あにぃ@掌編小説家もどき

小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学…

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小説家を目指して言葉を紡ぐ。 2024.1 毎日18時に1000文字程度の掌編純文学更新。「18時からの純文学」 過去作品...... ★『365日の記念日小説』(2020.10~2021.9) ★短編少々... 一人で何人もの毎日を生きていきたい。

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超掌編小説始めます@あにぃ

はじめまして、もしくはお久しぶりです。 「あにぃ」と申します。 イイ歳をした小説家志望です。 ★2024年1月1日より、超掌編小説の毎日18時投稿を開始致します。 どうぞ末永くよろしくお願い致します。 ------------------------------------------------------------ 以下、私の略歴と自己紹介です。 中学生で小説家に憧れ 高校生でがっつり反抗期に入り 短大生で不器用に遊び 社会人になって大人になることを知り

    • 0602_好きの総量

      「好きなものでも、思うだけたくさん集めたら、好きが薄くなるよ」  1か月前の日曜日のこと。高校の同級生4人組で月に一度、定期的に会っていて、その日も集まった。私が、可愛い!好き!と思うと安価なものであれば買ってしまうと言う話をしたら、斜め向かいに座っていた安田が言った。安価な好きなもの、というのは例えばガチャガチャの景品や、100円均一で見つけたむかし好きだったキャラクター文具、お菓子のおまけなど。 「好きなもの、となると用途なんかは関係なく私の手元にあって欲しいって思っ

      • 0601_夜が更けて

         6月最初の空は高く、半袖では肌寒いものの、陽の光があると言うだけでどこか暖かく感じるから不思議だ。私は図書館からの帰り道、少し疲れたので公園のベンチに座って休憩することにした。  リュックにすれば良かったと、柔らかい帆布のトートバッグをベンチに下ろしながらまた思う。道中何度も思ったものだった。腰を下ろし。それを見上げて、ふぅと息を吐く。重かったなぁ、ああ、でも思ったように何冊も借りることが出来て良かったなぁ。そんなことを思って空を見て、雲を追い、鼻から息を吸って は公園のそ

        • 0531_同じラインで

          「あ、写真の人だ!」  職場のトイレの入口で、すれ違いざまに呼び止められた。『写真の人』で私だと認識出来る理由もそのつもりもなかったが、周りには私と彼女の他に誰もおらず、私がそうであると認識するのが自然であった。 「はい、写真の人ですが」  わざわざそう返し、出入り口を塞ぐのもなんだなぁと思って、私は彼女を促しトイレの手洗場に、引き戻した。彼女は社内でも仕事ができるで有名な中堅社員の笠村さん。 「あ、ごめんなさい」  写真の人、と言う物言いが失礼だと思ったのか、トイ

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          0530_鍵を閉めて

           雨が降っていて、ドアはまた開いていた。  鍵はかけず、ほんの少しだけ閉まっているけど閉まってはいないというように。 「誰かがいつか来てくれるかなぁと思ったのよ」  祖母は言った。  誰かと言っても、泥棒が来たらどうするのかと聞くと、泥棒でも良かったのよととても寂しそうに笑った。そして、泥棒が来る前にあなたが来て、それでドアを閉めることができてよかったと言う。ありがとうとも言った。手を差し出され、そうすると私も手を差し出し、ぎゅっと握られた。力無く、その指はシワシワだった

          0529_晴れの日

           からりと晴れた綺麗な1日だった。  晴れて綺麗であるのは空や天気だけではなかった。今日という1日は、私もからりと晴れていた。  ちなみに、昨日までの1週間は全くの曇り空である。雨だって2日に1度降っていたし、雲が厚いから陽もなく、空はいつだってどんよりと暗かった。  その全てが私の心と一緒だなんて思ってはいない。曇った1週間の中で少しも晴れなかったと言う日は無かったし、雨が振らない日でも私は泣くほどに悲しかった時もある。  だから、天気と私の気持ちは同じではない。ただ偶然

          0528_生温さ

           雨だった。梅雨が近づいてきているのか、どんよりとした空気も一緒にやってきた。  私はわざと傘の外に手を伸ばし手のひらを上に向けてみる。一瞬にして右の手の平はびしょ濡れになった。それを、ジーンズの太ももあたりでゴシッと拭いた。ゴワつくジーンズが水をもってして少しだけ柔らかくなったように思えた。  そのまま、ジーンズのポケットに右手を突っ込むと、じんわりと濡れて生ぬるい。微妙に濡れているし、生ぬるいのは気持ちが悪くて嫌な感じなのに、どこかその温かさにホッとしたのも事実。  私は

          0527_ハムかベーコンとエッグ

           たっぷりと出した白い絵の具に、ポチっと点ほどの黒を混ぜた、薄い薄い灰色の曇り空だった。昨日や一昨日に比べると肌寒い夕方であり、何となく、そう言う季節であることを感じさせた。  横山がまだ来ない。  18時に改札を出て駅舎を抜けた先のコンビニにて待ち合わせをしていた。既に15分待っている。幸いにもこのコンビニにはイートインがあって、私はそこでお気に入りのコンビニスイーツとアイスラテを飲んで待っている。ホットラテの方が良かったかと思いながら。  横山とは大学時代に知り合い、その

          0527_ハムかベーコンとエッグ

          0526_私の成分

           そっけない夕方だった。  18時ではまだ明るい空であり、その日は終わらないかのようである。私と品川は駅にいた。帰宅時である。 「そういえば、A社の近藤さん、品川くんの対応が丁寧だったとおっしゃっていたよ」 「え、そうですか。ありがとうございます。僕はいつも佐々木さんの真似をして対応しているんです」 「私の、ですか」 「はい、佐々木さんの対応をいつもお手本にさせてもらっています。これは入社当時からです」  品川が入社したのは10年前である。そんな時から私を見本にしてくれて

          0525_あなたよ

          もしもし、あなたですか。 そう、そうです。私です。はい、今少しこのままよろしいでしょうか。 あなた、なにか少し体調が優れないと聞きました。一日二日で治るようなそんなものではないとも聞きました。それで、はい、その、私にはなんにもできないなぁと思いましたのだけれども、居ても立ってもいられないと思ったのも事実でしてね。 え、ああ、そうなんですね。歌が聞ける程度には体力があるとの事、安心しました。え、そうですか、体力と言うよりは気力なのですね。良かった。ああ、いや、良かったと言うと聞

          0524_白いズボン

          「おはようございます」  玄関口で靴を履く私の目の前を、颯爽と足早に過ぎるのは白いズボンの女性だった。  私の、5歳になる娘が通う保育園の、同じクラスのママさんだ。私は少し遅れておはようございます、と返した。正確にはおはようございましたである。  彼女は白いズボンを履いている。太めのジーンズだった。グッと上げたウエストにネイビーとホワイトのボーダー柄セーターの裾を入れ、高いウエストからは脚が長く見える。身長はどちらかといえば低めの女性であるが、その脚長効果に加えて(もしかし

          0523_本に染み

           パスタを食べながら本を読んでいたら、ソースが跳ねて本に2滴の染みができた。。  慌ててペーパーナプキンを取って拭こうとしたらカフェラテがこぼれる。幸いなのはそれがトレーの上で完結したこと。  私の本には染みが残ったままである。  やだなぁと思いながら仕事に戻る。やだなぁと思いながら資料をアップロードしたら、違う資料だった。気持ちを切り替えようとして立ち上がったら、ロングスカートの裾を踏んでいたようで、ビリッと鳴る。破れた箇所が小さくて良かった。  深呼吸をして、一つずつ

          0522_もしも

           口の中が鉄の味でいっぱいなのは1日分の鉄分入り飲むヨーグルトを飲んだからである。  鉄が不足すると良くないと聞きた。特に女性の体は。飲みきって、鉄分が入り込んだことを味でもって実感しているが、浸透したかまではまだ分からない。 ♪遅すぎることなんて本当は一つもありはしないのだ。なにするにせよ、思ったときがきっとふさわしい時♪  私はこの歌詞を信じて、もう30年になるだろうか、好きなことを続けている。始めることの遅さではなく、私のこれが成功することの遅さを歌詞になぞってい

          0521_私の公生

           仕事なんてそんなもん。だなんて、公生が言うので、だったら納得するしかないのかと、うっかり思ってしまったのだった。  好きなことを仕事にできている人なんて極わずかだし、その奇跡的な人がそれでいて幸せかどうかはまた別である。そもそも仕事なのだから楽しいわけがないのだ。それでお金をちゃんともらえているのなら、それ以上望むのは贅沢と言うものだ。  こんなふうにも公生が言う。  だから、世の人は皆、自分の今の仕事の中で楽しみだとかやりがいだとか、成長への期待だとか、自分なりに自

          0520_両足で飛ぶ

           右足から踏み出すところを左足で踏み出してしまった。  私は悲しくて泣いた。  望んでいたわけではないのに。そう思って、泣いた。でも、よく考えてみればと、少ししてすぐに泣き止んだ。私は別に右足から踏み出そうと思っていた訳ではなかったのではないか。そう思い出し、顔を上げた。空はまだ明るく、それでいて高かった。それだけを救いに感じている。  私は別に右足から踏み出すことを希望して最初に踏み出したわけではなかった。外出する前、私はハンカチとティッシュを持つことや鍵を閉めることスマ

          0519_メガネを通してそれで

           車窓から見える町並みの色合いはその日の天気に左右される。雲一つない真っ青な青空できらきらと太陽が輝いているような日は、工事中のビル群を見ていても全面カラフルな灰色に見えることがあり、私の視界は明るく輝く。一方で、薄暗い曇りの日にはどんなにカラフルな建物がならんでいても総じてグレーがかって見えるのだった。明るさと薄暗さ、彩りとグレー。同じ世界なのにそれはまったく変わる。  そこに雨が加わると、これもまた世界が表情を変える。カラフルでもグレーでも何でも、全てが滲んで見えるのだ。

          0519_メガネを通してそれで