和泉歌夜(いずみ かや)

自由きままに物語を書いています。

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『最強姉妹の末っ子』第24話

 ムーニーの手にボタンの付いた小さな箱を持っていたので、私はすぐに取った。  縦一列に二つ並んでいて、『拘束・解放』と書かれたボタンと『放電・停止』と書かれたボタンがあった。  私は両方押した。  すると、椅子の装置が止まり、ティーロとティーマスを拘束していたものが外れた。  二人ともほぼ同時に倒れたが、意識はあるようだった。 「グオオオオ!!!」  主を倒されて怒っているのだろう、三ツ頭のドラゴンが咆哮を上げてい。 「よし、今度こそ決着をつけようじゃないの」  私はそう呟い

    • 『最強姉妹の末っ子』第23話

      「アハハハハッ!! アーーーハーーー!!」  ムーニーは高らかに笑うと、パフパフとサイズの大きい靴を鳴らしながらティーマスの方に向かった。 「どう? そろそろ言う気になった?」  ムーニーがニヤニヤしながら聞くと、ティーマスがキッと首だけを動かして睨みつけてきた。 「黙れ! この略奪者!」  剣士の言葉にムーニーは首を傾げた。 「略奪者? 私のどこが?  私はお前らを人にさせたんだ。人と同じようにご飯を食べ、人と同じような快楽を得させたんだ!  略奪者じゃなくて、神様の間違い

      • 『最強姉妹の末っ子』第22話

         だけど、城内は迷宮だった。  部屋数も多い上に、工場みたいにガラス窓で中の様子を確認できないから、一つ一つ扉に耳をあてないといけなかった。  その上、巡回している魔機達の相手をしないといけない。  一匹でも見逃したらすぐさまムーニーに報告されてしまうので、確実に仕留めて、出来るだけ発見が遅れるように空き部屋に隠したりしながら、彼らを探した。  階段を見つけたら、上へあがるようにした。  国の偉い人は大体高い階に住んでいるのが一般的だからだ……たぶんね。  現在のピグマーリオ

        • 『最強姉妹の末っ子』第21話

          「ところで、メタちゃん。ドレス、ボロボロじゃない?」  満足するまで私の抱擁をしたロリンが聞いてきた。  確かに変態生脚……じゃなかった。  黒い騎士との戦闘で、ドレスが所々破れていた。 「新しいの無いの?」  私がそう聞くと、ロリンは「ちょっと待ってて……」と二つの丸いものを置いて、リュックの中を漁った。  待っている間、私はロリンが応援している時に持っていた丸いものを拾った。  これは一体何なのだろう。  思っていたよりもずっと軽い。  振ってみると、シャンシャンと音が鳴

        『最強姉妹の末っ子』第24話

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        • 最強姉妹の末っ子
          24本
        • 企画に参加した作品
          182本
        • 作品
          1本
        • ボカロにしたい曲を自分で作詞した
          292本
        • 【週刊少年マガジン】漫画原作応募作品
          0本
        • 恋愛小説部門応募作品【創作大賞2023】
          0本

        記事

          【お題:記憶冷凍】あの頃を思い出してみませんか?

          何もかも楽しめた子供の頃。 人に振り回され、環境に抗いきれずに心をかき乱された青春時代。 しかし、時が経てば忘れてしまうもの。 あの頃を思い出したい……そんな願望を抱いた事はございますか? その願い、叶います。 弊社は企業秘密の特殊なヘルメットを装着して、記憶の奥底に眠っている幼少期や青春の記憶を取り出し、それを液状化して冷凍保存する事で、いつでも必要な時にあの頃の記憶を鮮明に思い出す事ができます。 今なら無料でご体験できます。 気になる方はぜひ以下のQRコードを読

          【お題:記憶冷凍】あの頃を思い出してみませんか?

          【お題:二億斉藤】二億斉藤さんに取材

           本日はこんな足元がお悪い中、お越し下さり、ありがとうございます!  どうぞお掛け下さい!  では、早速ですが、どんな健康法を実践されているんですか?  ふむふむ、へー、朝食をたらふく食べる……それだけですか?  それで長生きできるなんて凄いですね!  ……え? まだ30歳?  いやいや、ご冗談を。  だって、あなたは……あ、『二億歳藤』ではなく『斎藤二億』さん……あ、単純に役所のミス……そうですか。  なんか……ごめんなさい。  どうぞお帰り下さい。  はい、あの……取材料

          【お題:二億斉藤】二億斉藤さんに取材

          『最強姉妹の末っ子』第20話

          「え、え、うぇ?! な、なんで?!」  私が目を丸くしていると、黒い騎士は「不審者が地下室に向かうのを見かけたから」とロリンの方を指差して言った。 「ロ〜〜リ〜〜ン〜〜?」  私が隣にいる姉を睨みつけると、ロリンは『しまった』という顔をした。 「そうだった。ポーションの効果継続中に違うポーションを食べたら、後の方に上書きされるんだった……」  青ざめた顔でそう言った。  つまり、先に透明化ポーションを食べた後、嗅覚を鋭くさせるポーションを食べたら、透明化の効果が消えたってこと

          『最強姉妹の末っ子』第20話

          『最強姉妹の末っ子』第19話

          「このっ! 離しなさい! このっ! このっ!」  私が口でそう叫んだ所で無駄と分かっていたけど、もしかしたら言う事聞いてくれるかなと思い、叫んでみた。  だけど、予想通り淡い期待だった。  彼らは私が見えていないかのように無視し、廊下を進んだあと突き当りの階段を降りていった。  ズシンズシンと揺れる度に、まるで地獄の方に降りているみたいな心地になって、ますます叫んだ。  段々辺りは暗くなっていき、カビの臭いがしてきた。  劣悪な環境に入った事は明らかだった。  埃が私の口の中

          『最強姉妹の末っ子』第19話

          【#青ブラ文学部】大事な話

          〜〜〜〜!!! 〜? 〜〜〜!! 〜! 〜! 〜! 〜〜〜〜? 〜〜〜!!! 〜〜〜〜??? 〜〜〜〜?! 〜〜〜〜!? ……あ、ごめん。マイクをミュートにしたまま喋っちゃった。  これじゃあ、いくら話しても君に届かないよね! アーーハッハッ!  ハハハ……え? 何を話していたのかって?  あぁ、それね……今なら100%儲かる株の話が……って、あれ?  もしも〜し? もしも〜し!  マイクのミュートどころか、画面が真っ暗になっちゃった。 ↓今回参加した企画はこちら

          【#青ブラ文学部】大事な話

          『最強姉妹の末っ子』第18話

          「ウガアアアアア!!!」  巨大なオークの魔機が私に向かって棍棒を振り下ろしていた。  スッと華麗に交わすと、がら空きになった脇腹に一発蹴りをお見舞いした。 「ウグッ?!」  オークはうめき声を上げたが、まだ大丈夫といった様子で、棍棒を横にして振ってきた。  私は両手でそれを受け取めたが、相手の力も強いのか、若干後退してしまった。  が、相手に衝撃を与えるには十分だったらしくて、「ウゴォ?!」と驚いたような声を上げた。 「ちょっと借りるわよ」  私は無理やり引っ張ってオークか

          『最強姉妹の末っ子』第18話

          【#シロクマ文芸部】風薫るカレーの香り

           風薫る黄昏時。  学校が終わった僕は夕焼けが眩しいと感じながら下校していた。  家の近くまで来た時、普段は閉まっている窓が空いて、そこから美味しそうな匂いが漂ってきた。  その香りで今日の夕食がカレーだと分かった。  ただいまと言うと、案の定エプロンを着た母が「カレーを作ったから手を洗ってきなさい」と言ってきた。  僕は鼻歌をうたいながら泥の付いた手を念入りに洗った。  僕は母の作るカレーが大好きだった。  お肉は入っていないけど、その代わりにジャガイモとニンジンがふんだん

          【#シロクマ文芸部】風薫るカレーの香り

          今日でnoteをはじめて一年になりました。 ここまで続けられたのも読者の皆様が読んでくださったおかげです。 2年目も引き続き執筆に励みたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

          今日でnoteをはじめて一年になりました。 ここまで続けられたのも読者の皆様が読んでくださったおかげです。 2年目も引き続き執筆に励みたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします。

          『最強姉妹の末っ子』第17話

           そういえば、どうしてムーニーと黒い騎士はこんな場所で話をしているのだろう。  耳がまともにならなくなりそうなくらい喧しい場所だというのに。  そう思っていると、床に線みたいなのが引かれていた。  試しにまたいでみると、騒音がピタリと止み、ムーニーの声だけが聞こえた。  一歩下がってみると、またうるさくなった。  なるほど、この線から大扉までは外部からの騒音が遮断されているんだな。  けど、どういう仕組みでやっているのだろう。  左右を見たり見上げたりしていると、天井の方に光

          『最強姉妹の末っ子』第17話

          『最強姉妹の末っ子』第16話

           全員透明になった所で、早速ドアを開けた。  外に誰もいない事を確認すると、忍び足で歩いた。  中はお城だけあって、豪華な絨毯が敷かれていたが、右の壁側が一面ガラスで張られていた。  何でだろうと思って覗いてみると、その理由が一目みて分かった。  ガラスの向こうは工場になっていたのだ。  工場はロリンが秘密の地下空間でやっていた所よりもさらに大きかった。  夥しい数のテーブルが置かれ、そこではエプロンを付けた老若男女が仰向けに寝ている魔機をトンカチなどで組み立てたり火花を散ら

          『最強姉妹の末っ子』第16話

          『最強姉妹の末っ子』第15話

          「よし、そうと決まれば……」  ティーロはそう言って、三つあるうちの左側のソファをどかした。  床に金庫みたいなドアがあり、彼はギィと若干きしむ音を立てながら開けた。  中は薄っすらとハシゴが見えた。  これを見て、私はなぜ不自然にソファが多く配置されているのか、分かった。  この扉を隠すためだったんだ。 「どこに続いているの?」  私がティーロに聞くと、彼は「城の中までだ」と言って降り始めた。 「城の中? なんで、そんな所まで続いているの?」 「地道に掘っていったんです。い

          『最強姉妹の末っ子』第15話

          【お題:放課後ランプ】我ら、学校放課後お助け隊!

           よいか、諸君。  我々『学校放課後お助け隊』を数年やってきた訳だが、ある問題点を抱えていた。  何度も警察を呼ばれてしまう事だ。  確かに平均年齢46歳のおじさんが小学校や中学校に上がり込んで、告白や課題の手伝いをしたりするのは、傍から見たら不審者だ。  そこでこのランプを導入した。  名付けて……放課後ランプ!  これさえあれば助けが必要になった時にランプが光……むっ?! もう光った!  よーし、夜も遅いからしっかり防寒はしてくれ。  くれぐれも依頼人に暴漢だけはするなよ

          【お題:放課後ランプ】我ら、学校放課後お助け隊!