平林周

年4回渡米しアメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中。 デ…

平林周

年4回渡米しアメリカ小売業を研究&グローバル・デジタル・ビジョナリーとして活動中。 デジタルマーケティングの分野で幅広い経験を持つ。革新的なデジタル戦略を用いて、小売業の変革を推進することに情熱を注いでいる。ストアDXという分野での成功を掴むための実用的なアイデアを配信中。

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日本企業のDXを阻害する、年功序列という呪いの話

日本企業の現状とDXの必要性  日本の企業文化は、長きにわたり上下関係や年功序列を重視する「タテ型社会」の影響を色濃く受けてきました。この垂直的な構造は、意思決定の遅れや新しい取り組みへの抵抗など、企業活動における種々の非効率を生み出す一因ともなってきました。一方で、ビジネス環境をとりまくグローバル化の波は、日本企業に対しても大きな影響を及ぼしています。  また、デジタル化の進展に伴い、ビジネスモデルの変革やイノベーションの加速が求められる時代を迎えています。こうした状況下

    • 日本小売業のリテールメディアへの誤解「Walmartから学ぶ本質とは?」

       近年、リテールメディアの可能性に注目する小売業者が増えていますが、その中でWalmartの成功事例は特に注目されています。Walmartのリテールメディア事業、Walmart Connectは、広告収益を大幅に向上させただけでなく、顧客体験の向上にも大きく寄与しています。しかし、リテールメディアを単純に「お金が儲かるもの」と楽観的に捉えるのは危険です。今回のコラムでは、Walmartの事例を通じて、リテールメディアの成功には多大な努力と戦略的な投資が必要であることを論じます

      • Walmart Connect仕組み解説

         Walmart Connectは、Walmartが提供する包括的な広告プラットフォームで、ブランドや販売者がWalmartの広大な顧客基盤と効果的に繋がることを支援します。Walmartは全米で毎週1億5千万人以上の顧客を迎え入れ、90%のアメリカ家庭が利用しているという巨大な小売企業です。2022年には、Walmartの広告事業が顧客との接点を最大化し、広告収益を大幅に増加させました。 以下のフロー図を使用して、Walmart Connectの仕組みを説明します。 ①

        • 日本企業に足りないデータリテラシーの問題点

           デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない小売業界における大きな問題の一つとして、データ活用の誤りがあります。特に、日本企業においては、データリテラシーの不足が原因で、データの取り扱いにおいて以下のような問題が発生しています。 間違ったデータ活用  多くの企業がDXを推進する際に陥る罠の一つは、「とにかくデータを集める」ことです。膨大な量のデータを集めることが重要だと考え、データ収集に奔走しますが、これは多くの場合、逆効果です。データはただ集めればよいというもの

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        日本企業のDXを阻害する、年功序列という呪いの話

          リテールメディア事業は内製化こそ至高である

           デジタルトランスフォーメーション(DX)が進まない小売業界には多くの課題があります。以前、内製化と外注の問題点についてコラムを書きましたが、その中でも、リテールメディア事業の内製化に焦点を当てた問題について考えてみましょう。 内製化こそ至高  リテールメディア事業を成功させるためには、内製化が不可欠です。自社内でリテールメディア事業を運営することで、企業は迅速かつ柔軟に市場の変化に対応することができます。外部に委託することで一時的な成果を得ることはできるかもしれませんが

          リテールメディア事業は内製化こそ至高である

          コミュニケーションレベルの低い日本小売業の嘆き

           デジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業が競争力を維持・向上させるために不可欠な要素となっています。しかし、小売業界では、DXの導入が他の業界に比べて遅れていることが多いです。その背景には、働き方の変化や在宅勤務に対する誤解が存在します。ここでは、小売業がDXに取り組む上で直面している問題について考察します。 働き方の変化  近年、在宅ワークや省人化、そしてテクノロジーの進化が急速に進んでいます。在宅ワークは、多くの企業で導入が進み、特に大都市圏において通勤時間

          コミュニケーションレベルの低い日本小売業の嘆き

          リアルタイム分析の重要性 : 遅延するID-POSデータに価値はない

           小売業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の浸透は、事業運営のあらゆる側面に革命をもたらしています。特にID-POSデータの取り扱いにおいて、リアルタイム分析の重要性が高まっている中、多くの小売業者がデータ遅延の問題に直面しています。このコラムでは、ID-POSデータがなぜ遅れるのか、その影響、そしてWalmartがどのようにしてこの問題を克服しているのかを掘り下げます。 ID-POSデータ遅延の原因 ①古い技術基盤  多くの小売業者が依然として古いPOS

          リアルタイム分析の重要性 : 遅延するID-POSデータに価値はない

          時代遅れのRPA : 小売業を蝕む自動化の落とし穴

           デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せる中、多くの小売業が技術的な解決策を求めています。特に注目されているのがRPA(Robotic Process Automation)ですが、このツールは2000年代初頭から存在しており、最近になってDXブームにより再評価されています。しかし、RPA導入が増える中で浮かび上がってくる問題点も少なくありません。このコラムでは、RPAが抱える課題と小売業が直面するデジタル変革のジレンマについて掘り下げます。 RPAとは何か

          時代遅れのRPA : 小売業を蝕む自動化の落とし穴

          日本から小売業が消える未来

           小売業界は現在、技術の進歩により消費者の購買行動が変化し、企業はこれに適応しなければ生き残ることが困難になっています。このコラムでは、小売業界がどのように変化していくのか、そしてその変化に適応するために何が求められるのかについて考察します。 小売業の未来・変化は避けられない  かつて小売業は、物理的な店舗での販売が中心でしたが、デジタル技術の進化により、その在り方は大きく変わりつつあります。今後、このコラムのタイトルのように小売業自体がなくなるわけではありませんが、その

          日本から小売業が消える未来

          ゼロ戦に乗せられる若手と進歩できない日本企業の話

           小売業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、企業の将来性を大きく左右する重要なテーマです。しかし、その推進には多くの課題が存在します。特に、経営層のITリテラシーの低さと若手従業員の使い捨て構造は、DXの進行を阻害する大きな問題となっています。  まず、多くの小売業においては、若手従業員の中には高いITスキルを持つ者がいます。彼らは最新の技術を理解し、それを活用することで企業の効率化や顧客サービスの向上を図ることができます。しかし、これら若手のスキルが十分に

          ゼロ戦に乗せられる若手と進歩できない日本企業の話

          小売業におけるデータ活用の障壁、ID-POSデータの収集とマイニングの課題

           デジタルトランスフォーメーションが進む中、小売業界においてID-POSデータの活用は非常に重要な戦略的資源となっています。ID-POSデータは消費者の購買行動を詳細に記録し、マーケティングや商品開発、在庫管理の最適化に活用できるはずです。しかし、実際には多くの小売業者がこのデータの適切なマイニングと活用に苦労しており、未熟なデータで不完全な仮説を立ててしまうケースが散見されます。このコラムでは、ID-POSデータの収集とマイニングにおける具体的な課題とその根本的原因を探りま

          小売業におけるデータ活用の障壁、ID-POSデータの収集とマイニングの課題

          DX化と外部コンサルの二刃の剣:選択と監督の重要性

           日本の小売業界におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)は、業務効率化と競争力向上のために不可欠です。この変革を推進する一環として、多くの企業が外部のコンサルタントを活用する傾向にあります。外部コンサルタントは新しい視点と専門知識を提供する一方で、適切な選択が行われない場合、企業に甚大な損害をもたらすリスクも伴います。このコラムでは、DXプロジェクトにおける外部コンサルの利用と、その適切な管理方法について掘り下げます。 外部コンサルの活用傾向  多くの小売企業がD

          DX化と外部コンサルの二刃の剣:選択と監督の重要性

          長老ドリブンからデータドリブンへ、日本小売業の必要な転換

           日本の小売業界においては、伝統的に「長老ドリブン」と呼ばれる経営スタイルが根強く残っています。この手法は、長い経験と年功序列に基づく直感(カン)により意思決定が行われるものです。一見、経験豊富な長老の直感は価値があるように思えますが、デジタル化が進む現代の市場環境においては、このアプローチだけでは不十分なケースが増えています。このコラムでは、日本小売業における「データドリブン」の重要性と、なぜそれが必要なのかを探ります。 長老ドリブンの問題点  長老ドリブンのアプローチ

          長老ドリブンからデータドリブンへ、日本小売業の必要な転換

          日本小売業におけるリテールメディアの誤解とその原因

           日本の小売業界がデジタルトランスフォーメーション(DX)の進行に苦戦している中、特に注目すべき課題の一つがリテールメディアの誤解とその未活用です。リテールメディアは、小売業者が自社の販売チャネルを通じて広告やプロモーションを展開し、収益化する手法ですが、日本においてはそのポテンシャルが十分に理解されていません。このコラムでは、リテールメディアへの誤解がなぜ生じているのか、そしてそれが小売業の成長機会にどのような影響を与えているのかを探ります。 リテールメディアへの誤解

          日本小売業におけるリテールメディアの誤解とその原因

          IT軽視が招く危機、家族経営の影響と日本小売業の未来

           日本の小売業界が直面している最大の課題の一つに、IT軽視があります。特に家族経営の小売業においてこの問題は顕著であり、古くからの経営手法への依存がデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を見落とさせています。こうした状況は、数多くのデメリットを生んでおり、業界全体の競争力低下を引き起こしています。IT軽視がもたらすデメリットとその原因を解説し、解決策を探ります。 IT軽視のデメリット ①顧客体験の劣化  デジタル技術を取り入れた顧客管理やマーケティング戦略が不足

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          令和の時代に求められる日本小売業のDXへの対応

           日本の小売業は長年にわたり、消費者のニーズに応え、日常生活に必要な商品を提供する重要な役割を果たしてきました。 しかし、令和の時代に入り、テクノロジーとデジタル化が急速に進展する中で、小売業の業態も大きな変革を迫られています。かつては「販売のプロ」としての自負も厚かった業界も、現代では新たな壁に直面しています。 販売のプロフェッショナルの再定義  従来の小売業は、物理的な店舗での商品の陳列や顧客サービスに長けていましたが、令和の時代においてはそれだけでは不十分です。今日

          令和の時代に求められる日本小売業のDXへの対応