【本に寄せて】虎のたましい人魚の涙(くどうれいん・講談社文庫)
くどうれいんは歌人である…と私は認識していた。
一時期、短歌にハマっていたから、その名前くらいは知っていたのだ。
その人が書いたこの本は、エッセイ集だ。
歌人がエッセイを書くことはべつに珍しくない。
だから「そうか、歌人のエッセイ集か」と思って読んだ。
しかし歌人のエッセイ集、と呼ぶには本格的すぎた。
なんだこれ、天才いたわ。
そう思った。
エッセイでこれだけ話題を転換しながらギュウギュウ書き込んでくる人、初めて見たかも。
それでいてラストはちゃんと元に戻る。
読んでるうちになんの話だったか忘れていても、ちゃんと戻ってくれる安心感ときたら。
そして各エッセイのラストは、深い余韻を残す。
余韻にひたりながら、こういう感性を持っているから歌人なのだ…と思う。
ところで私は、なぜか「くどうれいん」を男性だと思っていた。
男性だと思って読み始めたから、最初は混乱した。
女性だと分かって読み始める世界線に、誰か私を連れて行ってくれ。
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