ボドゲ制作費用(中量級ゲーム「イグナイター-魔窟の結晶-」の場合)
こんにちは。きよみずかつやです。
2024年春のゲームマーケットで「イグナイター-魔窟の結晶-」という協力型バッグビルドの中量級ゲームを販売します。
「イグナイター」は会場販売価格5000円/予約者限定4000円という、初出展としてはかなり強気な価格設定なのですが、どうしても中量級でコンポーネントが多くなったのと、ゲーム外の諸費用の関係でこれくらいの価格にせざるを得ませんでした…。
そこで、「なんでこんなに高いんだ」というご指摘に対する言い訳も兼ねつつ、「イグナイター」制作と販売にかかった費用を記事に残しておきます。
これから中量級のボードゲーム制作を目指す勇敢な制作者の方々や、中量級でなくとも「ボドゲ作るのってどれくらいお金かかるの?」という純粋な疑問をお持ちの方に少しでも有益な記事になれば幸いです。
原価について
一言に「原価」といっても様々です。
コンポーネントやカード印刷などにかかる「材料費」、校正などの調整やイラスト代など、サークル外の人間に支払われる「労務費」、ゲムマへの参加費やチラシの印刷などにかかる「販売費」などがあります。
※この辺の知識は素人なので分類間違ってたらごめんなさい。下記のサイトが分かりやすかったです。
この記事では、原価の種類ごとにそれぞれいくらかかったかの実例を挙げていきます。
皆さんが想像しやすいのは単純に印刷とかにかかる「材料費」が主でしょうが、実際にはもっとたくさんのお金がかかってるんだよ…ということを知っていただければ幸いです。
24/4/8追記:
「そこまで原価に含めるか?っていうのがちらほらある」という意見を頂戴しました。確かに何でもかんでも原価になりそうなのをぶっ込んでいますが、考え方によっては原価に入れるべきでないものも入ってるかもしれないので、とりあえず観点としては「確定申告のときに経費で落とせそうなやつ」の大半が含まれてる…と思っていただければ幸いです(家賃以外)
製造原価
材料費
一番わかりやすい「カード類の印刷費用」から記載していきます。
「イグナイター」は、バッグビルドというシステムを採用しているため、カードのほかにチップが必要になります。
ボードゲーム印刷の大手である萬印堂さんに依頼したのが下記のとおりです。
※なお、「イグナイター」は製造数100個なので、以降に記載のコンポーネント数はすべて1セットあたりの数、金額は100セット分の金額になります。
萬印堂さんの詳しい価格表は下記をご覧ください。
これとは別に、取説をプリントパックさんに依頼しました。
※イベントでの無料配布を考えてこちらは200部作成
ボードゲームなので、印刷費用のほかに木コマなどのコンポーネントが必要になります。
「イグナイター」は駒のタチキタさんと、BGPさんを利用しました。
ここからは「イグナイター」独自のコンポーネントなのですが、バッグビルドは「袋からチップを引く」ゲームなので、袋が人数分必要になります。
これに関してはBGPさんでも扱っていることを後から知ったのですが、自分はトートバック工房さんで購入しました。
また、大量のチップをしまうためのケースも、セリアさんで購入したものを同封することにしました(大量のチップを箱のふたとかに入れて管理してもらうこともできたのですが、ゲーム体験が悪くなりそうだったため…)
その他に、箱の周りを薄いビニールで包んで蓋が不用意に開かないようにする「シュリンク」という加工もあった方が良いです(見栄えはもちろんですが、購入者が袋に入れて持ち帰る途中に蓋が空いて中身が散らばる事故がかなりマイナスイメージのため)。
フィルムを買って自分で包むことも出来なくはないらしいのですが、器用さに自信がなかったのでTokyo girls solution様に外注に出しました。
※これ材料費なのかちょっと分かんないですがとりあえず材料費に勘定してます
あとは細かいですが、コマやカードをしまうためのジップ袋もセリアで購入しました。こちらは40枚入りとかで買えるので100セット分でも大した金額にはなりません。
材料費合計:399,181円
材料費以外(労務費・経費)
目を引くボードゲームを作るためには、フリー素材だけでは難しい場合が多いです。
特に中量級ゲームとなれば、さすがにいらすとやの画像だけでゲームを作っても売れないでしょう。
近頃はAI生成でイラストも描けるようになっていますが、賛否両論あるので僕は友人のイラストレーターに依頼することにしました。
取説やカードテキストにあまり自信がなかったので、校正サービスも依頼しました。
「ボードゲーム 校正」で調べて出てきた人のうち、僕の好きな「サグラダ」や、以前買ってみて複雑なルールの割には取説が読みやすかった「クラウドエイジ」の校正をされていたというunion talesのかんな様にお願いしました。
また、ゲームを完成させるためにテストプレイ会には何回も参加しました。
こういったテストプレイ会は大抵の場合、場所代を確保するために参加費が設定されていることが多く、1回1回は大きな金額ではない(1000円前後)ですが回数をこなすとそこそこの金額になってきます。
また身内のテスト会でも、ボードゲームカフェなどを利用した場合はその料金も経費としてかかってきています。
ボードゲームカフェONEというボドゲカフェでは、3000円の料金で店員さんが直々にテストプレイをしてくれて、ボドゲのコンサルをしてくれるサービスがあったので、こちらもテスト費用として加算します。
この辺りはクオリティをどの程度追及するかにもよってきますが、テストプレイ会は1回や2回ではなく、回数をこなすことでゲームがどんどんブラッシュアップされていくので、きちんと費用を払ってでも複数回参加すべきと僕は感じます。
身内ボドゲ会でもいいですが、メンバーを変えるとそのたびに新しいアイデアや今まで気づかなかった点に気づけるので、ここは必要経費かなと考えています。
労務費・経費合計:98,300円
販売費
ここからは、ゲームを「作る」のにかかったお金ではなく、ゲームを「売る」のにかかる費用の話になってきます。
ゲーム制作というとつい「作る」ためのお金ばかりに目が行きがちですが、この「売る」ためのお金も結構馬鹿になりません。
僕は「イグナイター」の価格設定の際にこの販売費を軽視していたので、後々正確に計算して青ざめることになります。
出展料
これは必ずかかりますが、参加プランによって金額が変わってくる部分なので調整は可能かと思います。
自分は中量級ゲームで試遊必須と考えたこと、1日で売り切るのは不可能と考えていたため、土日両日&試遊ありの比較的高いプランに申し込みました。
※なお、一般両日出展の場合出展者証が4枚同封されるのですが、そうとは知らず2人分だから1人分追加で申請しなきゃ…という無駄な4000円が含まれています(出展者証が5枚になった)
試遊会など
本サークルは幸運にもゲムマ前の大試遊会「ボードゲームトライ!」及び「フォアシュピール」の抽選に通り、両イベントに参加出来ることになりました。
また、巣鴨のボードゲームカフェ有明亭でのゲムマ直前試遊&交流会にも参加しました。
こういったイベントの出展者としての参加費用も少しかかってきます。
宣伝費
ゲムマ当日の宣伝のため、チラシは欠かせません。
また、広い会場の中で遠くからでも目を引く大きめのサイズのポスターも作成しているサークルがほとんどで、あった方が良いと思われます。
設営用具
ポスターを作るなら、ポスターを掲示するポスター立てが必要になります。
コミケ等に参加したことのある方なら持ってるかもですが、僕はこの手の販売イベントは初めてだったのでちょっと良いやつを購入しました。
ここは安いやつを選べばもう少し安く済むところかもしれないですし、繰り返し出展する人なら今作のゲームの原価には乗せなくてもよい部分かもしれないですね。
また、無くてもよいという声も聞きますが自分はゲムマのテーブルに敷く用のテーブルクロスも購入しました。
最近のゲムマから防炎加工が必須になったので、スプレー等で自分で防炎加工をする場合でなければちょっと値段のするものを購入することになります。
こちらもコミケやゲムマの出展経験がある方にはかからない費用です。
あと、ゲムマでよく見るやつで、ゲームを陳列するための段ボールのひな壇などを使う場合もあると思います。
ゲムマでは陳列の高さ=正義、みたいなところがあるので、やりすぎるのもどうかと思いますが、平置きよりはある程度の高さがあったほうがお客さんも手に取りやすいと思います。
他にコイントレー・領収書なども使う場合があります。コイントレーなんて100均でも買えるのに、自分は変にこだわって金属製のちょっと良いコイントレーを買ったのが無駄な出費だったな…と反省しています。
それと、カードを飾ってコンポーネントを見せるためのアクリル写真立てなんかも使ってる人が多いですね。
配送料
ゲームマーケット当日、会場にゲームを運ぶのも、自家用車を持っていない場合は配送料やレンタカー代がかかります。
僕の場合は土日ともにTimesのカーシェアを利用して搬入・搬出を行う予定です。
販売費合計:89,736円
合計
配送料など、概算の費用もありますが、ここまで算出してきた費用の合計は、
587,217円でした。
材料費:399,181円
労務費:98,300円
販売費:89,736円
いかがでしたでしょうか?
僕の場合ちょっとお金をかけすぎたところもあるかもしれないですが、それでも「コンポーネントの量がそこそこで、テストを何度もやって調整する必要がある複雑なシステムで、箱サイズが大きく搬入にそこそこのコストがかかる」ゲームを作る場合、結構大きいお金が必要になるということが伝われば幸いです。
ちなみに「イグナイター」が仮に定価の5,000円で100個全て完売した場合、単純計算で500,000円の売上になります。はい、赤字です。
利益トントンになる価格設定をするのであれば6,000円で販売する必要がありましたね…(さすがにこの価格設定は無謀と判断して自腹を切りました)
継続してボードゲーム制作を続けていくのであれば、赤字制作はやはり不健全なので、次回以降はきちんと利益の出る経費コントロールを、ゲームデザインの時点からしっかり行っていきたいですね…。
24/4/8追記:
誤解のないように追記しておくと、もともと「赤字上等!」と思って価格設定をしたわけではなく、材料費を30万ちょっとと見積もっていた(萬印堂の早割A15%オフが適用できると思ってた…間に合わなかった…)のと、イラスト数万、ゲムマ参加費4万としても原価40万くらい+αで作れるやろ、と思って価格設定をした、という経緯があります。何なら当初3500円プランもあったくらい。
それが、ふたを開けてみたら材料費は40万近く行くわ(テスト会での改善をきっかけにチップ枚数が倍増したというのもある)、出展料以外にもいろんなところでお金かかってくるわ、なんだかんだあって気づいたら5000円で売っても赤字…!?というところに来てしまっていた、という感じです。
(とはいえ最初からこの原価分かってたとして6000円で売るという選択肢は取れなかったな……)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?