おじさん投資術実践編:キャッシュフローを学ぼう
こんにちは😊
今回は会社経営において重要なキャッシュフロー(Cash Flow:CF)について学んで、銘柄選びや決算書分析のような投資判断の質を上げることを目指していただきたいと思います😊。CFを分析できるようになると、投資家レベルが上がって、差をつけることができますよ!
経営におけるキャッシュ(資金)の重要性
会社経営というと難しく聞こえてしまうので、パン屋さんの経営で考えてみましょう。
パン屋さんの経営では、
支出:給料、家賃、パンの材料費、宣伝費、光熱費、など
収入:パンの売上、預金の利子
のような現金の出入りがあることは想像できますよね。
パンの売上は毎日入ってきますが、小麦粉などの材料費、給料、家賃などは定期的な支払いになります。下のお話を読んでみてください。
ある街のパン屋さん「ジャムおじさんのパン屋」は人気のパン屋さんです。毎日、行列のできるパン屋さんでたくさんの従業員が働いています。
昨年、オーナーのジャムさんは、もっとたくさんの人に美味しいパンを食べてもらおうと、隣の空きテナントを購入して、オーブンなどの設備も最新のものを導入しました。これまでの利益の貯金と銀行からの融資でかなり大掛かりなリニューアルに成功、月に一度のイベントも好評で、毎日の売上はうなぎのぼりです。
ある日、市役所の職員がやってきて、店の前の市道拡張のため半年ほど工事を行うと連絡を受けました。ジャムさんは「市道が拡張されて交通の便がよくなればさらに客足が増えそうだ」と考えて、近所の空き地をローンで購入し、駐車場として整備するための工事契約も結びました。
ところが、いざ工事期間になってみると、大量の工事車両と交通規制で店の前が封鎖されたような状態になってしまい、お客さんの数が減少、売上も大きく減少してしまいました。
店の拡張と新規設備の借金があるので、銀行は新規融資に応じてくれそうにありません。道路工事開始3ヶ月の材料費、給料支払い、銀行のローン、家賃の支払い、駐車場整備費用で手元の現金がほとんどなくなってしまいました。ジャムさんは開店時間を短くすることで人件費と光熱費を減らして、さらに宣伝費を減らして対策しましたが、給料の減った従業員の何人かは辞めてしまいました。広告が減ったのでイベントにも人が集まりません。さらに、仕入れた材料には長期保存できないものも多く、仕入れ量を減らしたことで仕入れ単価が上昇してしまい、パンの値上げをせざるをえなくなってしまいました。
半年後、ようやく道路工事が終わって「ジャムおじさんのパン屋」に客足が戻ってきました。連日大盛況です。しかし、手元の運転資金はほとんど無くなっており、従業員を増やすことも宣伝広告もできずサービスの低下が心配です。パンは値上がりしたままで、リピート客の減少も心配になっています。今月の売上だけでは、今月末のローン、材料費、家賃の支払いができないかもしれない状態になってしまいました・・・。
「ジャムおじさんのパン屋」は、繁盛しているのに倒産の危機を抱えている、いわゆる「黒字倒産」の典型例です。手元のキャッシュが減ってしまったことで経営危機を迎えています。
手元のキャッシュが厚いと経営の選択肢が増えて、設備投資・従業員採用・広告宣伝・研究開発など、利益拡大のための資金投入を積極的に実施できます。また、予期せぬ事態が発生しても、事態収束まで経営を続けるための運転資金に困ることがありません。これが経営におけるキャッシュの重要性です🥸。
(※投資におけるキャッシュの重要性と共通点もありますが、今回は別のお話です。)
キャッシュフローってなに?
キャッシュフローはパン屋さんの例で見た資金(現金)のやりくりのことです。企業から出る決算ではキャッシュフローが開示されますので、決算書でチェックが可能です。
決算時期に公表される財務諸表には、特に重要なものとして貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、キャッシュフロー計算書(CF)の3つがあり、BSは会社資産、PLは売上と利益の詳細を示しています。株式投資では、BSやPLは詳しく読まなくても、ここまで学んできたPBR・PER・EPS・ROEのような指標で代表して知ることができます。
ところが、会社の資金の流れを示しているCFに関する株式投資指標は専門的なものが多く、特に初心者が株式投資に活用するのは難しいのが実際です。
パン屋さんの例で見た通り、売上や利益からは分からない会社のポテンシャルや資金繰りの様子を知るうえでキャッシュフローは重要ですから、株式投資で無視するというわけにはいきません。そこで、キャッシュフローのことを学びましょう、というのがこの記事の狙いです😉。
キャッシュフローで覚えるのは次の4つです。いずれも手元の現金が増えていればプラス、減っていればマイナスで示されます。
(ここでは減価償却・のれん代などの難しい費用は抜きで、平易に分かるように説明しますのでさらに詳しいことはお勉強しましょう。)
営業キャッシュフロー:売上による現金収支(未回収分は除く)
投資キャッシュフロー:設備投資、資産の売買による現金収支
財務キャッシュフロー:銀行などからの資金、配当による現金収支
フリーキャッシュフロー:使用できる資金(営業CF+財務CF)
営業CF
営業CFは製品販売によって得られた収入から仕入れなどの費用を差し引いたお金です。営業CFがプラスになっているということは、しっかりと現金を残せている状態です。マイナスの場合、利益を上げられていないか、売掛金が回収できておらず、手元の現金が減ってしまっている状態が想像できます。当然プラスになるのが望ましい状態です。
「ジャムおじさんのパン屋」の例では、材料費や人件費を差し引いてもパンの利益がしっかり出ていればプラスになります。
投資CF
投資CFは設備投資で使った資金で、手元から現金が出ていっていますので通常マイナスになります。プラスになるとすれば、保有設備を売ったときですので、会社規模縮小のようなケースが考えられます。したがって、積極的な設備投資を行っていることを示すマイナスになる方が望ましい状態と言えますが、過度な投資になっていないかを確認することは重要です。
「ジャムおじさんのパン屋」の例では、新しいオーブンを購入したり、店舗の内装を改装した場合はマイナスになりますが、経営が苦しくなって駐車場を売って現金収入があったような場合はプラスになります。
財務CF
財務CFは金融機関からの借入と返済、株主からの出資や配当金から算出されます。財務CFがプラスの場合、銀行や株主から資金調達をして手元の現金が増えています。マイナスの場合は、借入金の返済や株主への配当、自社株買いなどで手元の現金が減っています。
つまり、財務CFはプラスとマイナスのどちらが良いかは経営状況によるので、増減する理由を分析することが大切ですね。
「ジャムおじさんのパン屋」の例では、銀行からの借入があればプラス、主に返済をしている場合はマイナスということになります。
フリーCF
フリーCFは営業CFと投資CFの合計で、外部資金によらない手元資金のことですので、これがプラスであることが企業経営においてはとても大切です。フリーCFが多ければ、新規投資、借入金返済、株主への還元といった、経営改善や将来のための様々な資金用途を考えることができます。
フリーCFがマイナスの場合は、自由に使える資金がない状態で、銀行からの借入や新株発行による資金調達の必要がありますので、株主にとっては望ましい状態ではありませんね。しかし、積極的な大規模設備投資を先行投資として行うと、一時的にフリーCFがマイナスになることはありますので、営業CFと財務CF内容を確認して金額の大きさやバランスをよく分析することが重要です。フリーCFは数年単位で見たほうがよくて、例えば、過渡的にフリーCFがマイナスである場合は将来に期待ができる状態ともいえますが、マイナスが続くようであれば経営状態や経営戦略を疑わしくなりますので、投資銘柄としては注意が必要です。逆に、フリーCFがプラスでも投資CFのマイナスがずっと少ない状況であれば将来的な投資をしていないことになるので、これもまた経営戦略を疑わないといけません。
「ジャムおじさんのパン屋」の例では、フリーCFが苦しい状況になっていますよね😢。
実際のCFの例
半導体関連銘柄として飛ぶ鳥を落とす勢い🤩のレーザテック(コード6920)の昨年度の通期決算書を見てみましょう。
営業CFは前年度比で大幅にプラス、投資CFは大幅にマイナス、財務CFも大幅にマイナスです。
売上・利益が好調で、設備投資もかなり積極的に行っており、借入金返済と株主還元もしっかり進めていることが考えられますので、株価の好調は業績と経営状態に支えられたものであることが分かりますよね😊。
フリーCFは大きくプラスに転じており、非常に良い経営状態であることが分かります。
逆に、株価低迷が続く住友化学(コード4005)を見てみると、営業CFと投資CFが大幅マイナスで財務CFが大幅プラス、フリーCFは大幅マイナスになっていて、レーザテックと較べれば説明不要ですね😣。
もう1社、特別な例を見てみます。任天堂(コード7974)です。
営業CF、投資CFがともに1000億を超えるプラス、財務CFは大きな額でマイナスです。投資CFで何があったのでしょうか?経営は問題ないのでしょうか?
通期決算書にはこれらの詳細も書かれています。
これを見ると、投資CFが大きくプラスになっている理由は投資をしなかったからではなく(200億円以上の設備投資をしています)、定期預金の払い戻し(7000億円!)によるものと分かります。また財務CFのマイナスの理由は借金返済(ゼロです)ではなく自己株式取得と配当金支払いで、株主還元策がほぼ全てなのですね。
実は、任天堂は無借金経営で有名な企業で、現金残高が1兆円を超えており😊、これが安定経営と大規模開発(次世代ゲーム機)を行える力の源泉であることが分かります。
このようにCFの分析は様々な視点が必要にはなりますが、売上や利益の数値からだけでは分からない、企業の持っている力や経営の安定性が読み取れます。特に中長期の株式投資には力を発揮する分析です😉。
まとめ
売上や利益からは分からない、キャッシュフローという観点で投資対象を分析することは、投資技術のレベルアップにとても大切です。
設備投資の様子や資金繰りの様子を知るうえでキャッシュフローの分析が重要であることをお分かりいただけたでしょうか😉。
気になる銘柄の決算書が発行されたら、キャッシュフローの数値に目を通して分析してみましょう。PBRやPERによるファンダメンタル分析だけではなかなか決断ができないことも多いと思います。CF分析で得た情報がそういった不安を吹き飛ばしてくれるようなこともありますよ!😘
ではまた!😊
おまけ
TradingViewを使っている読者のみなさんに恒例のプレゼントです😊。
今回説明したCFをチャート上で分析できるようにインジケータを作りました。営業CF、投資CF、財務CF、フリーCFをグラフで見ることができます。単位は億円です。(米国銘柄では億ドルの単位になります。)
「期間」の設定は次のようになっています。
FY:年度ごと(通期)のCF
FQ:四半期ごとのCF
TTM:直近12カ月のCF
FQとTTMのデータは提供されていない銘柄も多数ありますので、切り替えながら使ってみてくださいね。図はレーザテックを「TTM」の設定で見た例です。
この配布も期間限定です。
ダウンロード可能期間:2024.3.31~4.1
[コードの再配布]
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配布ページ:TradingViewオリジナルインジケータの配布
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