ある女子高生の日記 毎週ショートショートnote
*「母の日」に相応しくない内容です。気になさる方はご退出ください
ある女子高生の日記 【411字】
記憶がモノとして売買されるようになって久しい。
当初は見向きもされなかったが、今やゴミ箱に投入れるような気安さで取引されている。
他人の失恋や思い出したくない苦労話など誰が好き好んで、と思っていたが案外愛好家がいると聞く。
先日、仕事帰りに立ち寄ったショップで「ある女子高生の日記」というのを手に入れた。長い記憶冷凍期間を経たものらしく、登場するアイテムも古い。
いきなり母親の再婚から始まるそれは朧げな記憶が多い。ただ義理の父親の脅威を感じながらの暮らしぶりに気が滅入った。延々と続くかのような嫌がらせ、虐め。しかし母は手を差し伸べてくれなかった。何よりもそれが悲しい。
ある日、襲ってきた父親を手近にあった剪定鋏で刺してしまった。その恐怖に耐えかねて自分の腹も刺した。
正当防衛が認められ、お咎めはなし。
しかしそんな記憶を持つ女子高生の日々に楽しいものはなかった。
ある日、お腹を出して眠る妻の腹にその傷とよく似た痕を見つけた。
了
たらはかにさま
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