ユマニスト

生活や旅で生まれる思いや気づきを言葉に綴っています。羅府新報コラム二スト。南カリフォル…

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生活や旅で生まれる思いや気づきを言葉に綴っています。羅府新報コラム二スト。南カリフォルニアで読まれている日系コミュニティー誌でボランティア編集。

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最近の記事

薩摩のサムライ留学生

鹿児島のいちき串木野市にある、薩摩藩英国留学生記念館を訪問しました。観光客のほとんどいない小さな漁港の海沿いに建てられた洋館は、鎖国の時代にあって、薩摩藩から世界に羽ばたく人材を作るきっかけになった留学生を記念して作られたものです。江戸時代を終わらせ、明治を作っていった鹿児島の侍たちは、幕府には内密のままで19名の若者を海外に送り、文明開化の礎となる西洋の技術を学ばせようとしたのです。その中には後に文部大臣となる森有礼や、東京大学の前身を作った畠山義成や、外交官として条約改正

    • 龍光さんから学んだ、心穏やかに生きるコツ

      起業家として多くのスタートアップ会社を経営し、その後出家して第二の人生を歩んでいる小野龍光さんがOCに来ましたので、お話を聞きました。本来であれば龍光僧侶と書くべきですが、親しみを込めて龍光さんと書きます。彼の最初の一言が衝撃的でした。 「私は袈裟(けさ)のようなものを着ていますが、僧侶コスプレのハゲ坊主の言葉だと思って聞いてください。」 と言うのです。出家のために財産も、人間関係も、全てを捨てて、自分のすべきことをしようという姿勢が見事だと思いました。 龍光さんから教

      • ユマに行く

        今では日本のプロ野球球団が海外キャンプをすることはないのですが、昔は寒い日本を脱出して海外でキャンプをする球団もありました。野球少年だった頃、ヤクルト・スワローズがアリゾナ州のユマ市でキャンプをしていることを知り、いつかユマに行きたいと思っていました。自分にとってのアメリカへの憧れは、ニューヨークやロサンゼルスではなく、なぜかユマだったのです。 そんなことも忘れかけていた時に、「3時10分決断のとき」という西部劇映画を見ました。凶悪犯をユマ行きの列車に乗せるまでの葛藤や銃撃

        • 能登を思う

          さだまさしさんの、LAでの最後のコンサートを鑑賞しました。本当に最後なのかはわかりませんが、最後だと覚悟をして一言も聞き逃さないようにさださんの声を聴いていました。満席の観客の皆さんも、同じ気持ちであったと思います。会場には、「風に立つライオン基金」で日本語奨学金基金特別賞を受賞した倉敷の高校生の皆さんも来場していました。楽しい話の中にも、能登の被災地への復興の思いを伝えてくれました。私も唄われる歌詞を噛み締めながら、能登の事を思いました。 父がまだ元気であった頃、輪島の朝

        薩摩のサムライ留学生

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        • MLBの記事
          4本

        記事

          時間を味わう

          毎年1月には昨年の暦を外して、まっさらな暦を吊り下げます。喜んだり失敗した思い出の時間たちを束ねた昨年の暦を、過ぎ去った過去のものとして葬る作業は、なんとなく後ろめたいものですが、そうしてる間にも時間は過去を作り続けています。 オリバー・バークマン著の『限りある時間の使い方』という本では、 というような内容が書いてありました。平均すれば人の人生はたった4000週間なのだそうです。できるだけ多く、中身の詰まった容器にしようと思ってしまうものです。しかしながら、絶えず容器が流

          時間を味わう

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          大谷翔平選手の入団会見に行ってみた。

          大谷翔平選手の入団会見に行ってみた。

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          お金をかけずに出版してみたら、かけがえのないものを見つけた話

          今まで、多くの出版をお手伝いしてきたのですが、多世代向けの冒険物語である『リトLITTO日本語・英語版』という本ができました。日本語に興味のある英語が母国語の人や、英語を学びたい日本の子供たちのために、簡単な言葉で絵本の様な仕様で作りました。子供だけでなく大人でも楽しめます。著者は皆にカッコちゃんと呼ばれる、山元加津子さん。元養護学校の教員でしたが、映画をつくり、本を出版し、講演会を世界中で行っています。カッコちゃんが出演した『1/4の奇跡』というドキュメンタリー映画を上映し

          お金をかけずに出版してみたら、かけがえのないものを見つけた話

          柔らかい境界線

          今年は柿が豊作だったようで、熟しても枝に付いたままの柿が多く、それを目当てに熊が山から降りてくるのだというニュースを耳にしたからでもないのですが、庭に毎年実る柿を長い竹の棒を使って収穫してみました。特に上の方に実る柿を取るのは時間がかかる難儀な作業でしたので、害獣として駆除されてしまう熊のことなど、あれやこれやと考えながら、ひたすら柿の実を落としていました。 地球温暖化で、最近は熊も冬眠ができなくなっているというニュースもありました。冬眠しないと、お腹が空いてイライラした状

          柔らかい境界線

          壁と卵

          作家の村上春樹氏が、2009年にイスラエルでの最高の文学賞であるエルサレム賞の授賞式に参加しました。70年以上も続く中東戦争の当事国であるイスラエルからの招待でした。村上氏は受賞の演説で、下記のように演説しました。 話された瞬間には理解ができないほどに美しく見事な例えで、圧倒的な軍事力のイスラエルと、壁に囲まれた天井のない監獄であるガザ地区に住む人々の現状に対する自分の考えを表明しました。政治的な思惑と、宗教的な争いに翻弄されるエルサレムで、イスラエル批判のような発言をする

          ぬくもり

          映画『釜石ラーメン物語』(今関あきよし監督作品)は、釜石でラーメン屋を営んでいた母が東日本大震災の津波で行方不明になり、音信不通になっていた娘(主演の井桁弘恵さん)が故郷に帰ってくるところから始まります。釜石ラーメンは、労働者が早く食べられるようにという配慮から細麺でできた醤油味に特徴があります。病気で倒れた父の代わりに、最高のラーメンを作るために奮闘する姉妹の物語です。 有名なラーメン映画といえば『たんぽぽ』(伊丹十三監督作品)は、売れないラーメン屋を立て直す物語。『ラー

          大谷翔平の今シーズン最後の投球を見に行った。

          もちろん。見に行く前には今シーズン最後だと思っていたわけではなく、今季11勝目の勝利と、44号ホームランを見に行くためだった。しかし報道されているように、結果大谷翔平の今シーズン最後の投球を見に行ったことになってしまった。 LA時間の23日の大谷の登板試合は午後1時からのデーゲーム。先日のハリケーンの影響もあって、ダブルヘッダーになったが、ここオレンジカウンティの日中は暑い。野球をするには日差しが強すぎる気がした。 登板日の通常の準備は、30分ほど前からレフトフェンスあた

          大谷翔平の今シーズン最後の投球を見に行った。

          相続された夢

          リトル東京にある日米文化会館の広場にある石の彫刻。何を表現しているのかはわからなかったのですが、ノグチプラザという名前の広場であることを聞いてはじめて、イサム・ノグチを知りました。イサム・ノグチの父親は日本人詩人の野口米次郎で、アメリカ人の母親レオニー(『レオニー』という映画でも描かれました。)との間にロサンゼルスで生まれた日系二世であり、二十世紀を代表する彫刻家、園芸家でした。 イサム・ノグチは世界中にその作品を残しています。オレンジカウンティーのサウスコーストプラザには

          相続された夢

          からっぽの指先

          ファルケンシュタインさんから許可をもらいまして、彼女のポエムを日本語と英語で転載しました。彼女は、日本生まれのアメリカ人です。誰よりも日本を愛し、アメリカを愛し、誰よりも本当のことを伝える使命感を持っています。アメリカの学校では、<戦争を早く終わらせるために原子爆弾が落とされた>という教育がされていました。今でも、変わっていないかもしれませんし、広島や長崎の真実を教えている先生もたくさんいると信じています。日本人だけでなく、アメリカに住む方々が平和の意味を考え、伝える使命があ

          からっぽの指先

          人生の答え合わせ

          先祖の歴史を書き残そうと思いまして、数年前から渋沢栄一氏のことを調べはじめました。日本資本主義の父と呼ばれ、2024年から登場する新一万円札の顔にもなります。その渋沢氏が明治大正期に約500社の設立に関わった中に銀行や保険会社や鉄道がありますが、先祖がそれらの事業運営の指導を受けるために、渋沢氏に度々会っていたという資料を見つけたからでした。 渋沢氏は多くの会社を設立させましたが、その全てがうまくいったわけではありませんでした。成功した会社は今でも残っていますが、おそらくそ

          人生の答え合わせ

          命どぅ宝

          私が糸満の平和記念公園を訪れた時には、海が望める広大な敷地はほとんど訪れる人もいなく静まり返っており、平和の礎(いしじ)と呼ばれた数えきれないほどの石碑には、戦争で犠牲になった二十四万人の名前が刻まれていました。太陽の日差しと海からの強い風が、平和の礎を容赦なく吹きさらしていました。そして、「命どぅ宝 命こそ 最高の 宝である」と記した石碑がひっそりとありました。そしてその裏側には、「戦争は終わった 平和は人の心でつくる 命こそ究極の宝」と、日本語、英語、韓国語、中国語の4カ

          セブンマイル・ブリッジで眠る

          二十代の頃にはじめて訪れたマイアミは、陽気を絵に書いたような街でしたた。日差しが照り続ける中、やっとたどり着いたマイアミビーチ沿いにあったナショナルホテルの部屋で、途中買った本場フロリダのグレープフルーツを初めて食べました。こんな美味しいフルーツがあるのかと感動しきりでした。 マイアミからは、レンタカーでキーウエストに向かいました。当時は宿泊予約することもせずに、行き当たりばったりのホテルに泊まれば良いという気楽な考えで、キーウエストに到着しましたが、空いているホテルはなく

          セブンマイル・ブリッジで眠る