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パニック障害と生きていく


4年前、パニック障害と診断された。


それは突然だった。
20代後半、働きながら歯科衛生士学校の夜間部に通っていた私は、いつも通り授業を終え、いつも通り帰宅ラッシュの電車に乗り、いつも通り帰路についていた。


いつも通り、電車がトンネル内に入る。
なんだか呼吸が苦しくなってきた。
おかしいな、息がうまく吸えない。
いつもと変わらない車内のはずなのに、今日は酸素が薄く感じる。
とても狭苦しく感じる。
心臓が破裂しそうな勢いでドキドキしてきた。
ドバドバと冷や汗が出る。
手足が震えて止まらない。
視界が狭くなり、吐き気もしてきた。


ここは満員電車のど真ん中。
座りたい。座れない。しゃがみ込んだら周りにどんな目で見られるだろう。
ここで吐いてしまったら周りの人にとても迷惑がかかる。白い目で見られる。何が何でも我慢しなくては。


必死に自分に「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせ、なんとか次の駅で電車を降り、這いつくばりながら帰宅した。



あの悪夢のような日から、私は電車に乗れなくなった。
「またあんな風になったらどうしよう」
そんな不安が脳みそにまとわりついて離れないのだ。
今こうして当時を思い返しながら文章にするだけでも動悸がしてしまう。


それから生まれて初めて心療内科に通院した。
パニック障害と診断された。
あの日から、私の人生はガラリと変わってしまった。


自宅から電車で1時間半かけて通学していた私は、当然学校に行けなくなった。
実習にも行けなくなった。
卒業に必要な実習時間が足りなくなり、留年した。


離れて住んでいた両親は私の病状がよくわかっておらず、留年したことに対して怒り、そして呆れていた。
20代後半にもなる大人がまともに学校も卒業できないなんて。ましてや自分の娘がそんな情けない大人だったなんて。
親としてそう思うのも当然である。自分でもそう思う。


自分でもそう思うからこそ、辛かった。
周りの人が当たり前にできることができない。
学校を卒業するどころか、たった1駅電車に乗ることすらできない。
スーパーのレジの列に並ぶのも怖くなった。
やがて、外に出ることさえも怖くなった。
普通に生きていた頃には、もう戻れない。
「どうしてこんなこともできないんだろう」と、毎日毎日、自分で自分のことを責め続けた。



そのままうつ状態になった。人生のドン底だった。
「もう死にたい」と何度も思った。でも、そんな勇気はなかった。
毎日呼吸をするのが精一杯だった。
周りの人間たちは爽やかな草原を軽やかな足取りで進んでいくなか、私だけ暗い底なし沼の中を必死にもがきながら歩いている感覚だった。



そんな地獄なような日々も、過去になった。
あの日から4年が経った今も、私は生きている。
パニック障害といっしょに、生きている。


そして、今これを読んでくれているあなたも、生きている。
まさに今、パニック障害に苦しんでいる人かもしれない。
「こんなに辛い日々が永遠に続くのか」と、絶望しているかもしれない。
あの日の私と同じように、生きることを投げ出してしまいたいと思っているかもしれない。


忘れないで。
あなたはひとりぼっちじゃない。
今は、途方もない孤独に襲われているかもしれない。自分だけ違う世界に取り残されたような感覚に陥っているかもしれない。
けれど、少しだけ顔を上げて辺りを見渡してみれば、手を差し伸べてくれる人は必ずいる。


人は一人では生きていけない。
どんなに強い人でも、一人で生きてきた人なんてこの世のどこにもいない。
人は支え合って生きていく。
あなたを支えてくれる人は、必ずいる。

今は気付けなくてもいい。
自分の体や将来のことを考えるだけで精一杯。
それ以外のことを考える余裕なんてあるわけがない。それでいい。


けれど、これだけは忘れてはいけない。
差し伸べられている手を見つけることを、放棄しないで


こんな私でも、周りの人達にたくさん助けてもらって、今日まで生きてこられたんだ。


外に出られるようになった。
スーパーに買い物に行けるようになった。
薬を飲めば電車に乗れるようになった。
卒業を諦めかけていた歯科衛生士学校も、2年前にちゃんと卒業できた。
国家試験にもちゃんと合格できた。
それから病気と向き合いながら色々な仕事を転々として、ようやく自分に合った仕事を見つけることができた。
毎日仕事に行けるようになった。
愛する人と、結婚することができた。

あなたも、絶対に大丈夫。
永遠に続く夜なんてない。
近付いている夜明けに、気付くことができますように。



おわりに


ここまでお目通しいただきありがとうございました。


パニック障害は、完治に時間がかかると言われています。
きっと私も、この病気と長く付き合っていくことになるのでしょう。

どうせ長く付き合うのなら、抗うのではなく、上手に付き合っていけるようになりたい

これから私のnoteでは

・私自身の経験談
・普段の生活の中で心がけていること
・日常の中で感じたこと

など、今現在パニック障害で悩まれている方の心の背もたれになれるようなコラムを、日記感覚でゆるゆると執筆していこうと考えています。

(ただ、私自身もまだまだパニック障害ですので、ときどき弱音コラムを投げてしまうかもしれません。そのときは優しく見守っていただけますと幸いです。)

また、「周りにパニック障害で困っている人がいるけど何かしてあげられることはないかな?」と悩んでいる方も、少なからずいらっしゃると思います。
そんな方にも参考にしていただけるようなコラムも執筆できればと思っております。


私は医師や専門家ではありません。
ですが、当事者として、同じ悩みを抱えている方の心に寄り添うことはできます。

これから、少しでもみなさまの心を軽くするお手伝いができますように。




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