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マジパン思い出話第二十回 コミコンの衝撃と涙のZeppワンマン宣言

「東京コミコンに出演します」
 そんなニュースがリリースされたのは、イベント開催のほんの一週間ほど前という急なものでした。サイトのスケジュールをチェックすると、メインステージのトリ前が「調整中」としてぽっかり空いています。どうやらスケジュールに穴が開き、レコード会社のつながりから急遽声がかかったようです。
 コミコンなる得体が知れない――と、アイドルファンとしては思っていたのです――イベントで、チケット代も安くありません。それでもこのイベントは行ったほうがいいかもしれない、と虫が騒ぎはしたのですが、結局行きませんでした。
 しかしそのことを僕は、今でも後悔しています。

 アイドルイベントではありません。トリ前の大きなステージに集まったファンのほとんどは、マジパンを知らないどころかアイドルライブを見たことすらありません。ドがつくほどのアウェイです。
 しかし、このときのマジカル・パンチラインのパフォーマンスは(少なくとも今映像で見ることができる中では)第四章の中でも一番、と言ってまちがいないでしょう。
 完全アウェイの中でも物怖じせず、かといって一部のファンだけに向けてライブをするのでもなく、ここのいるすべての人を楽しませようという真摯な姿勢。ハイレベルなパフォーマンス。全力の笑顔。丁寧なお辞儀。
 「どうせみんな知らないんだし好き勝手やろう」と奇策に出るのではなく、「知らないアイドルのライブですみません」と卑屈になるのでもなく。堂々と、自分たちにやれる限りの最高のパフォーマンスを見せる。その姿の、なんと美しいことか。
 あの場にいるすべての人に好感を抱かせる、とても素敵なライブでした。
 終演後の無料ツーショット会では、時間をオーバーしてしまうほどの長蛇の列ができました。このときにファンになったという人も多く「コミコン新規」なる言葉も生まれたぐらいです。
 今から思い返すと、個人的にマジカル・パンチラインで思い出深いライブは、佐藤麗奈が急遽欠席した定期公演、TIFのスマイルステージメドレー、NPPなど、逆境やアウェイでのものが多く上がります。
 逆境でこそ輝く、勇気のチーム。それが、我ら誇りのマジカル・パンチラインなのです。

 コミコン出演が本当によかったなと思うのは、それをきっかけにファンが増えたことだけではありません。
 アイドルになんて興味がない人をも惹きつける魅力がある。出るところに出ればきちんと伝わる。自分たちがやってきたことはまちがいではなかった。そう手応えと確信を持てたことが、なによりの――救い、だったでしょう。メンバーにとっても、運営にとっても、ファンにとっても。
 「動員が減った」沖口さんの吐露から一年。そうしてマジカル・パンチラインは、重苦しい苦境を、自らの力強い歩みで乗り越えていったのです。

 翌2023年2月18日には、やはり新宿ReNYにて、7周年ワンマンライブが行われました。ただのワンマンライブではありません。ひとつは、コロナ禍によって制限されていた声出しが、ついに解禁されたこと。もうひとつは、マジパン史上初の――本来は2020年に行われるはずでしたがコロナで飛んでしまいました――有観客での全曲披露ライブです。そのころはまだ新体制での未発表曲も多く、リハも大変だったようです。しかしメンバーは、とても素晴らしいパフォーマンスを見せてくれました。このタイミングでの全曲披露ライブは「前体制に肩を並べた」というマジパン(というより、沖口さん)なりの宣言でもあったでしょう。
 そして、そのうえで発表されたのが、念願のZepp Shinjukuでの8周年ライブです。
 恥も外聞もなく、正直に告白します。
 「Zepp」というワードが沖口さんの口から発せられた瞬間、泣きました。
 泣きそうになった、とかではなく、リアルに涙をボロボロ流したのは何年ぶりでしょうか。ただその一言で、これまでのことが走馬灯のように脳裏を過ぎりました。初めて「Zeppでライブがしたい」と目標を口にしたのは、2018年、四人時代のことです。レコード会社から契約を切られた根無し草だったころ、その目標は、遥か遠く点ほどにしか見えないかすかな光でした。あれから六年、ここまで記してきたように、様々な紆余曲折がありました。もうダメだ、と諦めかけたことも何度もありました。
 それが、とうとう報われる。ファン歴が長ければ長いほど、その思いは重いでしょう。だから偉い、という気は毛頭ありません。新規も古参もニワカも同じ一ファンです。しかし、そういう重みを少しでも知るほうが、きっとZeppワンマンライブで味わう感動は大きくなるでしょう。思いはより高まるでしょう。より声が大きくなるほうが、メンバーも喜ぶでしょう。
 思えば、そのために僕は、今回のnoteを書いているのでしょう。

 しかし、Zepp決定に喜んだのは束の間でした。Zeppでライブをする。それだけなら、ただお金を出しさえすれば実現できることです。たとえ、席が埋まらなくとも。
 我々の本当の夢は、ぱんぱんに埋まったZeppでライブをすること、なのです。しかし、この時点でのマジカル・パンチラインの力では、ソールドアウトはおろか、見栄えが悪くない程度の集客すら簡単ではない、というのが正直なところでした。
 一年。それは、長いようで短い。きっとあっという間にやってきてしまいます。それまでに、少しでも、一人でも、ファンを増やさねばなりません。
 マジカル・パンチラインは、Zeppでのワンマンライブに向けて精力的に活動していきます。AKIBAカルチャーズ劇場での定期公演(後半はツーマンライブになります)やショッピングモール等でのフリーライブ、対バン出演などなど。
 ファンとしてもその一助になれないかと思い制作したのが、それまでウェブ上で展開していた初めての方向けページの、フィジカル版です。

 正直、読むだけであればnoteのほうが便利です。情報も容易に更新できます。しかし、実際に手に取るものがあったほうが、新規ファンへのアピールになります。「ファン制作でこんな本格的なものを作ったのか」と話題になるかもしれません。また、新規さん向けに配布していたCDが枯渇しつつあった、という事情もありました。
 とはいえ、制作しても配布しなければ意味がありません。配布には、多数のマジファンのみなさまにご協力いただきました。この場を借りて、御礼申し上げます。
 余談ですが、とてもご好評いただきましたので、Zeppワンマン後に情報を更新したものを再制作予定です(といっても、まだ残部がありますので、それも継続して配布したいです)。これをお読みのみなさまも、身近な方への配布にご協力いただけましたら幸いです。

 2023年の大きな出来事といえば、6月に行われた沖縄バスツアーでしょう。前年に行われたバスツアーが大好評だったためか、沖縄という遠隔地にも関わらず、バスが二台に分かれるほどの盛況ぶりでした。メンバーもファンも完全に「沖縄浮かれ」ではしゃいでいました。今振り返っても、とても楽しい思い出です。
 夏には新曲「めろめろーりんぐ」もリリースされます。マジパンらしい可愛さ全開のアイドルソングです。
 それを引っ提げての夏フェスで、もっとも印象的だったのは、@JAMでのステージでしょう。
 なぜか分かりませんがとんでもない熱量のステージで、しかも中には涙ぐんでいるメンバーもいます。後日、その事情が明かされました。
 なんと、長くマジパンを支えてきたBOXコーポレーションのマネージャー、Kマネさんが、8月31日付けで退職しマジパンの運営から離れてしまったのです。@JAMは、Kマネさんの前での最後のパフォーマンスでした。
 結成時からずっとマジパンに関わっていたのは、もはや沖口さんとKマネさんの二人だけでした。特にポニーキャニオンからの契約が切れた根無し草時代、本職はタレント事務所のマネージャーであるにも関わらず、慣れないアイドルグループの運営として、たった一人でマジパンを支えてくれました。あのときのKマネさんの奮闘がなければ、あの時点でマジパンの活動は終わってしまっていたにちがいありません。
 ポニーキャニオン本社で行われたマジカル・パンチライン結成のお披露目イベントの際、シマムラさんが体調を崩してしまい、急遽Kマネさんが司会を務めました。とても緊張した、と後に語っていましたが、やがてどんどん前に出るようになり、配信や動画でもすっかりおなじみになりました。ファンとも気さくに絡んでくれるよき兄貴で、ドリーミュージック移籍が決まったあとの「Melty Kiss」のリリイベでファン一人一人と「ありがとう!」と力強く握手をしていたのは忘れられません。メンバーにとっても、父のような存在でした。
 8周年記念ライブには、きっと来てくれる。そう信じています。

 Kマネさんの退職は痛手でしたが、新マネージャーの加入は、マジパンに新たな風を吹かせもしました。ファンとともにTikTokを撮る特典会を行ったり、積極的にYouTubeにライブ映像や企画動画をアップしたり。より今の時代へのフィットを目指した変化でしょう。
 秋には、すっかり恒例となったハロウィンツアーが開催されます。その東京公演で発表されたのが、グループOGである浅野杏奈、清水ひまわり、小山璃奈(リーナ)、吉田優良里の出演でした!

 すでに、ワンマン後の特別トークショーに佐藤麗奈が出演することは発表されていました。つまり、8周年記念ワンマンライブには、歴代すべてのメンバーが揃うのです!
 2019年2月24日、吉澤悠華、吉田優良里が加入した際に流れた映像で、4人+2人は、Zeppのライブハウスに向かって走っていました。あれから五年。願い続けていた夢が、とうとう叶う。マジカル・パンチラインの歴史において、特別な一日になることはまちがいありません。
 ただ、ここまで盛り上がってしまうと、一抹の不安も抱いてしまいます。夢を叶えたこの日が区切りになってしまうのではないか、なにか悲しいニュースが待っているのではないか、と。
 しかし、ご安心ください。プロデューサー兼リーダーの沖口さんは、ここがまだ通過点であると力強く宣言しています。実際、ワンマンライブ以降の予定もどんどん決まりつつあります。また、ワンマンライブからのメンバーカラー変更も発表されました。これもまた、Zepp以降マジパンがもっと大きく飛躍していくための決断です。

 そうして迎えた2月13日。Zepp Shinjukuで行われるマジカル・パンチライン8周年記念ライブ「LiVE PARK 2024 8th Anniversary LiVE~HAPPY DREAM~」のチケットが、ソールドアウトしたことが発表されました。
 これはとあるファンの方が言っていたことですが、僕もまったく同意です。ただチケットを売るだけなら、いくらでも方法はあったはず。チケットを10枚買った人には特別な特典がありますよ、とか(その代わり、席は空きますが)。しかし、そういう方法は選びませんでした。1年前に発表し、地道にファンを増やし、毎回手売りでチケットを販売し、とうとう本番の11日前に、完売にこぎつけたのです。
 どんな苦境にも、曲げずにまっすぐ立ち向かう。そのひたむきな美しさこそが、マジカル・パンチラインのなによりの美点でしょう。



 とうとう立つ、夢の舞台。満員の客席。あとはただ全力で楽しむのみ、です。


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