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疎遠だった“きょうだい”からのSOS

少し前のことになりますが、「離れて暮らすきょうだいからSOSがあった。どうしたらよいか…」という相談が続きました。

相談者には、精神疾患を抱えるきょうだい(以下、本人)がいますが、適切な医療につながっていません。相談者は親の勧めもあって、実家から離れて暮らし、本人とも長く没交渉だと言います。

ところがその本人が、前触れもなく急に、相談者を訪ねてきたというのです。

このようなケースでは、本人が金銭トラブルや第三者とのトラブルなど、のっぴきならない問題を抱えていることがほとんどです。

そしてその背景には、親の高齢化や死亡があります。同居する親の介護ができなくなった、経済的に立ちゆかなくなった、自宅の管理ができなくなり(賃貸の場合、家賃が払えなくなり)、近隣住民や大家とトラブルになっている……などの理由から、相談者のもとに駆け込んでくるのです。

相談者からの問い合わせの内容としてはおもに二つに分かれ、「今さら面倒なんてみられないので、精神科に入院(あるいは施設入所)させられないか」もしくは、「自分が引き取るしかないが、今後、どうしたらよいか」といったところです。

とはいえ、こういったケースでは、相談者が、本人に関する経緯を把握してないことがほとんどです。精神科受診歴や診断名は親からかろうじて聞いていても、今も通院や服薬をしているのか、どこの病院にかかっているのか、障害者手帳や障害年金など公的支援は受けているのか、それらの詳細は把握できていません。

相談者が今後も関わりをもつ気持ちがあるのであれば、本人から話を聞くことも重要ですが、現状を把握するために、本人のかかりつけの医療機関や支援者に連絡を取り、事実を確認することです。

相談者が都道府県をまたいで本人を引き取る場合、すでに障害福祉サービスを受けているならば、住民票異動とともに申請をやり直す形になります。制度そのものは全国共通ですが、自治体ごとにサービスの質が異なり、ほとんどのサービスは主治医の診断書や意見書を必要とします。よって、本人を転居させて引き取る際には、転居先できちんと対応してくれる医療機関を探せるかどうかが最重要課題になります

そもそも家族関係が崩壊しており、相談者が本人に対して陰性感情しか抱けないようであれば、引き取ることは成立しないでしょう。この場合、どのようにして元の環境に戻すかを具体的に考えることになります。

弊社への相談事例では、相談者である“きょうだい”が、本人のことをよく知らないがゆえに、安易に「何とかできる」と考えていたり、逆に、必要以上に不安になっていたりすることもあります。「親に聞いても『大丈夫』としか言われないから……」と、介入を躊躇している方も少なくありません。

そのような、“きょうだい”の立場の方に常々お伝えしているのは、「本人に関することを、親からできるだけ聞き取っておいてください」ということです。病歴やかかっている病院・主治医の名前、服薬の有無やその詳細、公的支援は受けているのか否か。また、日々の生活の様子や、本人の経済状況、金銭感覚など「お金」の話も、現実に“きょうだい”が動くとなった場合には、非常に重要になってきます。

最近の傾向をみると、本人の今後について親とも腹を割った話し合いができず、決断を先延ばしにしているうちに、「親が病気(認知症含む)になってしまった!」という相談も増えています。さらには、親が本人と同居しているばかりに“きょうだい”が実家に入れず、親に適切な治療や介護を受けさせることもできないまま亡くなってしまった……という相談もありました。

親がまだ元気で本人の面倒をみる余裕があり、「そこまでの危機的状況ではない」と考えている方も、「8050問題」「7040問題」を視野に、準備だけでも怠らないようにしていただきたいです。

「親に何かあったときには、自分が本人の面倒をみる」と考えているならばなおのこと、親への聞き取りだけでなく、定期的に実家の様子を見に行くなどしておきましょう。本人に支援者(公的機関の第三者など)がいるのであれば、挨拶だけでもしておければ、万が一の際の安心材料になります

「親に聞いても何も話してくれない」「親から相談を受けることはあるが、愚痴やぼやきが多くて、事実が把握できない」という方のために、弊社では、“きょうだい”に代わって親御さんから聞き取りなどを行う「親子間の橋渡し安心サービス」も承っております。

親御さんの理解と了承が必要になりますが、興味のある方は、弊社ホームページ(コンサルティングサービス)をお読みください。


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