青豆ノノ
初めて書いた長めの小説です。 創作大賞2023応募作「光り輝くそこに あなたがいるから」を纏めます。 全13話です。
『スキ』です。ともう一度伝えたくなる記事を集めさせていただきました。クスっと笑えるものや、熱いメッセージを感じた記事、などなど。私の心に残った素敵な記事をご紹介させていただきます。
自作のショートショート・短編小説の中で、気に入っているものを纏めます。 他人の評価は関係なく、自己満足のためにここに集めていきます。
エッセイを纏めます。
長年の文通相手である「おじさん」に関する記事を纏めます。
祝日の朝早く、ゆうパックが届いた。 私にゆうパックを送ってくれる相手で思い当たるのは一人しかいない。おじさんだ。 おじさんというのは、私の長年の文通相手のことで、昭和19年(1944年)生まれの八十歳である。 おじさんとは、私が一歳の頃に出会った。 おじさんは当時私が住んでいた家の、真向かいにある古いアパートの一階に夫婦で住んでいた。 その頃から、家の前で会えば挨拶を交わし、たまにお土産や、おじさん手作りの料理をおすそ分けいただくという交流
昔働いていた美容室の社長から言われたことを、ふと思い出した。 「セルフプロデュースをしなさい」 「半年間、同じスタイルを貫いて、半年後にガラッと変えなさい」 私にこう助言した社長本人は、確かにある一定期間、オールバックを貫いたり、ハットを被り続けたりしていた。 社長の顧客の多くは、半年間で3回ご来店くださる方々だったので、3回同じ格好の社長を見て、4回目でガラッと雰囲気が変わっていると喜んでいた……のだろうか。 確かに、同じスタイルを貫くと覚えて貰いやすくなるから、
インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。 「だれ?」と姉が訝しむ。 「わたし」とわたし。 「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」 勝手に上がれないからインターホンを押したんじゃないか、とつぶやきながらエントランスのドアを通過した。 姉が住むのはマンションの三階フロアだ。廊下を歩きながら、ひとつひとつ、家の表札を読む。 「しばた…かなもり…にしだ…キム…さかもと……」 姉の苗字がなんだったかわからなくなってきた。姉は三回も離婚と再婚を繰り返している
突然話しかけられ、片方だけイヤホンを外した。今日もその瞬間まで彼女がいることに気が付かなかった。私は基本的に店員の顔は見ない。 私が聞きとれなかった言葉を、店員の彼女は笑顔で繰り返した。 女「今日の珈琲、美味しかったですか?」 青「あ、はい。美味しかったです……(?)」 女「その珈琲、わたしがいれたんです」 青「あ、そうなんですか。珈琲、いれられるんですね」 女「いれられないと思われてました?ハハハ」 青「何となく、役割分担してるのかなって」 ハハハ。 なんのは
床にころがる男と女。それから、壁に背をつけうずくまる若い女。三人は俺がよく知る人間で、死んでいるわけではなさそうだ。 どうやってここへ来たのだろう。狭い半地下の部屋だ。何もない。ただ真四角のこの部屋で、俺が過ごせる時間はわずかだろう。誰に言われたわけではないが、わかるんだ。これは現実ではないからだ。俺にとっての現実など、いまはどこにも存在しない。 「なあ、あんた」 俺とは対角に位置する場所に寝ている大男に声をかけた。 「起きてるか。いや、起きているわけないか。あんた
久々に美容院へ行きました。 10時に予約していて、事前に13時までには帰りたいと伝えていました。 カットとカラーなので2時間、多くても2時間半で仕上がるだろうと、無理のない範囲でお願いしました。担当美容師も「13時ですね、全く問題ないです」と言いました。 ところが最後のシャンプーを終えると、普段見かけないスタッフが二人がかりで私の髪を乾かし始めました。隣の姉妹店からの助っ人でした。 私は、今日はやけに店が賑わっているなあと呑気に構えて、貸し出されたタブレットでマ
帰りの特急くろしおの発車時刻は13:26。三段壁を後にした時点でまだ時間には余裕があった。そこで私は、歩いて数分の千畳敷にもう一度立ち寄ろうと思った。 時間には余裕があるといいながら、今にも雨になりそうな空に心が急いて落ち着かない。三段壁洞窟で買った記念写真を手に持ったまま歩き始めてしまった。 記念写真はQRコードからダウンロードもできる。せっかくなので歩きながらデータを取得。その場で画像を知人へ送った。 画像を送信するとすぐに反応をくれた知人。「パンダ買
旅行とはいえいつも通り五時のアラームで目覚めた。 なんだか体が浮腫んでいる。昨夜のラーメンだ。ラーメンは年間通して二、三回しか食べない。体が驚いている。 すぐに大浴場に行って朝風呂で体をほぐす。白浜温泉は少し塩辛い。 *** 朝食は食堂でフレンチを出してくれるらしい。朝からフレンチて。朝でも昼でも夜でも、フレンチなんていつ食べたんだろう。たしか誰かの結婚式が最後。フレンチて。 ひとりなのは私だけだったし、正直いうと食べ方が「?」なものもあ
旅館の入口ですれ違ったカップルは、何気なく二人で立っているとき、体の片側をぴたりと合わせている。 下駄箱から履物を取る、そんな些細な動作の間でさえ、二人からは離れたくない意志を感じた。それは私の思い込みかもしれないけど、たぶん当たっている。
特急くろしおに乗ってやってきたのは南紀白浜。ネットで〝日本のビーチリゾート〟だったか、検索をしてたまたま見つけた場所だった。 バスの移動が便利で観光しやすい。小説の主人公、18歳の女子高生が訪れるにはちょうどいいかなと思い、その地を舞台に決めた。そして物語に誘導され、私も初めて訪れている。 主人公はこの旅で、架空の安宿に泊まったけれど、私は彼女の倍以上生きているので、ちょっとおまけして大人な宿を取った。 到着したものの、特急くろしおの切符の
泣いているあなたを見ながら、音楽を流す。 [完] #新生活20字小説
旅の始まり、早速新幹線の揺れに酔っている。4月某日、新大阪へ向かう新幹線のぞみの指定席は満席だった。 私は窓側に座り、隣には男の人が座った。音を一切立てない、黒縁メガネにマスクでゲーマーな彼は、右手の親指以外、ほとんど動きがない。静かだという点で、なんとも私好みだ。 有り難い人の隣になったわ、と幸運を噛みしめるついでに豆腐ドーナツを食らい、プラックの缶コーヒーを飲む。時々、窓の外の景色を撮ったりする。 このひとり旅は、先日書き終えた長編小説の舞
青「やせたガールな日常って言うけど、それってわたしのことかな?」 いやいや。あなたは〝ガール〟じゃないから。 青「・・・・そっか。」 それにあなた。昨日旅先でラーメン食べた後に足りなくて、宿に戻ってからからあげクンとチーズケーキも食べてたよね? #青ブラ文学部 #やせたガールの日常 山根さん、よろしくお願いします°・*:.。.☆
〝花 吹雪〟と書かれた名刺を渡された。綺麗な名前だねと言ったら、左隣に座るその女性は僕から少し体を離して、嘘でしょ?、と笑った。 「うそじゃないよ。なんで?」 「ねえ。これ、読めないの?」 そう言って、名刺の文字を細い指先でなぞりながら、僕にもう一度読むように促す。 「はな、ふぶ……えっ」 女性は笑い出した。 「ね、面白いでしょ」 彼女が体を揺らして笑うので、いい香りがする。カウンターの中で、若いバーテンダーがこちらに視線を向けた気がした。 「ほんとだ。なにこれ、芸名
息子のクラス名簿に、元彼と同じ苗字の子。 [完] #新生活20字小説
今日は梅干しと粥。 少しずつ。 またおいで。 [完] #新生活20字小説