見出し画像

ロックダウンのNZは、社会全体がロックダウンそのものに習熟しつつある。

本日、ジャシンダ・アーダーンNZ首相は記者会見し、本日深夜0時をもって、オークランドとその他の地域に課せられていたいた警戒レベルをそれぞれ1段階引き下げることを発表した。

今月14日に、オークランドに住むある家族3人が陽性となり、これが感染源の特定ができない「市中感染」と認定されたため、感染源の特定をする間の3日間、ニュージーランドは3度目のロックダウンを実施していたのだ。

本日現地時間午後4時の発表で、それらが一段階ずつ緩められることが発表された。ニュージーランド中で安どのため息が漏れたことだろう。

レベル3は大ごと

昨年3月の最初のロックダウンは全国規模でレベル4を実施した。あれはほぼ完全に人の往来を止めるものだったけれど、今回、オークランドはレベル3、その他の地域はレベル2となっていた。

レベル2であれば公共交通機関でのマスク着用、フィジカルディスタンス、100人を超える大規模な集会の禁止、コンタクトトレース用のアプリの利用などをすれば、基本的に移動の自由に制限はかからない。

ところが、レベル3は上記に加えて移動の自由に制限が加わる。今回、オークランドには居住者とエッセンシャルワーカーのみしか入れなかった。

私は今回のロックダウン中、エアラインのパイロットとして仕事をする目的でオークランドに行く必要があった。出発地の空港では、セキュリティゲートで空港職員に目的地を聞かれ、オークランドだと言うと、社員証と会社からのレターの提示を求められた。

オークランド空港(国内線ターミナル)に着くと、がらんとしているのはもちろん、複数あるターミナルの入り口のうち、ほとんどを封鎖し、一つの出入り口で同じように空港職員による「検問」が実施され、人の流れをコントロールしていた。

その日、私のフライトはオークランドへPAX(自社便で移動)してからリージョナル空港へ飛ぶ予定だったが、いくつかのフライトがキャンセルされていた。ほかにも、オークランド発着の便はかなり間引かれていた。旅行や一般的なビジネス目的によるオークランドへの往来ができなくなるため、便の変更がたくさん出るからだろう。

画像2

細かいところでいうと、レベル2の地域にある空港のラウンジは営業しているが、普段、客が自由にできる料理のとり分けは職員がオンリクエストで行い、セルフサービスのドリンクバーは使えない。レベル3のオークランドでは、ラウンジは営業していなかった。

画像1

やったことがある、という単純な強み

14日に感染例の発表とロックダウンの開始をアナウンスし、翌日から直ちに社会が「ロックダウンモード」で回り出すのを目の当たりにした。今回、通算で3回目のロックダウンを通して感じたのは、当たり前だが、ロックダウンそのものにニュージーランドの人々と社会が順応しつつあること。ロックダウンをやったことがある、その経験そのものが、実は財産になっている。

よく、ロックダウンを何回もやると経済がたもたない、という向きがある。それは確かにそうかもしれない。でも、同時に、1回やったことは経験となり、次にやるときには社会的にも、技術的にも、心理的にも、障壁が下がる。結果的に、ロックダウンするまでの時間を短くすることが出来る。

航空業界に限って言えば、航空会社、空港管理会社、警察、空港の中で営業するレストランや小売店、それぞれが一夜にして営業の方法を変え、人を配置し、プロトコルを厳格に実施する。今回、大きな混乱がなくそれを実施できたことは、過去に2回やっているからこそだ。そうでなければ、準備だけで3日かかってしまうところだ。

ロックダウン初日の月曜日、会社の社長から社員に宛てたEmailには「Thank you for getting the wheels turning really quickly」という表現で、今回のロックダウンへの社員の対応に感謝の意を表していたが、まさにそういう感じ。慣性のある巨大なホイールを、全社員の力で力いっぱい曲げて、車の方向を90度変えるような、そんな離れ業に、ニュージーランド社会は習熟しつつある。

ロックダウンは、望ましいことではないが

とはいえ、混乱は皆無ではないし、損害は出る。だから、ロックダウンそのものを歓迎する人はいない。特にレベル3では、営業を完全に禁止される業態もあるし、人が集まるイベントなどは軒並みキャンセルとなってしまう。

それでも、上記の記事では、ロックダウンによる経済的損失は当初予定されていたよりも小さく、市中感染の拡大を食い止めていることのメリットのほうがはるかに大きいとある。

ニュージーランドの国内線では、むしろ需要が逼迫し、解雇されたパイロットやフライトアテンダントの呼び戻しが始まっている。

政府は、ロックダウンのアナウンスの2日後に国会で法律の改正を審議し、ロックダウンが7日以上に及んだ場合、さらなる経済的な支援を事業主が受けられるように、急いで準備していたようだ。

ニュージーランドは、人口が500万人。一億人を超える日本と単純に比較はできないが、人口の多寡を隠れ蓑に、何も「しない」ことを「できない」と言い換えることはただの思考停止だと感じる。

ロックダウンは痛みを伴うし、望ましいことではないけれど、だからこそ、ニュージーランドがうまくやっているのは、ただ人口が少ないから、だけでは決してない。

私は、意思と勇気の問題だと思う。単純なことなんだ。


***

いつもAshのnoteをご覧いただきありがとうございます!

色々やってますので、よかったらのぞいてみてください。オススメを適当に見繕いました。

その他無料マガジンもありますのでのぞいてみてください。

よろしくね!





たくさんの方々からサポートをいただいています、この場を借りて、御礼申し上げます!いただいたサポートは、今まではコーヒー代になっていましたが、今後はオムツ代として使わせていただきます。息子のケツのサラサラ感維持にご協力をいただければ光栄です。