(詩)ふとん

春の陽の中に
ふとんが並んで
ほされている

大きなふとんと
それより
少しちいさなふとんが
数枚ならんで

はなうたでも歌いながら
空高く、青くてまぶしい
空高く泳ぐこいのぼりたちを
見上げている

でも
ふとんたちはちっとも
うらやましくなんかない

小さなふとんには
ゆうべ泣きべそかいた
少女の涙が

そして大きなふとんにも
ゆうべ、おとうさんの
胸の中で流した
おかあさんの涙が
しみついているから


春の陽の中に
ふとんが並んで
ほされている

ときより風に吹かれながら
少しずつ、少しずつ
涙のしみが消えてゆく

家の中では
少女と母親が笑いながら
昼ご飯の
支度をしている

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