銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫っ…

銀騎士カート

左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫ってるとはいえ、いっそ迫っているからこそ言葉に魂を込めて、文章を綴ってゆく所存です。 雑文、エッセーから小説まで……綴ることしか能のない身ですが……

マガジン

  • 小説 小説らしきもの

    基本 短いです。 長いのは一本だけ……

  • 連載した長めの小説です。お暇な時に、どーぞ(^o^)

    大人むきの純文学です……でもキャッチコピーは「面白系純文学」と言っておきます。

最近の記事

  • 固定された記事

星月夜の夢

                             経済学の祖アダム・スミスがこんなことを言ってる。 世界にどんな悲劇が勃発しようとも、人間というものは自らの爪先の痛みに関心を向けたがる…… 人間のエゴを……とりもなおさず、野放図の欲望を起爆剤とした資本主義のシクミを見事に言い当てている。 試みに、ついそこの新聞を斜めにでもいいから読んでみよう。 コロナは未だ終点が見えず、政局は猿芝居に終始し、海彼の紛争は後をたたず、地球はカタストロフィーに向け

    • 【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 15章・16章

                      15  オルぺウスごっこの終着点がL'amore……「愛」とは、ドジの道行きも案外洒落ているようだ。ここは一つ、奴の手口を拝借するのも一興だろう。そう。オルぺウスの神話でまずは女の子をロマンチックな気分に引きずり込む。相手のおんなはもとよりエウリュディケーの見立てだ。俺が先にたち、繁華街を横道にそれる。ここは自信を持って、絶対に振り向いてはいけないのだ。やがて、人通りの絶えた小路の先、月明かりに照るはリストランテならぬ、地上の楽園ラブホテルの

      • 【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 13章・14章

                       13  奴のおのろけに居眠りが出たせいか、もう少しで乗り越すところだ。慌てて閉まりかけた扉を擦り抜け、階段を駆け降り、改札を渡っていつもの地下街に踏み込んだ。  とたん、俺は思わず立ち止まってしまった。そう。毎日通い慣れ、日常がラベルのように貼りついた地下街が、なぜか存在感の削ぎ取られた夢の世界のように感じられたからだ。普段とは違う時間帯のせいだろうか。相変わらずのろのろとした老いぼれが多く、齷齪とした生活のリズム感が希薄なせいだろうか。生れつ

        • 【恋愛小説】紫水晶(アメシスト) 11章・12章

                   11  奴自身、てっきりりん子にリードされて鼻の下を伸ばしているように思えるが、奴もさすがそれだけで満足はしていなかった。仕事に於て、反デジタルの旗手よろしく、鋭い奇抜な企画をびしびしと出し始めたのだ。  その一つの主張として、奴は手作りの野球盤というのを持ち込んできた。内向的なこども時代におびただしいプラモデルを作ったという経験が生きていたものか、古典的なからくりを駆使した精密機械として組み立てられ、おまけ

        • 固定された記事

        星月夜の夢

        マガジン

        • 小説 小説らしきもの
          13本
        • 連載した長めの小説です。お暇な時に、どーぞ(^o^)
          88本

        記事

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 9章・10章

                          9  どうやら奴の話から察すると、りん子の方も奴に惚れているというか、かなりはっきりと結婚を意識しているように思えた。いささか早急の気がしないでもないが、さだめて奴が無意識の裡に送り続けた熱い視線が伏線になっていたのだろう。  俺なら、おんなからそんな予約された商品のように見られて付き合うなんぞ、ムシズが走る。これでは推理小説を終章から読むに似て、男とおんなのゲームにおける駆け引きの妙味を楽しむことは出来かねる。  けだし、りん子的おんなと

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 9章・10章

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 7章・8章

                        7  奴は鈍感で、気がついたのは後になってのことだろうが、要するにりん子の方も奴に気があったということだろう。そんなコトとは露知らず、奴は半年間で確実に何キロか体重を減らしたのだから始末におえない。もちろん、かかる苦行あればこそ、りん子と知り合えた当日が人生最高の一頁であったことに間違いはない。  おっと、いつのまにか乗換駅だ。急ぎ足にエスカレーターを駆け上がり、通路を渡って再びエスカレーターを駆け上がれば、折よく電車が入ってくる。  やはり、

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 7章・8章

          緊急報告

          パソコンが不調で、皆さんの記事が自由に読めず、「スキ」も出来ない可能性があります。 投稿は出来るのですが……  ご理解願います。出来る範囲では、記事を拝見させて頂きます。

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 5章・6章

                        5  俺は奴からこの話を聞かされた時、正直言って腹を抱えて笑い転げてしまった。どこぞ深窓のご令嬢でもあるまいに、気楽に「ハーイ」と声を掛ければ済むものを。  どだいおんなという生き物は、いつだって男に声を掛けられるのを待っているものだ。笑顔で応えてくれたらラッキー……そっぽを向かれても、男たるもの、いくらでも捨て台詞のバリエーションは用意しているはずだ。  しかし、考えてみれば、博物館の隅から掘り出してきたような奴のこのシャイな純情さ、さだめてあ

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 5章・6章

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 3章・4章

                        3  なに、要するに奴はインディアンの戦士に己れを準えようとしたらしい。愛の戦士。いかにも奴の考えそうな小児的発想だが、ま、俺に言わせれば奴は戦士どころか、情けなや「恋の奴」というわけだ。事実、奴が信じるほどに得難い美女とは思えない。胸も低いし、足にしても脚線美とはお世辞にも言い兼ねる。己れの美意識よりも、見栄のために周囲の目を意識するのが現代人の流行とあってみれば、奴がやきもきするほどモテるおんなとも思えないのだが……  電車が止まる。いつも

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 3章・4章

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 1話、2話

              紫水晶(アメシスト) あらすじ  玩具メーカーに勤める至(いたる)青年は、何事にも自信の持てぬ人間であったが、女子事務員りん子に思いを寄せることで、積極的に生きることに目覚める。デジタル全盛である時代に逆らい、アナログ的思考を以て社内で頭角を現す。  一方、デジタルの急先鋒でもある専務の大神は、幼少期の忘れ得ぬ少女の面影を、古風のふぜいを宿すりん子に投影、無理心中を計る。至青年は、鏡の中に別人格を作り上げて平穏を保とうとするが、すでに彼の歩みは死の世界へと向かってい

          【恋愛小説】 紫水晶(アメシスト) 1話、2話

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 30章(最終章)

                  30 旅立ち(最終章) 「ドウシタノ。ネエ、何ガ起コッタノ」  床に放り出された携帯電話からの美也子の声で、冬吉は我に返った。さっそく拾い上げて、 「なんでもない。これから旅に行くんだ」 「旅?」  足下に目を落とせば、シャーレは砕け散っていたものの、『ブルー・カード』が二枚、主を待つけしきで神妙に重なっている。冬吉はつい拾うと、 「ちょうど、切符も二枚あるようだ」 「ネエ、何ヨ、旅ッテ」 「新婚旅行に決まってるじゃねえか」 「エッ、ワタシ達、結婚シテイタ

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 30章(最終章)

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 29章

                   29 ゴースト・ダンス  満月のもと、美也子と初めて結ばれたと思った瞬間、右手にひやりとした感触……冬吉は鉄製のベッドのパイプを掴み、うつぶせに枕を噛んで目を覚ました。  慌てて跳ね起きると激しい頭痛に思わず立ちくらんだが、からだに異常はなさそうであった。またぞろ腑分けではたまらない。おそらく、麻酔銃を使われたのだろう。ひとまずはいのち拾い。ただし、美也子はいない。六畳ほどの、床も壁もコンクリートの部屋。窓もない。薄暗い螢光燈が天井に埋め込まれてあるだけ

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 29章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 28章

                  28 桃源郷 「まぶしいくらいね」  月。満月であった。花園は、さながらクリスマスツリー。花弁の一つ一つに、星屑がとまって翅を休めているながめである。百年ぶりにおとずれた、二人きりの夜。美也子は月影の薄化粧を帯び、桂の芳香に浄められた身の、こころはかのクリスマスイヴの夜の公園に遡る。目を閉じぶきっちょに唇をはじくのに冬吉が唇を押し当てれば、少女の恥じらいは震えになって伝わり、合わせた胸に鼓動は重なった。二人の唇を橋渡す糸が光って、美也子の吐息は少し大人にな

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 28章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 27章

                   27 煙の山  廃墟を出れば、知らぬ間に病院全体さんざめき、人波は浮かれ、賑やかなお祭りムード一色であった。提灯でごてついたプロムナードの角々では、ゴム製の健康そうなこどもの仮面が無料で配付されている。どの仮面も表情明るく、にこやかに笑っている。誰にも強制というわけではないが、老人たちに対しては、寄ってたかって仮面をかぶせていた。「不老不死」を謳う『金丹祭』に、老人の皺くちゃの面は、いっそ不吉というあんばいであった。冬吉と美也子もそれぞれ男の子と女の子の

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 27章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 26章

                   26  初潮  ささやきが戻ってきたのは、まだ明けぐれの時刻であった。  手にあまる荷物をぶちまければ、食料はインスタントながら、冬吉のためには上着、シャツ、ジーンズ、逃亡者にふさわしいスニーカーまで行き届いた。一方美也子のための服はといえば、女同士の気配りか、萌黄色のダブルのツーピースに同色の太いベルと、おまけにちょいとしたアクセサリー、スリップからハイヒールまで、はたまた変装用のサングラスというちぐはぐなあしらいであった。服などは、死んだ両親のものと

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 26章

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 25章

                 25 おたずね者  二人揃ってのおたずね者である。プロジェクトの思惑がどうであろうと、もはやいかなる猶予もならない。当たって砕けろ。冬吉は書見燈を頼りに部屋じゅう歩き回って、武器になるものを探した。夜が明け、看護士どもが食事を運んできた時、ぶちのめしてでも脱走する心積もりを固めていた。カードはやつらのを使えばいい。あとのことは、考えの及ぶところではなかった。しかし、武器に使えそうなものはこの病室にはない。ベッドからパイプを抜き取ろうにも、工具一つない素手には

          【SF連載小説】 GHOST DANCE 25章