ナショナリズムに加担する映画
『『RRR』で知るインド近現代史』笠井 亮平(著)(文春新書 1443)
『RRR』はインド映画でも日本で大ヒットし、評判も高いのだが何故か批評する人があまりいなかった。それはラストの8人のインド独立の英雄(インドは部族社会なのでそれぞれ地域の英雄を集めたという感じか?日本だと薩長連合のような)、その中にガンジーが登場しないのであった。その裏側は政権がガンジー・ネール派とは対立する政権になったこと。またGNPでもイギリスを抜いて5位(今日調べたら逆転していて7位に落ちていた)になったのでさらに国威発揚映画だったようだ。
その歴史として日本にも関係のあるチャンドラ・ボースに焦点を当て武闘派がインドで何故受けるのか解説している。まあ、独立戦争はどこの国も好きなんだと思うが。ただチャンドラ・ボースはドイツ・日本・ソ連とそのときにの勢いによって相手を選んでいるのであって、ソ連の影響下になったならば今のような繁栄はなかったかもしれない。
『ガンジー』がイギリス主体で作られたということもあるようだ。ガンジーの無抵抗主義の限界について、独立するときは武力闘争も必要だということなのだが。インドがナショナリズムになっている背景としてイスラムの脅威(パキスタン)があるようで、イギリスという仮想敵を作ることで国をまとめたいのかもしれない。
ガンジーの失敗がパキスタンを分離させたとしているがそうなのだろうか?もともと部族社会であったインドを一つにまとめるのが難しいということのようである。
またガンジーはイギリスで法律を学んだ弁護士であって、日本の東京裁判でもインドの検事はイギリスで学んだというから、ガンジーを尊敬していたと思う。チャンドラ・ポーズを尊敬していたという論調もあるようだが、それは論理が甘いように感じる。裁判という国際法はやはり西欧中心だろうし、その論理にパキスタンを分離させてしまったガンジーへの敵意があるのかもしれない。
あとインド映画でもヒンディー語版とタミル語版があり、それもまた対立関係にあるようだ。インドも一つの民族や一つの宗教でまとめていく困難さを感じる。そこでナショナリズムに導いていくには映画によるプロパガンダがいいのかもしれない。
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