トラネキサム酸笑顔【毎週ショートショートnote】

「じゃあ、あたしから。テストステロン！あっ〝ん〟がついちゃった……」そして笑顔。 「負けたからもう一度いくね……では、ピクリン酸。あっ、またもや〝ん〟」 彼女のニコニコが止まらない。やばい、何か企んでないか？ 「どうしよう……あたしってセンスないな……気を取り直してシクロデキストリン！あっやっぱり」 いやいやセンスじゃなく、そもそも化学物質しばりで〝しりとり〟やろうって言い出したあんたやない？ 「今度こそっ……ジブロモエタン！やっぱりだめか～。あと１回負けたら何でも言

春ギター【毎週ショートショートnote】

「残念だ！あれほどキツく誓ったのに……」 僕は昨年の冬のオークションを思い出していた。 〝美品〟で相場より高く落札されたエレキギターを梱包しながらしみじみと思ったのだ。思えば出品も梱包もずいぶん上手くなったもんだと…… このときは半年以上はもったのだが。 入手から手放すまでの期間が長くなってきてはいる。だが技術を習得できずに諦める無念さは毎回変わらない。いったい何回同じ事を繰り返せば気が済むのだ！ 年度明け。心機一転の４月。これまでの人生の何回目かの春……僕は今年度

花冷え全員集合【毎週ショートショートnote】

「おい……これは何だ？」 「かまくらですが、何か。それより主任遅かったですね」 「ああ、何十年ぶりかの４月のドカ雪だ。電車が軒並み遅れているんだ」 「無理もないですよね。ささ、おでんと鍋で暖まって下さい」 「かまくらで花見もオツなもんだな……それよりお前場所取り大変だっただろう？」 「ええ。昨夜からだったんですが冷え込みが厳しくて……そしたら、どこからともなくシェルパが現われて〝眠ったら死ぬぞ！〟と夜通し頬を叩かれて結局オールですわ」 「そうか命拾いしたな！……あ

オバケレインコート【毎週ショートショートnote】

「よ、よ、いの、よい！」「あいこだ～！」 誰もが好きな野球拳ではあいこでも場がどっと沸く。 「あ、それっ、よ、よ、いの、よい！」「負けた～！」 出っ歯の亀太郎は負けたほうがうれしそうだ。 「やだなあ～、これ一枚だもんな～…………ほれほれ」「きゃー！やめてー！」 出っ歯の亀太郎が高級そうなレインコートを一枚脱ぐと全裸だった。芸者衆も慣れたもので亀さんに付き合って嫌そうな振りをしている。お座敷代を奮発してくれる亀さんとのお約束だ。 のぞきが趣味の亀さんだったが最近は趣向が変

深煎り入学式【毎週ショートショートnote】

知る人ぞ知るあるバリスタ養成スクール。ここは世界バリスタグランプリで数えきれないぐらいの入賞者を輩出している名門だ。 だが技術の向上と指導がすべてのため講師陣には最大限の厚遇をする一方で事務方など恐ろしく手薄だった。総務を一人でこなしていると言っても良い。そのため激務に耐えられず人の入れ替わりも絶え間ない。 あるラテン気質の総務担当者は会場を二つ抑えるのが面倒くさいので入学式と卒業式を一緒にしてしまった。これには講師も生徒も混乱してしまいそのカオスっぷりはＳＮＳを賑わせた

VOIGTLANDER COLOR-SCOPAR 35mm F2.5 MC C type のお仕事

このレンズは格好いいです。 ちょっと佇まいを…… このクラシックな佇まい。そしてこちらはライカＬマウントで最近のAPS-C、フルサイズに対応なんですね。(スクリューマウントもあります) 実際この掲載の作例はsonyのnex5によるものです。 そしてフォーカスレバーが見えるとおりマニュアルフォーカスです。(タイプによってはフォーカスレバーではなくピントリングの仕様になります) という訳でこのレンズには操作する楽しみもあります。 そんなカラスコのお仕事はこちら…… い

命乞いする蜘蛛【毎週ショートショートnote】

「いーとーまきまき、いーとーまきまき…なんかあんまりでてこない」 「ううっ…園児はあと何人？」 「いーとーまきまき、いーとーまきまき…なんかよわってきたじょ」 「これでは身が持たん…子供は加減を知らん…」 クモ男のピーターの本日のミッションは幼稚園でのボランティアだった。 いつものようにニューヨークで犯罪者と戦うより日本の永田町で子どもと遊ぶ方が遥かにラクだと思ったのが間違いだった。 まだデパートのイベントの方が良かった。営業であれば実入りもあるし、こうして身を削

先ほど寝落ちしてしまい宴会の夢を見た。ビールを２本頼んだのだが出てくる前に目覚めてしまった。このオーダーはどうなるのだろう？ちなみに眠気はとんでしまった。気になる…

桜回線【毎週ショートショートnote】

「なんだ？この変な日本語は！」 友人に見せて貰った画像にはブロンド美人が映っている。背景は「クレムリン」や「エルミタージュ美術館」か。それにしてもどの画像にしても何でわざとらしくポーズを決めているんだ？そこらの素人には見えんぞ…… 「えっ？これネタじゃないのか？ガチで言ってる？」 信じられないことに友人は真剣にこのメッセージを受け止めて良いのかを相談してきたのだ…… 聞くところによるとダリヤ以外にも、アーニャ、雪蘭、カルメンなどいろんな女性から似たようなメッセージが届

三日月ファストパス【毎週ショートショートnote】

「あっ！空振りと思いきや…みごとなスルーパスっ！」 ゴール前にきれいな縦パスが通った… フォワードが飛び込む… 鋭く軌道が変わったが、キーパーは素早く反応した。 フィールドの中盤までボールが戻され一気に攻守が逆転した。 ところがアウェイのボランチがロングパスを出そうとしたところレフリーの顔面を直撃してしまった。 すかさずこぼれ球を拾ったホームのミッドフィルダーはドリブルでつなぎながらもアウェイのゴール前に駆け込んだ。 「ああっまただ……これは……超スローパス……

OLYMPUS ZUIKO DIGITAL ED 50mm F2.0 Macro のお仕事

かつては私も〝神様〟を所有してました。 何の話かって？ 〝神様〟についてはこちらの佐々木啓太様の記事を御参照ください。 ちょうど「9215の炸裂する作例シリーズ」の次の投稿は絶対このレンズだなと思っていたところで、タイムリーにこちらの記事を見つけてしまいきっかけを頂きました。こちらの投稿ではまさに神様のお仕事というべきものを見せて下さってます。 さて、マイクロフォーサーズの前身はフォーサーズ規格というものでした。このレンズはフォーサーズ規格専用レンズですので、現行のオ

【備忘録】ためになる小説家の手法

長編を書くための参考として 村上龍村上春樹 村上龍と村上春樹を比較しましたが村上春樹はこんなふうに語っています。 村上龍の手法も村上春樹の手法も物書きにとって〝あるある〟だとは思うのですが、どうして村上春樹の記事にこんなにも紙面を割いてるのかというと私にとってのこの手法はあまりにも馴染みがないためだからです。 「僕は何も考え出したりはしないで、ただ何かが起きるのをじっと待っているだけなのです」 っていったい何？何なんですか？ってな具合です。村上春樹すごいわ… タイト