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嘘ではないが・・・

 昨日(2024年5月6日)の立教大学・中原淳教授のブログに、「中途採用者の採用」にまつわる企業のマネジャーの話が紹介されていた。その一部を抜粋して載せさせていただく。

 ところで、その際に、ある方が、

「転職のときの職務経歴書には、たいてい、”ほにゃららのプロジェクトに従事”って、列挙されているじゃないですか? 中途採用の面談とかしてると、あの従事(じゅうじ)っていう言葉が、怪しいこともあるんですよね」

 とおっしゃいました。

 「ほほー」と思い、よくよく詳しく聞いてみると、これが面白い(笑)。

 履歴書や職務経歴書には、よく

1.新卒でX社入社、新規事業開発に「従事」

2.Y社ヒット商品「XXXXX」の開発に「従事」

3.Z社で全社横断プロジェクトに「従事」


 と数行にわたり、そのひとの職務経歴が列挙されているといいます。
 しかし、この「従事」という言葉の「解像度がバカ低い」。実際には、聞いて見ないと、そのプロジェクトや商品開発のなかで、本人が、どんな仕事に従事して、どんな貢献をしていたんだかは、全然、わからないとのことです。

太字についても原文のまま

 ぜひ、ブログ本文をお読みいただきたい(中原教授のネーミングのセンスには脱帽である)。


 ・・・これに似たことは、学校現場でもある。

 私がまだ20代だったころ、勤務先の小学校に4月の人事異動で2人の男性教員が着任した。年齢は2人とも40代の前半だった。

 そのうちの一人であるA教諭の前任校は、市内でも有名な研究推進校だった。前年度には全国規模の大々的な公開授業を行っており、A教諭も授業者の一人だった。そのためか、管理職からの期待を一身に受けて、着任早々に校内の研究主任を任された。

 だが、最初の校内研究会でA教諭が提案する内容は、さっぱり頭に入ってこなかった。難しい用語が羅列される一方で、具体的な授業のイメージが何も伝わってこないのだ。

 6月に全教員の先陣を切って行われたA教諭の研究授業も、内容は惨憺たるものだった。参観をしていて、授業の内容以前に、何人かの子どもたちがA教諭に対してそっぽを向いている様子が気になった。

 夏休みが近づくころになると、A教諭に対する子どもや保護者の不満が、担当学年が異なる私の耳にも届くようになっていた。

(前任校でのA教諭は、研究推進校のシステムに乗っかって仕事をしていただけで、そのシステムをつくったり、中心になって運用したりする側の人ではなかったのだ)
 ということに気づくまでに、それほど時間はかからなかった。

 ・・・その後、A教諭は3年ほどで他校へ異動した。異動後の消息については知らない。


 もう一人のB教諭は、研究会等で目立った実績のある人ではないと聞いていたし、どちらかといえば控えめなタイプだった。

 だが、その誠実な人柄と仕事ぶりで、少しずつ周囲からの信頼を集めていった。やがて、校内で教務主任を数年間務め、その後は他校の副校長、校長へと昇任した。

 知人から伝え聞いたところによると、校長になってからもその誠実な人柄や仕事ぶりは変わることなく、教職員、子どもたち、保護者や地域の方々から慕われる存在だったという。

 ・・・「研究推進校での授業公開」「目立った実績はない」という両教諭の経歴に嘘はなかった。しかし、だからと言ってその実像を正確に伝えていたというわけでもなかったのだ。


 かつて、米国プロ・バスケットボールのNBAにマイケル・ジョーダンというスーパースターがいた。彼に関してはこんなエピソードがある。

 ある試合が終わった後、マイケルの同僚である某選手がテレビのインタビューにこう答えていた。

「今日は俺とマイケルの二人で50点取ったぜ!」

 その内訳はマイケルが48点、某選手が2点だった。

 ま、嘘はついていないのだが。

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