卸売産業の構造変革パズルを、最高のチームで解きたい (はじめまして、グッズです)

はじめまして、卸売・仕入のワンストップ取引ができるグッズ (goooods) 代表の菅野圭介(カンノケイスケ)です。
 
先日、シリーズA 1stクローズで6.7億円・累積12億円強の資金調達をアナウンスしました。Angel Bridgeをリードに、既存株主であるX Tech Ventures, Incubate Fund US, Vela Partners にご出資をいただきました。この資金調達活動と並行し、投じていただいた成長資金をどのように働かせるべきか、チーム一同で戦略を練りこみ実行に移しています。
 ちなみにいまのテーマは「集中・出荷・忍耐」です。ならべてみるとずいぶん汗っぽいキーワードです。とにかく余計な事に気を取られず決めた戦略・施策を実行し切り、顧客へ価値を出荷しつづける。施策ごとの短期的な結果に一喜一憂せず、本質的な指標だけを観察して改善を続ける。
作るべき未来のことを想像しながら、チーム全員の集中が定まっている状態をできる限り長く保つことが重要だと考えています。
 
この記事を皮切りに、グッズ(goooods)の情報発信をもっとしていこうと思っています。B2Bコマース?卸サイトって昔から沢山あったよね?なんで今?創業以来、こんな疑問を投げかけられることもよくありました。
このタイミングで、2024年現在地のストーリーとして、グッズの取り組む課題と目指す未来について書き記しておきたいと思います。
 
資金調達関連については、先日プレスリリースも出しています。とりわけ、顧客事例や生成AI技術の活用などが詰まった特設サイトはチーム全員が関わってつくっているので、ぜひチェックをしてみてもらえると嬉しいです。


かんたんに自己紹介

私自身は、2008年にGoogle の日本法人に入社し、主にアドテクノロジーの分野で仕事をしてきました。2014年にFIVEというスマートフォン向けの動画広告プラットフォームを手掛けるスタートアップを起業し、2017年にLINE社へ買収された経歴を持ちます。3年間のPMIを経て2022年に退任し、同年2021年10月にグッズ(goooods)を立ち上げています。

グッズの創業メンバーには、実はFIVEの時代の仲間もたくさんいます。共同創業したCTOの松本さんもその一人で、その頃から(数えれば10年!)の付き合いです。
FIVEやLINEの頃のお話は本題ではないので、その頃のアレコレを語ったインタビューもあるのでよければ御覧ください。


グッズの手掛ける事業領域は“兆”が連続

さて、グッズは2022年9月にリリースされた卸売・仕入れのワンストッププラットフォームです。
※素敵な商品を仕入れたい方、売りたい商品を持っている方はぜひ登録してみてください!

「卸売」と聞いて馴染みがない方も多いと思いますが、実はこの産業は国内でも有数のGDP比率を占める巨大マーケットです。
ふだん消費者としてお店やECサイトで目にする商品の多くは、「卸売・仕入れ」を通じて品揃えされているわけですね。小売店舗やECサイトの他にも、カフェや飲食店、サロン、ホテル、空港免税店、マッサージ店、サウナ施設などの顧客接点があるサービス業の店舗でも物販もその対象です。グッズではインフルエンサーの方たちが商品を仕入れてファンに販売する際にも利用してもらっています。
簡単にいえば、商品をつくるブランドと小売販売を行う事業者をつなぐ役回りを、デジタルプラットフォーム上で誰でもかんたんできるようにしよう、というのがグッズの事業です。

卸売、とひとくちに言っても、雑貨、食品、アパレル、日用品、ペット用品…無数のジャンルが存在しています。つまり、ふだん目にするお買い物のカテゴリすべてが対象となり、それぞれのジャンルで商品の卸・仕入れが発生しているわけです。
そしてそれらの市場規模は雑貨・数兆、アパレル・数兆、日用品で数兆、足してあわせて数十兆円といった具合で、「兆」という文字がゲシュタルト崩壊しそうになります。ホリゾンタルに卸・仕入れという商行為をとらえると、非常に裾野が広い産業、ということになります。

これまでの卸売産業では、伝統的に各ジャンルに特化するかたちで卸・流通が発達してきています。再編・統合を経ながら、時価総額数千億円の巨大企業が多く存在しています。
しかし、デジタルプラットフォームでジャンルをまたいだ大規模なアグリゲーターはまだ出現していません。これまでの卸産業が各ジャンルで垂直に発達してきたとしたら、「卸売・仕入」という行為に対して、汎用的なデジタルプラットフォームが成立するか?ここを狙いにいくのがまずは出発点です。

ちなみに、この産業にたどり着いたきっかけは私の妻がD2Cブランドを運営するなかで、そのポテンシャルに気がついた経緯があります。このあたりはサービスリリース時に受けたインタビューでも取り上げていただいています。

巨大な産業の課題、スタートアップが取り組む意義

さて、それぞれのジャンルで日々商品の仕入れ・卸売が発生しているわけですが、ここで何が行われているのか。大きく3つの業務ブロックに整理しています。

  1. 「取引先の開拓業務」

  2. 「受発注・経理業務」

  3. 「与信・決済業務」

まず取引先の開拓業務です。
例えば、あなたが今日ECサイトを立ち上げたとして、どうやって販売する商品を探すでしょうか?
多くの人は、最初のアクションとして、関心のあるジャンルの展示会に赴いて商品を探したり、良さそうなメーカーへ直接仕入れさせてほしいとメールをしたりします。
その状況を売り手側のメーカーの行動からみるとどうでしょう。
展示会への出展は、費用が先立ってかかるが成果が保証されているわけではなく、ブース設営・搬出搬入・複数日に渡る接客などの人的コストも発生します。商談獲得から受注につながる確約もありません。
メールでの問い合わせも、たまたま問い合わせが来たらよいものの、能動的にアクションが取れる余地は少ないでしょう。
このように、新規取引のけっこうな部分が偶発的な出会いや、構造化されていないプロセスが存続しており、売り手・買い手ともに大きなリソースが割かれています。とりわけ、地方では商圏の限定性や移動コストが存在するため、その課題は顕著です。

次いで受発注・経理業務が待っています。
無事、取引につながったとしましょう。新規取引の場合、まず契約作業、与信作業、口座開設書類、取引条件の合意、注文作業、納品書作成、請求書作成、支払い確認、未払金の督促など、バックオフィス業務が取引ごとに一件一件走ります。
受発注の方法も、発注側の希望するやり方と、受注側の希望するやり方が混在して標準化されておらず、主に取引時のパワーバランスでその形式が決まります。
取引条件も取引先ごとに変わってくるため、注文/受注管理や経理作業もミスが起きがちです。取引先が20社くらいに増えてくると、小規模な小売店やメーカーはマニュアル・スプレッドシートで管理することが相当困難になってきます。売り手・買い手ともに、受発注に伴うバックオフィス業務を兼務することも多いなかで、労働時間が増加や、事業拡大を阻害する要因になってきます。
ちなみに、大規模で反復的な取引の場合は、EDIなどのプロトコルが存在しています。これは大手の売り手・買い手が倉庫・在庫管理・経理と紐づいた固有のシステムが前提となり、それゆえ小規模な事業者の浸透率は低く、産業全体に行き渡っているかというとそうではありません。

そして与信・決済です。
現在の卸売における商慣習は前払い・在庫買い取りが一般的です。
これは、売り手の不安を反映しています。
たとえば、展示会で名刺交換をした目の前の個人事業主がきちんと商品代金を支払ってくれるでしょうか?この問いに対して誰も精度高く答えられないため、どうしても初期の取引条件が保守的にならざるを得ません。そしてこれは、買い手からみると、仕入れのために先にキャッシュアウトが発生し、かつ在庫リスクを完全に背負い込む必要がある取引条件です。
なぜこういった商慣習になるのか。それは、産業内の卸・仕入れの取引関係は非常に細かく散在しており、産業内に与信・取引データが蓄積されていないために、初期の取引条件が保守的・硬直的にならざるを得ない状況であるからです。
この状況によって、買い手の取引参加が大きく制限されています。さきほど “あなたが今日ECサイトを立ち上げたとしたら?”という仮定をしましたが、おそらく「前払いで大量の在庫を抱えてください」という条件で、売れるかどうかわからない商品を仕入れるという判断をすることは難しいはずです。

こうした状況もあいまって、数十兆円にのぼる卸売産業は、労働生産性が低いと指摘されています(図)。

このレポートが正しいとして、米国を100としたときに32.3というのは衝撃的な数字ですが、小規模分散している市場構造、高齢化、技術浸透の遅れ、などが要因として指摘されています。
国土の大きさ、流通環境の発達経緯、小売店舗に対するメーカーの数も異なるため、一概に比較はできない部分もありますが、大きな伸びしろがあるのは間違いないでしょう。 とりわけ、小規模な売り手・買い手の取引はまさに例に挙げたような課題が顕著です。これは努力の問題というより、仕組みの問題でもあります。  

巨大な産業で、従事者も多い。
独立系小売店で国内120万店舗。サービス業ではリラクゼーションサロンで13万店舗。宿泊施設で6万箇所。EC販売を行っている個人も膨大で、今後も伸び続けるはずです。  
しかし仕組みが効率化されていないゆえに利益があがらず一生懸命働いても所得に反映されない。 これがいまの卸売産業だったとして ― もし、すべての業務ブロックの課題を、魔法のように解決できたら?  

仕組みを提供できる能力があるのであれば、これを実現することこそが社会にとって意義のあるミッションたり得るはずです。
人々の労力を削減することは、ある意味で時間を節約すること、生きる時間を増やすこと
ビジネスをうまくいく仕組みを提供することは、自信を得ること、幸せにつながること
そして、奉仕できる対象の人が多ければ多いほどインパクトが生まれる

グッズが手掛ける卸売の産業には、人びとの生きる時間を増やせる、所得と自信を増やせる、そしてその対象人数は多い。深い課題と膨大な事業ポテンシャルが眠っている、大変で、おもしろい領域だと思います。
そして、思い描く構築物をつくる能力が、現に今のチームに存在しています。グッズは、挑戦のチケットを手に入れているのです。

グッズは最初期からプロダクト3つ分作る

もし、すべての業務ブロックの課題を、まるごと解決できたら?

グッズが提供しているのは「取引先発見」「受発注・経理」「決済・督促」の3つを一箇所でできるワンストッププラットフォームです。

隙間時間で高品質な取引先をかんたんに発見できる。
受発注・経理の業務が自動化される。
請求業務や督促業務も一切消滅する。

この仕組みがより浸透すれば、産業内の取引の仕方が変わり、生産性は飛躍的に向上します。

現在、グッズでは14名のフルタイムメンバーで製品を構築し、売り手・買い手を集め、顧客に対応し、日々プラットフォームを運用しています。
3つ分のプロダクトを作りながら顧客を集めるようなもので、ここに至るまでには多大な開発、営業、オペレーション構築が必要でした。

そして、ようやくいまグッズのプラットフォームは、一定の水準まで持って来ることができたと認識しています。
今回の資金調達ラウンドは、こうした背景のもと、プラットフォームの底力を引き上げ、更に速いスピードでこの仕組みを行き届かせることを目的としています。

産業構造の変革にむけたパズルを解く

小規模な事業者をターゲットとした場合、営業工数やマーケティング費用がかかるわりにLTVが低くなるのではないか?一般的にいわゆるSMBを中心顧客としたときに事業面での懸念が自ずと発生しますし、グッズの現在の対象顧客の中心は小規模な事業者ですからそれは妥当な懸念だと思います。
この仕組みを行き届かせることに大変な時間がかかるのではないか。あるいは小さなサイズでまとまってしまうのではないか。こうした疑問は何度も投げかけられてきました。

その問いに対してのグッズの戦略は、「産業内の取引グラフをまるごとプラットフォームに載せ替えていく」というものです。これにより、産業にこの新しい仕組みを浸透させていくことができると考えています。

よくよく考えてみれば、すでに世の中には無数の取引関係・人間関係がすでに存在しているわけです。こうした関係を、ソーシャルメディアのフレンドグラフになぞらえて、売り手と買い手の「取引グラフ」と呼ぶことにしましょう。

世の中にはすでに売り手と買い手の人間関係があり、取引を通じて信用が発生し、そこで金銭の流れが生じています。問題は、産業内でこうした「取引グラフ」が可視化され、「取引データ・信用データ」が蓄積・構造化される仕組みになっていないという点にあります。

もし、これまでオフラインで行っていた仕入・卸売の取引に関わるありとあらゆる業務を、追加の費用負担なく、圧倒的に楽に完結できる状況を生むことができたら、これまでのやり方を変える強い理由になります。かかる費用が同じであるならば、誰もわざわざ時間がかかって面倒なプロセスを続けたくはありません。

だからこそ、これまでグッズは3つ分の業務ブロックがすべて完結できるプラットフォームをつくることにこだわってきました

商品カタログとしてのB2Bコマース。業務効率化のための受発注SaaS。後払いができる決済ソリューション。それぞれが独立して提供されたとしても、仕入・卸売を行う売り手と買い手にとって、本当の意味で業務が完結した状態にはなりません。「じゃあ、これまでの取引をぜんぶデジタルプラットフォームに載せ替えるか」という動機は高まらない。

だからこそ、ワンストップで完結するプラットフォームをつくり、そしてこの産業内に無数に存在している取引グラフを、顧客が自発的に載せ替えていくための仕組みを構築する努力をしてきました。取引グラフの移植というアクション自体を、プロダクトとして構造化してきたとも言えます。

こうしたアプローチによって、はじめて急激に、指数的に、産業内の無数の事業者が新しい取引方法に移行することができると考えています。
その先には、生きる時間を増やし、所得・自信・選択肢を感じられ、幸せを実感できる人が大きく増え、産業としての生産性が飛躍的に上昇する未来を信じています。そして、この取引グラフの移行現象を起こしたプレイヤーは少なくとも日本では存在していないと認識しています。

今後、取引グラフがプラットフォームに移行されてくるに従い、グッズはビジネスコミュニティとしての色彩を強めていくでしょう。なぜならば、売り手・買い手にとって大切な取引関係が移植され、グッズ上で維持・拡大されていくからです。
その際には、魅力的なマーケットプレイスに加え、細やかな取引パターンに対応する機能、高度なオペレーション、コミュニティ維持のための仕組み、審査やセキュリティなど、ありとあらゆる角度で解を考え対応しつづける必要があります。
 
すべての業務ブロックの課題を解決できたら、膨大な人数の時間の節約、所得の向上につながります。
この完成形が1000pcのパズルだとしたら、いまはまだ隅の4つをいくつか埋めたくらいの段階でしょうか。この産業構造を変えていく遠大なパズルを、最高のチームで粘り強く解いていくことがグッズが目指している事業の在り方です。

傍証として、北米ではすでに新しい卸売プラットフォーム・アグリゲーターが席巻し、デカコーンスタートアップも存在しています。時が下るにしたがい、日本やアジア圏域でもこのような構造変化が起きてくるはずであると考えています。

最高のチームで、長く、複利を効かせていく

この複雑なパズルを解くためには、創業時から相当な時間と資本が必要になる見込みでした。二度目のスタートアップでの挑戦だからこそできる、産業構造、人びとの行動様式、文化に好影響を与えられるような事業を作っていきたい、と考えてきました。
 
そのためには、長く複利を効かせる仕組みづくりにこだわること、そしてそれを支えるチームの力が必要です。
 
グッズはEveryone, entrepreneur というミッションを掲げています。ここには、市井の人びとのアントレプレナーシップを最大化したいという想いを込めています。
 
顧客の多くは情熱を込めて商品をつくったり、お店で商売をしている人たちです。しかし前述の通り、卸売・仕入の現場ではリスクや不安が常につきまとい、煩雑で効率的ではない業務も伴います。こうした事業者の方たちの取引を円滑にし、生産性を一気に引き上げることを成し遂げたいと考えています。そうすれば、この産業に関わる事業者の方たちが自信と選択肢をもって人生を過ごす助けになるのではないかと思っています。
アントレプレナーシップは、イーロン・マスクやスタートアップコミュニティに閉じたものではないはずです。

この仕組みが浸透した未来では、グッズはこうした無数の人たちの挑戦を支えるプラットフォームとして存在したいと考えています。

だからこそ、ストックオプションは標準比で2倍準備

チームづくりも、長く・複利で、という考えは同様です。私自身、起業家としてカリズマティックなタイプというより、意義のある構築物をつくって死にたい、と考えるタイプだと思っています。
チーム一同で支え合いながら、実現した事業価値の成果を、リスクをとっていただいた投資家はもちろん、皆で分かち合いたいと考えています。

そのための具体的なアクションとして、今回の資金調達時にストックオプションの原資も標準比で2倍用意することができました。これによって、一人当たりのインパクトが大きいかたちで、大きな事業を目指す構えができたと思っています。
 
ただ、今のところ、組織の急拡大をめざして採用を重ねる方向では考えていません。プラットフォームとしての地力を上げ、複利の効く仕組みを作り上げていくことが重要な時期だと捉えています。
グッズが取り組む事業は、顧客・社内をまたいだコミュニティづくりです。パートタイムの方、業務委託の方を含め、熱心で献身的なチームのおかげで、この事業を続けられていると感じています。この姿勢はこれからも大切にしながら、グッズの事業領域に意義を感じ、時間を投じてもらえる方たちと、一緒に働いていけたらよいな、と思っています。
 
こうした事業の在り方や、チームの在り方に関心がある方は、ぜひ私たちのお話をもっと紹介させてください。
現在の採用ポジションは以下で公開されています。私の X でDMをいただければ、直接詳細な事業についてのお話も差し上げたいと思います。

Xはこちらです。
https://twitter.com/keisukekanno

はじめてのnoteで、事業の紹介にしてはずいぶん長くなってしまいました。
次回以降は、また別のテーマでグッズについての紹介をしてみたいと思います。ここまで読んでいただけたみなさん、ありがとうございました。
ぜひ、スキ・拡散をしていただけると嬉しいです。では、また。


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