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おしゃべりおじいちゃん

今朝の通勤時、バスで隣になったおじいちゃんがとても楽しい人だった。

おじいちゃんは、座れそうな席を探してキョロキョロしていた私に、手を振って「隣いいですよ」と声をかけてくれた(全然知り合いとかではない)。

「随分フレンドリーな人だなあ」と思いつつ、他に空いている座席もなかったので、「失礼します」と横に座ると、嬉しそうに「今日はいい天気ですね」と話しかけてくれた。

私は知らない人との世間話が嫌いではない質なので、笑顔で「そうですね」と返すと、「こいつはイケる」と思われたのか、堰を切ったようにおじいちゃんの怒涛のマシンガントークが始まった。

「今日はこれから老人会でウォーキングに行くんだよ」と言って、老人会の構成メンバーや活動内容について詳細に説明。
スマホでグーグルカレンダーを開いて「楽しみな予定は緑色で登録してるの。全部老人会の予定」と嬉しそうに見せてくれたりもした。

でも、私が「仲のいいお友達が沢山いていいですね」と素直に思ったことを口にした途端、急にしんみりして、「いや…仲がいいと言うか、他に居場所がない人たちが集まってるんだけなんだけどね…」と。

「やべっ、地雷を踏んでしまったか!」と内心焦る私を他所に、おじいちゃんは話し続ける。

「会社員でいつも家に居ない生活だったから、急に家に居るようになっても家族に邪魔にされる」
「無理やりにでも居場所を作らないと。だって会社辞めたら、誰も僕の名前を呼んでくれないんですよ」

辛い話をさせてしまって申し訳ないなと思ったが、ひとしきり話すとおじいちゃんはまた元気を取り戻して、全く別の話題(年金は想像以上に少ないから厚生年金は夫婦で加入しておきなさいとか、歯と目だけは大事にしなさいとか)に移った。

結局、バスに乗っていた25分弱は終始おじいちゃんのオンステージ。本当に楽しい時間だった。


バスを降りて、ふと思い返す。
「会社辞めたら誰も僕の名前を呼んでくれない」かぁ…。
老後ってそういうものなんだろうか。ちょっと怖い。

私はおじいちゃんの名前を呼んであげられないし(知らないから)、お話しに対して上手いリアクションを返すこともできないけれど、おじいちゃんの寂しい気持ちをほんの数十分でも和らげられてたらいいなと思う。

来週の月曜日。出勤はめちゃくちゃ憂鬱だけど、またおじいちゃんに会えるかもしれないと思ったら少しだけ楽しみだ。

今度老人会で植物園に行くって言ってたから、ちょっと植物の勉強でもしておこうかな。


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