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チェックバックのルール

ディレクションする人にとって大事な仕事。というか、中心になって来るし仕事。それかチェックバック。
なかなか大変な作業だし、量と時間との戦いでもある。

今回は自分で決めているチェックバックルールをご紹介したい。


ルール1 : 修正依頼は2回まで(1工程につき)

今回は3Dのゲーム開発、モデリング関連のチェックを例に挙げる。
3Dの場合チェックにはいくつかの段階がある。

■3Dモデルのチェック工程
・2Dデザイン画、3面図
・ラフモデル
・ハイモデル(ディテールあり)
・エンジンに持ち込んでからのルック(シェーディングなど含め)

大雑把だけど…

↑のように、1体のモデルができるまでに何段階かの工程がある。
1工程で完結しないので、それなりに長いお付き合いが必要。

チェック1回目

●まだラフなので、初見は俯瞰して大きな部分の指摘
・デザインの意図、勘違いなど根本的な部分の補正
・デッサンの狂い、体型バランス
・全体なデザインラインと比較して合ってるか否か?
・全体の印象を中心にチェック
・余程酷く無ければ赤ペン入れず文字ベースでチェックバック

チェック2回目

●チェック1回目の振り返りと細部を含む具体的な指示
・一回目のチェックバック内容をおさらい
・前回の修正が残っていても直った前提で確認
・今回は一歩踏み込んでディテール面のチェック
・なるべく赤ペン、補足画像で具体的に

チェック3回目(2回目のチェック確認)

●修正が反映されて大きな問題がなければOK
・これ以降なるべくなら修正依頼は出さないで済むのが理想
・自力で可能な範囲で修正・自力で描いた後、清書だけ依頼
・ピンポイントの指示でOK出せそうな場合は限定的に修正依頼
・軽微な修正なら次の工程での課題として持ち越し
 ・次の工程に残りの課題を正しく伝える必要はある

※やり取り回数がまだ少ない人の場合は例外
テイスト、クオリティーラインを把握して貰うために、回数がかさんでも手を入れつつOKまで持って行くのが大事


ルール1 : その理由

3回目以降は、何だかお互いしんどい
同じものに3回目以降の修正はお互い疲弊して来る。
パフォーマンスも出にくく、それに要する双方の時間もかかって来てるし。
コストも初期見積もりから徐々に乖離して来てしまうはず。
ダメ押しで「ココだけはお願い!」って感じで限定的に出すか、手直ししたものを整理(清書)して貰うような終わりが見える形はOK。

持ち越しもアリ
その先の工程がある場合は、次の工程で巻き返しを考えてもいい。
その場合、次の工程での改善も含む作業を依頼できるデザイナーを選んだ方が安全。
持ち越しになった課題は正確に伝えて二次災害が起きないように注意。

自分に非は無いのか?
2回、3回で何とかできないのは、ディレクションが的確で無い可能性もある。または、アサイン(依頼するしないの判断)ミスの場合もあるが、それも自分の責任。
人によってはイライラもするでしょうが ↑ のように結局は「自分の責任」なんだからキツくならないように意識的にセルフコントロールしよう。
時に粘り過ぎず、そっから先は自分で何とかするのだ!って開き直りも必要。(ただしコレばっかりやると自分が疲弊するので要注意)

チェックは続くよどこまでも
他にもチェックは次々来る。
長々と引っ張れば、落ち物パズルの如く積み上がって来る。
特に2D段階のチェックは短いスパンで量もこなす必要があり…
完璧主義で挑めば自分が潰れ兼ねない。
ココの力加減が難しいところだけど、割り切りや開き直りできるか?も能力の内と思ってサバくのだ。

完璧も妥協も実は無い
仮に人を頼らないで全部を自力でやろうが完璧には届かない。
その時々で自身の裁量の範囲内で "最善と思われる" 判断をする。

色んな制限の中で良い落とし所を見つけて先に進むためには ↑ のようなルールは持っておいて損は無い。
これは、あくまで参考例なので環境と自分の能力に合わせて独自のルールを作ってみるといい。
最近のゲームを尺にすれば、映画どころか下手すりゃドラマ1シーズン分に収まらない場合だってある。それに、無事完成に漕ぎつけて世に出る保証もない…
だからこそ、都合のいいこと言うようだけど ”臨機応変” に、細部1つ1つに ”完璧” を求め過ぎるよりは "完成" を目指そう。
それくらいの気持ちで挑まないと「ココぞっ!※」っていうコダワリを貫きたい所に手が回らなくなってしまう。

※「ココぞっ!」もまた大事。でも全部をそのレベルでやるのは無理


ルール2 : まず感謝、そして間違ったら謝る

感謝
2つ目のルールは簡単というか当たり前のこと。
作業してくれた方に感謝の言葉を忘れない。
「修正頂き、ありがとうございました!」
などうまく行っても行かなくても同じ。
気持ち良く作業して、お互い次も頑張ろうと思えるよう
感謝の言葉は大事。

謝る
自分の判断がクライアントさんの要望と食い違う。
相手の意図を見誤ったり見落とす。
お待たせしてしまう。
など相手を困らせてしまったら当たり前に謝る。
次に同じことが起きないように気を付ける。


ルール3:上から言わない

以前の記事でもディレクションする立場に
ついてエラいエラくないの話しを書いた。

たまに勘違いしている人はやはりいる。
ディレクションは役割りが違うだけで上下関係(工程で言うと上流だけど)とは違う。
高圧的な物言いや命令口調はもっての外。

■「〜して欲しいです」も微妙ではある
チャットの会話で見かける

「〜して欲しいです」
「〜したいです」

のような言い方。

自分的にはコレ、ですます調であっても十分上からの物言いだと思う。
この言い方は主語が発言者の ”自分” に見える。当たり前なんだけど。
使う場面次第ではあるけどチェックの場面で聞き手側に回るとコレ、 ”自分に" して欲しいことを要求されているようにも感じる。
すっごく些細なことだけど…

■チェックは誰かのためではない
筆者の場合は、ちょっと回りくどいが

「〜して頂くとより良くなりそうです」
「〜のようになれば〜として良さそうです」


自分の要望でありつつも客観的に制作物を良くするための発言と考える。
ここでの主はチェックしている ”自分” ではなく一緒に作っている "制作物" と捉えないとやらされている感じがする。

少し文章が長くなってしまうデメリットはあれど…気持ち良く仕事したいし。


まとめ

と今回は3つのルールをご紹介。

1.修正依頼は2回~3回が精神衛生上の限界(でも2回が理想)
2.感謝と謝ることを忘れない
3.上から物を言わない

細かく言い出したらキリないけど、自分はこの3点を意識している。
今後も続く長いキャリア、双方気持ち良く仕事して次のプロジェクトでも一緒に働きたいと思える関係でありたい。

誰しもイヤな思いはしたく無いし、させたくも無いだろう。

誰に教わったわけじゃなく、色んな人を見て来ていつしか自分なりのやり方として定着したのがこのルール。

世の中、悪気は無いけど強め、上から、偉そうに発言している人は多くいる。多少は時短にはなるのかもしれないけど、そのために失ってしまう物を思えば多少時間かけて丁寧にやっても全く損はない。

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