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【本に寄せて】さよなら、田中さん(鈴木るりか・小学館文庫)

読んだことのない小説家の本を買う時は、ちょっと慎重になる。
あらすじや帯の文章に惹かれても、文体が気に入らないことがあるからだ。

私は「日本語警察」を自認している。
自分自身の文章は大したことがないくせに、他人が書くもの(や話し言葉)にはだいぶ厳しい。

まぁ、「日本語警察」のことはともかく、自分に合わない文体の本が読みづらいのは誰しも一緒だと思う。

その点でこの本はまったく問題がなかった。
試しに最初の数ページを読んでみても、違和感がひとつもない。
それで安心して購入したのだ。

帯にサラリと、とんでもないことが書かれていたけれど。

文学界を騒然とさせた
読み継がれるベストセラー
14歳作家
圧倒的デビュー作
待望の文庫化!!

帯より

文学界を騒然と・・・とか、大げさだろ。
ベストセラーとか、知らんがな!って言いたい。

でも、待って。
これ、14歳のデビュー作だってよ。

もしかしたら・・・児童書的な感じだろうか?

児童書で思い出した。

私が5年生の時、毎週金曜日は「自由学習」という宿題が出る日だった。
漢字ドリルとか計算ドリルとかの日もあったけど、この日は何をしてもいい。

そこで私は金曜日ごとに、児童書っぽい物語を書いていた。
今でもよく覚えている。

仲良しの男女6人組(もちろん5年生)がいる。
主人公は「どうしようか」が口癖の女子、道志洋香(どうし・ようか)。
ある日、洋香と仲良しの男子は、学校の掃除の時間にふたりで焼却炉にごみ捨てに行く。
ごみを捨てて帰るその後ろで、焼却炉からはゆらゆらと人の形の煙が立ち上る・・・。

というストーリー。
ちなみにだけど。
ごみ捨てに行った2人は、実は私自身と初恋の人がモデルになっていたりする。

私個人のオリジナルストーリー
(小学5年生当時の自由学習)

文学少女がたわむれに書いた、物語風な何か。
私はその域を出なかった。
しかも書ききるほどの力は持っていなかったから、宙ぶらりんのままだ。

でもこの本は商業出版されたんだから、けっこう良くできた物語だったんだろう。
そう思って読み進めた。

あぁ。

ごめんなさい。
世の中には「才能」を持つ人がいるんですね。
たいへん失礼いたしました。

この本は作者の鈴木るりかさんの14歳の誕生日に発刊されたという。
それなら書いたのは13歳だよね。

いやいやいやいやいや・・・いやいや・・・。
何回いやいや・やいやい言っても止まらない。

安定した文章力でぐいぐい読ませるじゃないの。
あさのあつこか重松清かと思ったわ。

そして社会をよく知っている。
どんな経験をしたらこんな14(13)歳になるの。

経験と想像力と文章力。

タイトルはどうやって回収されるんだろうと思いながら読み進めた。
なかなかその気配がない。

そして最後は・・・そうなるのか!!
ちょっと待って。
なんでそういうラストを用意したの!?

頼む。
誰か、この本の構成について、私の疑問を解消してくれ。


すでに20歳になった鈴木さん。
「さよなら、田中さん」の続きがシリーズ化されているらしい。

続編も早く文庫化して欲しい!!!
切に願う。
続きをはよ、文庫化して。ぷりーず。


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