フォローしませんか?
シェア
※中勘助著『犬』という作品です。 ※旧仮名遣いは新仮名遣いに、旧漢字は現在使われている漢…
※中勘助著『犬』という作品です。 ※旧仮名遣いは新仮名遣いに、旧漢字は現在使われている漢字に修正し、読みの難しい漢字にはルビを振ってあります。 前回のお話 最初から読む 7 翌日彼女は一椀の供養の食物をもって邪教徒の天幕よりも怖い聖者の草庵へいった。聖者は己に苦行をおえて木の幹に寄りかかっていた。そして彼女を立ち迎えて草庵のうちへ導き入れた。彼は彼女の捧げた食物を木皿にうけて藁床のうえに置き、水甕のふちを両手でもって重たそうに神壇の前へ運んだ。それには七分めほど水が
※中勘助著『犬』という作品です。 ※旧仮名遣いは新仮名遣いに、旧漢字は現在使われている漢字に修正し、読みの難しい漢字にはルビを振ってあります。 前回のお話 最初から読む 14 外には鳥の声がきこえた。 「わしはちょっとそこまで行ってくる。そなたは身体が大事ぢゃ。ま少しそうしとるがええ」 実際彼女は大儀で起きあがる気にもなれなかった。僧犬は鼻の先で草庵の 藁を押し分けて出ていった。彼女はひとりになってしみじみとあたりを見ま わした。自分が畜生になったばかりでほかのもの