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パレスチナ人は即興で歌って踊れる民族

『ガーダ パレスチナの詩』(2005年製作/106分/日本)監督:古居みずえ


OLから転身したジャーナリスト・古居みずえが、戦火のパレスチナで女性や子供を対象に撮影したドキュメンタリー。パレスチナの古老たちから、イスラエルの建国によって故郷を奪われたパレスチナ人の体験と暮らしを聞き書きするパレスチナ女性ガーダに焦点を当てている。

イスラエルのガザの侵攻は今が一番酷い時だが、この映画はその前の2000年代に撮ったものだ。ただ通常の反戦映画のドキュメンタリーと違い、タイトルやポスターに描かれているパレスチナの人々の笑顔があるように、悲惨な状況を伝えるだけの映画でもなかった。

それはこのドキュメンタリーの視点となるガーダというひとりのパレスチナ女性がイスラムの伝統に異議を唱えながら結婚式を挙げ(イスラム社会は典型的な家父長制で女性は家で決められた結婚をするしかない社会なのだ)、子供を産み、そのなかで第二次インティファーダ(パレスチナ人の抵抗運動)が起きて親戚の子供が犠牲になる。その中で民族的アイデンティティに目覚めるのだが、彼女はパレスチナの歴史を本にすることだった。その中でパレスチナの遊牧民の人が自然の中で歌や踊りで感情表現する素晴らしさを描いている。

それは戦時であっても料理することを忘れずにパレスチナの美味しいものを食べる。実際にどこにいても銃弾が飛び交う中で人々は寄り添って生きているのだ。またそこにいる女性の逞しさというかガーダは一人でも武器を持ったイスラエル兵に立ち向かっていく勇気みたいなもの(子供のためだとか言っていたような)。それは彼女の気質もあるがパレスチナの人が人生を楽しむ民族であって、即興的に感情表現できる歌や踊りに長けていることも影響していると思う。家を破壊され土地を奪われたらそれを即興で歌にする。そうした歌を記録していくのがガーダの「パレスチナの詩」ということなのだ。

それは監督である古居みずえが学生時代に病で死にかけたことで人生の転機として外国に行きパレスチナで知り合ったのがガーダであり、彼女は日本では病気がちなのに、パレスチナでは反対に元気を貰うと言っていたこと。それがパレスチナ人の悲惨な状況でも人生を謳歌しようとする姿がカメラに映し出されるのだった。なによりもパレスチナの女性のパワーが漲っているドキュメンタリーと言えると思う。

しかしこのときよりもさらにガザは悲惨な状況になっていてパレスチナに留まっている人は数多く犠牲になっているという監督の話だった。それでもガーダはパレスチナに戻って本を書き続けているという。


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