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ふわふわ38歳

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静かな湖

静かな湖

今から1年半前のこと、絵の具を使って絵を描くワークショップに参加した。お題は「自分がやりたいことをしている瞬間」みたいな感じだったと思う。
わたしは、夜の湖を描いた。
木に囲まれていて、夜空に星が輝いていて、畔にたくさんの花が咲いている、静かな湖。

自分でお金を稼げるようになった高校生の時から、わたしの頭の中はずっと忙しい。常に何かしらの考えが頭を占めていて、浮かんでは消え、浮かんでは消える。

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推しの美容師

推しの美容師

引っ越すたび、自分に合った美容院を探してさまよう。何軒も渡り歩いては、また変える。

わたしは美容院で自分のことをあまり話さない。ちょうどいい力加減で話すことができなくて、美容師さん相手に全力のサービストークを繰り広げ、家に帰ると疲れ果ててしまうからだ。それで、いい感じの距離感で接してくれる美容師さんが好きだ。
クチコミや写真を見れば、店舗の雰囲気や技術力についてはなんとなくわかるけど、美容師さん

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「かわいい」と一緒に生きていく

「かわいい」と一緒に生きていく

何年ぶりかにiPhoneの機種変更をした。
本体の色は迷わずピンクにしたけど、ケースを選ぶのは丸4日かかった。何かを選択するということは、著しく脳のエネルギーを消費する。

iPhoneを便利に、快適に使いたい。
それ以上に、絶対にかわいいものを身につけたい。
誰にどう思われるかということはどうでもよく、来る日も来る日もiPhoneを目にする度に「は〜わたしのiPhoneかわいい!最高!」と思って

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薄くて長いつながり

薄くて長いつながり

プロレスが好きで、しょっちゅう観に行く。
しょっちゅう観に行くと、友達がたくさんできる。
その友達のみなさんから、観戦の度にお菓子をいただく。
こういう、友達同士でお菓子を配る文化のことを、とても面倒くさいと思っていた。
幸か不幸か、これまで職場にも友人関係でもそのような習慣がなかった。

お菓子は大好きだ。もちろん全部食べる。
だけど、相手にそんなつもりがなかったとしても、受け取ればお返しをしな

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新婚からの卒業

新婚からの卒業

この2月で結婚4年目に入った。
3年間を経て初めて、夫と足並みをそろえて2人で人生を歩いているという実感がある。

昨年秋、わたしは過労で休職した。
年末年始、夫が尿路結石で入院・手術をした。
無事に夫が退院してからも、わたしのインフルエンザ感染、夫のコロナウイルス感染が続いた。
これまでの人生で最も健康について真剣に考えた数ヶ月だった。

結果として、わたしは自炊をするようになった。
ずっとした

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山のふもとの裾模様

山のふもとの裾模様

美容学校に通いはじめて丸1年。
わたしは2年生になった。

先日、着物について勉強していた時に「裾模様」という言葉を覚えた。裾模様は、着物の裾部分にのみ絵柄が入ったデザインで、既婚女性の第一礼装である「留袖」の総称でもある。
江戸時代には着物全体に柄が描かれた「総模様」だったが、やがて華やかな帯とのバランスを考え、裾のみに絵柄が施されるようになった。

小さい頃から、何度も聞いていたもみじの歌。

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野に咲く花のように

野に咲く花のように

毎年、年賀状を送ってくれる同級生がいる。

今年の年賀状は、やや遅れて2月に届いた。彼は3人の子どもと奥さんと一緒に、遠く離れた北国に暮らしているらしい。去年母校を数回訪れる機会があって、建物はガラリと変わっていたけれど、あいちによく元気をもらったことはしっかり思い出したよ、と綴られていた。

高校時代、わたしは彼に片想いをしていた。
彼は同じ学年で入学したけど、1年留学して、帰国してからは1つ下

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