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最強姉妹の末っ子

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『最強姉妹の末っ子』第39話

『最強姉妹の末っ子』第39話

「ムーニー!」
 ロリンはすぐさまムーニーの所に駆け寄って、一目で危険な状況だと分かると、近くに置いてあったリュックへ向かった。
 が、その前にメタリーナが立ちはだかった。
「何をしているの? ロリン」
「決まっているでしょ。ムーニーを治療するのよ」
「なるほど……回復のポーションで治癒するつもりなのね……それじゃあ」
 メタリーナはロリンのリュックをぶ厚い手袋で持ち上げた。
 そして、空いている

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『最強姉妹の末っ子』第38話

『最強姉妹の末っ子』第38話

 私とメタリーナは並行しながら歩いていった。
 鼓動が未だに元に戻らない。
 恋ではないのは明らかだ。
 チラッと長女を見た。
 メタリーナは優雅に揚げドーナッツを食べながら歩いているが、一切隙を感じられない。
 仮にもし攻撃しようとしたら、あっさりかわされて致命傷の反撃を被る事になるだろう。
 それくらい彼女の身体から目に見えない不気味な何かがまとっていた。
 こんな未知数の恐ろしさを持つ相手に

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『最強姉妹の末っ子』第37話

『最強姉妹の末っ子』第37話

 だけど、数秒で出発の準備が終わってしまったので、せっかくだから食べ物を売っているお店があるかどうか探す事にした。
 個人的にはこの国を初めて訪れた時に見たフワフワのパンケーキや揚げる系のお菓子(チュロスや揚げドーナッツなど)があれば、数々の戦闘で疲弊した私の身体を癒やす事ができる。
 ついでにロリンとムーニーに差し入れとしてあげたいので、ブラブラと廃墟も同然の道を歩いていった。
 すると、こんな

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『最強姉妹の末っ子』第36話

『最強姉妹の末っ子』第36話

 ティーロとティーマス達は早速王国の外にある水と源泉を確かめに行った。
 実際にある事が確認させると、今後これをどう有効活用させるかを話し合っていた。
 ティーナはムーニーに頭と胴体が離れないように直してくれた。
 そのおかげか、前よりも倍くらいに動けるようになり、魔物ロボットにもテキパキと瓦礫を運んだりしていた。

 そういえば、一つ気になる事があった。
 城の残骸には恐らく工場にいたであろう魔

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『最強姉妹の末っ子』第35話

『最強姉妹の末っ子』第35話

 ムーニーと一緒に教会の一番下まで降りて外に出ると、ロリンの他に人形達が集まっていた。
 その中にはいつの間にか目覚めていたティーロとティーマス、あとはティーナもいた。
「このクソ野郎!!」
 ティーマスがムーニーを見るや否や、鞘から剣を抜いて斬りかかろうとしていた。
「待って! ちょっと落ち着いて!」
 私がムーニーの前に立って制すと、ティーマスは「どうして奴の味方をするんですか?」と目を丸くし

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『最強姉妹の末っ子』第34話

『最強姉妹の末っ子』第34話

 いや、あんたが助けてって言ってきたんでしょうか。
 そう突っ込もうとしたが、私が答える前にムーニーが話し続けた。
「普通見棄てるよね? だって、あなたに酷いこといっぱいしてきたじゃない。
 殺せばよかったのに。殺したいほど憎いんじゃないの?
 なんで……なんで助けたの?」
 ジッと見つめてくる彼女に私は口を開いた。
「それケホッ、ケホッ! ムーニゴホッ、ゴホッ! うへっ、ケハッ、ベッ!」
 駄目

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『最強姉妹の末っ子』第33話

『最強姉妹の末っ子』第33話

「ふぎゃぁっ?!」
 予想外の事に驚いたのだろう、ムーニーは素っ頓狂な声を上げ、ドラゴンを一歩二歩後退させた。
 一度口の中に入れて多少は温度が冷めているかもしれないが、熱い事には変わらないようで、ドラゴンのボディが段々ぎこちなくなってきた。
「な、なに……なにこれ? 操縦が……きか……な……」
 モニターに映るムーニーの顔が歪み始め、姿が見えなくなってしまった。
「ケホッ! ケホッ!」
 さすが

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『最強姉妹の末っ子』第32話

『最強姉妹の末っ子』第32話

 岩のゴツゴツとした足の裏にダイレクトで感じながら歩いていくと、城壁が近づいてきた。
 私の膝ぐらいだったので、跨いで入る事ができた。
 だけど、何度も言った通り、家や人形達がミニチュア並に小さいので踏みつぶさないよう細心の注意をはらいながら向かった。
「はぁあああああ?! まだ死んでないの?!」
 しかし、チンタラ歩いていたので、当然ムーニーにも気づかれてしまった。
 うーん、どうしよう。
 ま

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『最強姉妹の末っ子』第31話

『最強姉妹の末っ子』第31話

 なるほど、ロリンがなぜ普通のドレスに着替えさせたのか、分かった。
 確かにあの格好だったら、大勢の人形達に私のイチゴパンツを晒される事になる。
 そんなの死ぬより嫌だ。
 モニターに映っているムーニーは口をあんぐりと開けていた。
「おま……え? なんで?……そ、そんな……きょだ……はぁ?」
 明らかに突然私が現れた事に動揺していた。
 私は人形達の家を踏まないように慎重に正面を向いた。
「ムーニ

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『最強姉妹の末っ子』第30話

『最強姉妹の末っ子』第30話

「まぁ、いいや。それより、ティーマスとティーロは?」
「そこのベンチにいるよ」
「ベンチ?」
 私はロリンの背後にベンチが並んで置かれている事に気づいた。
 横一直線にティーロとティーマスが目をつむっていた。
「どうして眠っているの? あなたを助けるまでは元気だったじゃない」
「えっと、城から出してベンチら辺まで連れて来た時に力尽きちゃったんだろうね……そのままバタンと倒れて……」
「え?! 死ん

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『最強姉妹の末っ子』第29話

『最強姉妹の末っ子』第29話

「……え? どういう事ですか?」
 私の発言に驚いているのだろう、目を大きくさせて瞬きをしていた。
「えっと、あくまで仮定の話なんだけど、仮にもし人形の心……それは形であるものなのかどうかは分からないけど、感情をコントロールする部分をいじって、自分達に逆らわないように改造して……。
 ムーニーの事だから、絶対に戻らないように作るはずなのよ。
 万が一何かの拍子で戻ったら反撃されるかもしれないから。

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『最強姉妹の末っ子』第28話

『最強姉妹の末っ子』第28話

「うぐっ、むぐぐ……プハッ!」
 起き上がろうとしたが、手脚が沼にハマったかと錯覚するぐらい思うように動けなかった。
「むぐ、ふぐ、うぐぐ……」
 私は懸命にジタバタして、どうにか仰向けの体勢になる事ができた。
「ふぅ」
 安堵の息をついたのも束の間、私の視界に逆さまに写った男女がこちらを見ていた。
「うわっ!」
 私は起き上がって、水に浮かんだアリみたいにバタバタした後、ようやく雪のない所に足を

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『最強姉妹の末っ子』第27話

『最強姉妹の末っ子』第27話

「待ちなさい!」
 私は裸足のまま追いかけようとしたが、回転し過ぎて三半規管が狂ってしまったのだろう、突然視界が歪んだかと思えば、頭の中が揺れた。
「おえ……」
 一気に吐き気が押し寄せてきて、まともに立っている事もできずに、その場で倒れてしまった。
 あぁ、追いかけなきゃいけないのに、気持ち悪くて動けない。
 心臓は高鳴り、耳鳴りも聞こえてきた。
 三ツ頭対策用に作った剣と火のポーションを組み合

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『最強姉妹の末っ子』第26話

『最強姉妹の末っ子』第26話

「な、何をボゥっとしているの?! 早く何とかして!」
 ムーニーの怒声が聞こえる。
 途中、熱くなったり寒くなったり痺れそうになったが、回転しているからか、受け流されて、全く影響を受けなかった。
「おりゃおりゃあああああ!!!」
 私は遠心力を利用して軽くジャンプした。
 フワッと浮かんだかと思えば、そのまま上昇していった。
「ボボ〜〜〜!!!」
 私がそう叫ぶと、手が急に熱くなった。
 流れるよ

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