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のびのび36歳

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好きなもの、考えてること、思い出。 隙間時間で書きとめた、36歳を生きた証の日記。
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優しさのリレー

優しさのリレー

夫と熱海に花火を観に行った。
付き合いはじめてすぐコロナ禍を迎えた私たちは、一緒に花火を観たことがなかった。今年こそは一緒に観たいと意気込んで出かけた。

ところが、開始1時間前に大雨になった。雨の予報ではなかったのに。仕方なく、私が持っていた晴雨兼用の折りたたみ傘を2人でさしたが、雨は強くなるばかり。夫はもう1本の傘を求めてコンビニに向かった。

夫を待っていると、後ろから声が聞こえた。
「僕た

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繋がらない点があったっていい

繋がらない点があったっていい

もうすぐ2022年が終わる。
この1年で1番大きな出来事は、間違いなく学校に通い始めたことだったと思う。

私はこの10月に、資生堂美容技術専門学校に入学した。美容師養成のための学校だ。
私は「美容師通信科」で学んでいて、3年間かけて美容技術を学ぶ。3年生になったら、美容師の国家試験を受ける。

私の本職は広告代理店の営業。結構激務だ。
仕事は楽しく、職場もそれなりに快適で、すぐに辞めるつもりはな

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清濁併せ呑む

清濁併せ呑む

新婚生活がはじまって1年半が経った。

この1年半を表す言葉は「清濁併せ呑む」の一言に尽きる。
海は清流も濁流も、緩やかな波も激しい波も、区別することなくすべてを受け入れることから、「善悪の区別をすることなく来るがままに受け入れる人」を指す言葉だという。
いいことも悪いことも、一緒に飲み込む。
結婚生活に1番近い言葉だと思う。

好きな人と一緒に生活できることは、たまらなく楽しい。
だけどその好き

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山のごちそう

山のごちそう

夫の知人が、山梨の山中で1人暮らしをしている。
そのお宅に、夫と2人でお邪魔するようになった。
そこでいただく食事が、最高においしい。

知人は必ず、みんなで作れるメニューを考えてくれる。現地で採りたての野菜をつまんだり、地元のワインを飲んだりしながら、3人でワイワイ作る。

たとえば、たっぷりの玉ねぎと挽肉に、隠し味のセロリを加えた、ミートソースパスタ。
野菜を切るのは私、炒めるのは夫…と代わる

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おやつも渡せない時代に

おやつも渡せない時代に

6歳から、片道1時間半を電車で通学していた。
周りの大人が「えらいね」と褒めてくれたけど、自分にとっては当たり前だったから、くすぐったかった。

電車の中で本に夢中になっていると、よく大人が「どこで降りるの?」と声を掛けてくれた。
私が降りる駅になると、肩を叩いて教えてくれた。

そうじゃない時は、読書に没頭するあまり、度々電車を乗り過ごした。
気づいたらまったく知らない駅にいて、途方に暮れた。

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答えのない世界

答えのない世界

オフィスで先輩に話しかけに行ったら、先輩が自分の悪口をメールに書いていた。入社して2年目のことだった。

「あいちさんは自分に自信がありすぎて怖い」
と、書いてあった。

よせばいいのに、気が強いから見て見ぬふりができなくて、「自信なんてないですよ」と先輩に話しかけた。先輩は少し凍りついた後、「いや、まぁ」と苦笑いしていた。

異業種から転職して、営業としてチームのフロントに立っていた。迷いだらけ

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お客さんが好き

お客さんが好き

オンライン英会話で仕事のことを話していて
My clients have raised me up.
と言うと、
What do you mean? と聞き返される。
こういう感覚は日本人特有なんだろうか。

私はクライアントに育ててもらった。
入社してひと通り基本的な業務を教わった後、上司は「とにかくやってみなさい」と自分のクライアントを私に引き継いでくれた。

そのクライアントとは、もう5年の

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ゆっくり、丁寧に

ゆっくり、丁寧に

このIoTの時代に、ボタン付けはどうしてこんなにアナログなのだろう。

穴がふさがっているのではと疑いたくなるほど、糸を受けつけてくれない針をにらみつつ、心の中で悪態をつく。

めんどくさいから、いつもは裁縫から逃げ回っている。
この度、ついにボタンのとれた服が3着に達したので、しぶしぶ重い腰をあげた。
こういう細かい作業をする時に、必ず思い出すシーンがある。

小さな時から不器用だった私は、めん

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