4年間、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」が産経新聞の夕刊に1296回連載された。明治維新から日露戦争までの40年間の明治日本の軌跡を描いた。艱難辛苦、臥薪嘗胆、苦心惨憺、刻苦勉励、車蛍孫雪、千辛万苦などの四字熟語が時代の空気として違和感がなかった。当時の日本のモデルは明確で、モデルを真似て、モデルをめざしていればよかった 坂の上の雲 は、明治時代の国家目標を捉える言葉として的確だった。そして「坂の上の雲」という小説の

      • 現代日本がめざすモデルはどこ?―さまよう日本(上)

        教員「残業代」、50年振りに前進――恒常的に発生する残業をなんとかしないといけないというのは、その通り。しかしそれで教員の仕事における課題が根本的に解決するのだろうか?日本の教育はそれで解決するだろうか? 前提条件を変えないから、こうなる 心掛けている仕事法がある 仕事をしていると、問題が日々発生する。目の前に起こっている、その「問題」が真に解決すべきことか?表面的に見える問題(トラブル)を解決したとしても、目に見えない真の課題(プロブレム)を根本的に解決しないと、問題が

        • 本当にこんなんでええんか?ーこんな少子化対策はどうやろか?(下)

          「こども年金」制度が、少子化の流れを反転させる私のファイナルアンサー。親が仕事をしていようがしていまいが、結婚していようがしていまいかにかかわらず、子どもが生まれた世帯に1人目で10万円、2人目で15万円、3人目で20万円の年金支給とする。「こども年金」は給付ではなく、自らの65歳になってから支給される年金の前倒しである 老後のために支給される年金を、経済的に必要なライフステージで移す「こども年金」は、社会的に効果がある少子化対策となる制度だと思うが、国で議論されたことはあ

        迷子のニッポン。現在、どこにいるの?―未来社会はどうなる(上)

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          子どもの18年と高齢者の18年は同じ18年ではない―こんな少子化対策はどうだろうか?(上)

          5月5日の子どもの日は「端午の節句」で、男の子の健やかな成長や幸せを祝う。わが家の仏壇の「過去帳」に残された江戸時代からの先祖の死亡年齢を見ると、年齢若くして子ども時代に亡くなられた先祖が多い かつて日本は、「7歳までの子どもは、神のうち(神の子)」と言われた。生まれて7歳までは神様から預かった子であり、7歳になってはじめて氏神さまの氏子となり、地域社会の一員となれた。無事に育った子どもの成長を祝い、氏神様に感謝してお参りするのが「七五三」だった。それくらい医療技術も衛生

          子どもの18年と高齢者の18年は同じ18年ではない―こんな少子化対策はどうだろうか?(上)

          大切なことは変えたらあかんーあなたがあなたでなくなる

          「テレワークは、これからどうなる?」 という質問をよく受ける。昨年5月に新型コロナウイルスが5類感染症に移行して、テレワークメインから出社メインに変わろうとするなか、1年が経った。新年度となる4月から、さらに出社スタイルに戻そうとする会社が増えつつあるが、戻っていこうとする先のワークは、前のワークではない、元ワークではない テレワークに向かっていくのは 必然ではないだろうか? 生成AIが進むと、生成AIが出してくる答えが正しいか嘘かどうか分からないレベルであるが、「サラリ

          大切なことは変えたらあかんーあなたがあなたでなくなる

          令和の浦島太郎は玉手箱を開けたらあかん—浦島太郎ニッポン(下)

          ノスタルジーにふけることは、時にはあってもいい。かつてを懐かしむ時も、あってもいい。瞬間、刹那はいいが、それを「過去から未来につながる基本潮流」だと考えてはいけない。それを時代の本質だと認識してはいけない 現在の私たちは、過去に生きているのではない。未来は、まだ生きてはいない。現在に生きている。現在に息づく「過去と現在と未来の流れ」を発見して、3つの時間軸をつなぐ人が、未来を切り拓けることができる 3年間過ごした竜宮城から、現在地に戻った浦島太郎。乙姫から「玉手箱をあけて

          令和の浦島太郎は玉手箱を開けたらあかん—浦島太郎ニッポン(下)

          なぜみんな同じ顔をしているだろうか?—浦島太郎ニッポン(中)

          韓国は美容整形大国。 韓国の女優って、みんな、顔が似ていると思いませんか?整形している人が多い、男の人も、女の人も。この韓国の美容整形の技術のノウハウを移転したのは、実は日本の美容整形外科医だった。 大阪の美容整外科医が、日本の美容整形ノウハウを韓国の美容整形業界に教えた。その方法が、現在にも継承されている だから、みんな、同じ顔になった 日本からノウハウを伝授されたあと、韓国の美容整形業界は韓国人にあった独自のノウハウ開発をおこなわなかったので、韓国の人の顔はみんな同じ

          なぜみんな同じ顔をしているだろうか?—浦島太郎ニッポン(中)

          勝てる戦略の作り方—浦島太郎ニッポン (上)

          狐の嫁入りを観た。桜が舞う京都の大谷祖廟前から高台寺まで、狐のお面をかぶった白無垢の花嫁が人力車に乗って練り歩く。高台寺を創建した豊臣秀吉の正室ねね様の没後400年にあたる今年、縁起が良いとされた「狐の嫁入り」が、今年の4月7日で終了となる 狐の嫁入りって、不思議なことば 日が照っているのに急に雨が降り出す天気雨、晴れているのにすこし小雨が降るという不思議な現象を「狐の嫁入り」と使う。もとは、夜の山野で、怪しげな「狐火」がゆらゆらと連なって揺れる様が、夕刻に提灯行列で迎

          勝てる戦略の作り方—浦島太郎ニッポン (上)

          人手不足の本当の理由ーみんな一緒からみんなバラバラ(下)

          人手不足・人手不足というが、本当に人手不足だろうか?その本質は、えり好みではないか?需要と供給のアンマッチではないか?良さそうな所には行きたいが、良くなさそうな所には行きたくない。働く条件、働く環境の良さそうな会社には、高い給料の会社には人が集まる。みんな一緒から、二極化どころか、実態はバラバラに。 さらに4月から物流や建設業界での2024年問題という時間外労働の上限規制が適用される。これで人が集まらなくなり、ものが運べなくなったり、家やビルが建たなくなる恐れが出てきている

          人手不足の本当の理由ーみんな一緒からみんなバラバラ(下)

          インバウンドの本当の意味―みんな一緒から、みんないろいろ時代に(上)

          30万円のフランス料理、10万円のお寿司、1万円の海鮮丼があらわれる。それでも「安くて美味しい」と日本に来た海外の人が嬉々として食べる。コロナ5類移行の昨年5月から、世界からの観光客が一気に戻ってきた。全国の観光地に訪ねて、どこもかしこもが観光客であふれ、「オーバーツーリズム」と呼ばれる現象をひきおこして、コロナ禍での低迷から一気にV字回復しようとしている 1室1泊30万円、50万円のホテルも出てきた。誰が、そんな高い部屋で泊まるのだろうかという心配はいらなかった。すぐに予

          インバウンドの本当の意味―みんな一緒から、みんないろいろ時代に(上)

          なぜ東京のトイレはキレイなのか?―コンテクストのないところに、コンテンツは生まれない

          目に見えて日本の人口が減っている。街のなかで高齢者が多くなってきていることは実感していたが、子どもや若者がぐんと少なくなってきたと感じるようになった。飲食店や商店や工場や建設や交通・物流の現場では、人が集まらない。外国労働者が増えている。大阪のある区では、世界から60ヶ国の外国人が住んでおられるという。多国籍都市と言われていたオーストラリアのメルボルンで23ヶ国だと聴いたことがあったが、その数を大きく上回っている。すでは、日本は多国籍社会である 1 江戸時代の大奥があれだけ

          なぜ東京のトイレはキレイなのか?―コンテクストのないところに、コンテンツは生まれない

          会社員という「職業」が消えるー(続)テレワークが戻るのは「元ワーク」か?

          テレワークをやめて会社に戻れというが、その戻ろうとするワークスタイルは、60年続けてきた「元ワーク」ではない。コロナ禍に入り4年経て、テレワークで仕事に支障が出ているから、コロナ禍前のように会社に集まって仕事をしようと会社はみんなに命じるが、そのワークスタイルは元のワークではない。これを読み違えたら、これからががらっと変わる 1 職業欄から、「会社員」が消えた かつて普通にあった職業欄の「会社員」という項目が減っている。会社に所属しているという意味で「会社員」と書いていた

          会社員という「職業」が消えるー(続)テレワークが戻るのは「元ワーク」か?

          テレワークが戻るのは元ワークか?

          出社スタイルに戻す企業が増えている。テレワークが元ワークに戻ろうとしているのか?戻るのは、元ワークなのだろうか?テレワークから戻っていこうとしているのは元ワークではなく、新しいワークではないか? 賃上げと人材育成、働き方改革、少子化対策、こども未来戦略を議論している人たちは、日本の就業観、ワークスタイルがどう変わりつつあるかが見えているのだろうか?変化の構図を読み解くキーワードはこの言葉 気持ち悪い 1「気持ち悪い」と思う人たち テレワークから出社ワークに戻ろうとし

          テレワークが戻るのは元ワークか?

          右と左が反転するー鏡のなかのあなたの本

          「売れない、企画が通らない。手直しをしてください」と相談され、企業のお客さま向け提案書や企画書をみることが多い。しかし、こりゃあかんというモノが多い。なにが言いたいのか分からないモノは論外として、論点がないモノや構造化されていないモノやストーリーがないモノが多いが、それよりも根本的に提案書・企画が通らない「ノックアウトファクター」(それひとつで終わってしまう決定的不可能な要因)が存在している お客さまを観ていない 自分しか見ていない そんな提案書や企画書が多い。だから売れ

          右と左が反転するー鏡のなかのあなたの本

          アートは街を変えられるか?ースペインで日本を感じる(下)

          ディズニーの白雪姫城のモデルは、スペインの古城。セゴビアには、900年前に建てられた世界遺産のアルカサル(王城)があり、古代ローマ時代に建設された水道橋は、2200年後の現在も使われている スペインのバスク地方を走っていると、瓦の屋根の家が多いことに気がつく。瓦は、アジア・イスラム文化の影響。瓦の発祥は定かではないが、古代ギリシア、中国、イスラムにあったという。どちらにしろ、アジアから世界に広がったものである スペインは、ギリシア、ローマ、キリスト、イスラム、アフリカの文

          アートは街を変えられるか?ースペインで日本を感じる(下)