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【LOTR】セオデン王、Rest in Peace

5日に映画「ロード・オブ・ザ・リング(二つの塔・王の帰還)」でローハン国のセオデン王を演じた英国俳優のバーナード・ヒル氏が79歳で生涯を閉じられたというニュースが飛び込んできました。すでにサルマン役のクリストファー・リー氏やビルボ役のイアン・ホルム氏らが他界されておりますが、やっぱりあの不朽の名作のキャストたちが旅立っていくのは本当に寂しい限りです。

私はこのシリーズが大好きすぎる人間なのですが、中でも二作目「二つの塔」がマイベスト。そして北欧文化の影響を多大に受けた騎馬民族の国ローハンの描写がとても素晴らしく、武士道にも通じるローハンの人たちに感銘を受けたことを覚えています。今回はとにかく一人で「指輪愛」を語りたいと思います(笑)。


名「3部作」は2作目が素晴らしい!

勝手な持論なのですが、シリーズ物、とくに「3部作」モノって、2作目の出来次第という気がしませんか?まあ、実は「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズに関してはもとから3部構成で作られていますので、1作目がヒットしたから続編を・・・という作品群とは違うのですが。とはいえ、2作目というのは、非常に「微妙な」塩梅が求められるのも事実。これはコメンタリーでピーター・ジャクソン監督も語っていましたが、「2作目」単体としてもクライマックスが必要なのだが、「3部作」全体で考えると「途中」なわけで、そのあたりの展開に苦労したとのこと。私も原作を想定しながら見ていたので、シェロブの巣のシーンまで行くのかな?と思ったら、その前で終了してしまい驚いたことを覚えています。

「二つの塔」が好きな理由

1作目が素晴らしすぎたので、当然、1年間ワクワクが止まらなかったわけですが、そんな期待をゆうに超える最高の出来に興奮しまくったことを覚えています。1作目のラストで旅の仲間が離散し、フロドとサムはモルドールを目指し孤独の旅を開始し、アラゴルンとレゴラス、ギムリたちはローハン国の騎士たちとともにヘルム峡谷の戦いに臨むことに。そしてメリーとピピンは「木の髭」らエントたちの住むファンゴルンの森をさまよう展開。このあたりの3パーティーを交互に追っていくストーリーの流れが素晴らしかったです。常に気になるところで場面が変わり(若干、エントのシーンは間延びした感が否めませんが・・・←ピーター曰く、それも想定内だとか)、気づくとクライマックスのヘルム峡谷の戦いに。いやー、カッコ良かった、誰もが。

ローハン国の王家たち

ローハン国はサルマンの毒気にかかり、存亡の危機に。王は衰弱し、実の息子も瀕死状態。王の甥(カール・アーバン)と姪(ミランダ・オットー)が奮闘するも、形勢は厳しく・・・というところに、魔法使いガンダルフ一行が現れ、国王の病を治し、国全体として悪の集団と戦う決意をするというのがメインストーリー。病から復活し、民のために立ち上がる国王(しかし、非常に形勢が厳しいこともまた分かっている)をバーナード・ヒル氏が見事に演じきっています。ちなみにカール・アーバン氏、ミランダ・オットー氏ともにニュージーランド、オーストラリア出身でこの作品によってより一層ブレイクしましたね。3人のアンサンブルもまた素晴らしかったです。

バーナード・ヒルさんについて

もちろんセオデン王以外にも、様々な作品に出演しているバーナード・ヒルさん。有名なところでは「タイタニック」の船長役でしょう。たしか、ここで彼が面白い発言をかつてしていたことを覚えています。それは「タイタニック」のジェームズ・キャメロン監督のスタイルは暴君による圧政、一方で「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督のスタイルはとても親しみやすく楽しかったというような発言でした。特典映像のメイキングシーンでも、打ち上げシーンで大型バスを運転してスタジオ内に入っていくバーナード・ヒルさんの姿が残っており、とても楽しそうに過ごしていたのが印象的でした。

なぜ「ロード・オブ・ザ・リング」が特別なのか?

当初から3部作を予定して製作された点でしょう(実は例のウェインスタイン兄弟によって2部作に短縮されそうになったところを、現在の製作会社が「原作も3部作なんだから、3部作で作ろう」と決断したことは有名な話)。そして約2年弱に及ぶニュージーランドロケ。その後、毎年行われた追加撮影によって主要キャストたちは再結集することに。このあたりはメイキング映像にたくさん収録されていますが、とにかくキャストメンバーが仲良しすぎる。そりゃ、2年近く一緒に撮影していれば、仲も良くなりますよね。さらには毎年再結集して「リユニオン(同窓会)」するわけですから。

このあたり、監督のピーター・ジャクソン氏の人柄も大きいでしょうし、なによりニュージーランドの風土、人柄、環境もまた大きく作用したのではないでしょうか。これまでハリウッド大作とは無縁の地だったニュージーランドが、この作品を皮切りに大作映画のロケ地となり、ピーターの製作工房WETA社も世界有数のプロダクションへと成長。このあたりのサクセスストーリーをリアルタイムに見ていたので、どんどん有名になっていく様子は圧巻でしたね。

キャストもまた「通」好みだった!

今でこそ、誰もが大スターなわけですが、公開当時はそこまでではなかったように記憶しています。主演のイライジャ・ウッドは子役時代から演技派として知られていましたが、これだけの大作のメインキャストを張るほどではなかったように思います(ファンの方、すみません!でも私も大ファンなので許して下さい)。さらに脇を固めるヴィゴ・モーテンセン、イラン・マッケラン、ヒューゴ・ウィービングらは、いかにも「通」好み。

女性陣のリブ・タイラー、ケイト・ブランシェットは人気・実力共にありますが、それでも当時は彼女たちの名前だけではこれだけの大作としては、もう一歩だったかもしれません。ということで、いずれも実力よりも名前といった役者さんではなく、力のある実力派、さらにはピーターらしくニュージーランドやオーストラリアの俳優が多数登場している点は特筆すべき点でしょう。さらには前述のイアン・マッケラン、イアン・ホルム、クリストファー・リーといったレジェンド級の「名優」が出演している点も見逃せません。

ということで、いかにもな「ハリウッド大スター」様が登場していないことも、2年間に及ぶ長いロケの間に、友情を深める一因になったのではないかと思います。ピーター曰く「もっとも大金の掛かったインディペンデント映画」とのこと。つまり、ハリウッド大作レベルからすると、超のつく低予算で作られた3部作。お金がないなら知恵で勝負、そんな苦悩する監督以下製作陣を横目にキャスト、スタッフ陣も一つになって「最高の映画作り」をした結果がこの奇跡のような作品なのではないかと思います。

改めて、バーナード・ヒル=セオデン王について

ということで、語り始めると、いくらでも出てくる「指輪愛」(笑)。原作も素晴らしいのですが、あれだけの膨大な内容を換骨奪胎し、見事に映像化した映画版もまた同じくらい(いや、それ以上?)に大好きな作品です。原作に並ぶ映像化作品ってなかなかないですよね?

そして中でもセオデン王は私も好きなキャラクターの一人です。当初の衰弱しきったところから、ガンダルフによって解き放たれ、ローハン国を改めて統治するために立ち上がる。しかし、圧倒的劣勢という事実に王として弱みは見せられないが、実は結果を悟っている・・・というような心理状況をバーナード・ヒルさんは見事に演じきっていました。「二つの塔」のラスト。まさに四面楚歌状態の中、いっそのこと騎馬民族の誇りのまま戦おう!と城から飛び立つシーン。これは本当にカッコいい。そして「王の帰還」においても、最終決戦場であるペレンノール野に登場し、ローハンの兵たちと剣を
重ねて鼓舞するシーン(←これはバーナード氏のアイデアだとか)。そこからのシーンは・・・いや、これはぜひ本編をご覧下さい(笑)。涙なしには観られません!

イライジャはXで「さようなら、ぼくらの友人、ぼくらの王、バーナード・ヒル。決してあなたのことを忘れません」と別れのメッセージを送り、ヴィゴ・モーテンセン(アラゴルン役)が撮影したというバーナードの写真を添えた。また、トールキンの原作小説から「彼は寛大な心を持ち、偉大な王であり、誓いを守り続けた。彼は影の中から立ち上がり、最後の快晴の朝を迎えたのだ」という文章を引用した。

So long to our friend, our king, Bernard Hill. We will never forget you.

“For he was a gentle heart and a great king and kept his oaths; and he rose out of the shadows to a last fair morning.”

シネマカフェより抜粋/イライジャ・ウッド氏のXより引用

作品内ではボロミア(ショーン・ビーン)がアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)に向けて、「我らの王」と呼んで絶命する名シーンがありますが、もちろんアラゴルンも「王」なのですが、ここでイライジャ・ウッドさんがポストしているように、バーナードさんもまた「ぼくらの王」という表現、まさに同感です。こうして旅立っていかれたことは寂しい限りではありますが、素晴らしい作品を遺してくれていますので、また改めて久しぶりに観たくなってきました。セオデン王、安らかにお休み下さい!素晴らしい作品をありがとうございました!

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