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宗教としてのアイドル① 推しは果たして神なのか?

よくテレビで、コンサート会場でアイドル(男女問わず)に向かってファンが声援をあげるシーンが取り上げられます。あまりそういう文化に興味がない人が「うわ、宗教みたい。きも」という感想を抱くことは致し方ないでしょう。私には日本のアイドル文化が宗教的な外観を呈しているように感じます。

しかし本当に宗教なのか?と問われれば、検討の余地は大いにあります。まず用語を確認しましょう。

「宗教」とはそもそも幕末に英語のreligionを翻訳する際に考案された訳語です。元はラテン語のreligioに由来しますが、語源を辿るとre ligare 再び/強く + 結びつける という意味があります。つまり「神(崇拝対象)と人間との関係・絆」であって、宗教という言葉の持つ、偉い人がよくわからない服装で偉そうに講釈垂れるイメージとは趣が異なるわけです。

宗教の定義は研究者の数だけあるとされています。一般的に宗教とは「超自然的な力・存在への信仰に基づく体系的な信念や行動の集合体」とされています。

ここで言う超自然的な力・存在が「神」になるわけですが、テクノロジーが発展して宇宙空間に人を送り込めるようになった現代において「超自然的な」と言われてもピンと来ないものです。 

むしろ広く「神とは、普通の人よりも崇高・超越している他者である」と捉えるべきではないでしょくか。日本語にはこれに類する表現はいくつかあります。わかりやすい例だと箱根駅伝における「山の神」などですね。

極端に言えばどんな人でも「憧れの対象(推し)」があれば神格化が可能になります。

アイドルに当てはめてみるとイメージしやすいのではないでしょうか。ついこの前まで一般女性だった人がアイドルとしてデビューした瞬間、社会とは隔絶された(≒聖なる)存在に変貌することになるのです。古代エジプトのファラオからスターリンに至るまで、権力者たちは自らを神格化することで民衆に権威を発揮してきたわけです。空が飛べなくても奇跡が起こせなくても、神にはなれるということです。

少し長くなりましたが、要約すれば

アイドルは「神格化」を通じて神になる

ということです。ここで言う神格化には「アイドルとしてのデビュー」と「ファンに推されること」の二つの要素が成立要件として求められます。次で、この神格化について詳しく見ていきたいと思います。

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