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井塚は通りの反対側に立って、しばらくその弁当屋を眺めていたが、ようやく何かを思い出した…
駅の改札を出ると、目の前には田畑が広がっていた。そのすぐ先に見える山脈は、ゆっくりと弧…
開け放たれた窓からは秋を感じさせる風と、まもなく夏休みを終える子供たちの声が流れ込んで…
不動産屋だという目の前の二人は、きちんとしたスーツに身を包んでいるものの、どこか胡散臭…
書類の上にボールペンをそっと置き、治夫は両肩をぐるりと回した。凝り固まっていた首筋がバ…
窓から見える地球に目をやったシュンヤは心の中で大きな溜息をついた。ここへ来てから三か月…
部屋の中に置かれたダンボール箱をひと目見て、有音は不満そうに鼻を鳴らした。 大きなダンボール箱が二つ重ねて置かれた上に一回り小さなダンボール箱が無造作に乗っている。その塊が二つあるから全部で六つのダンボール箱が狭い部屋の中に置かれているのだ。 廊下に立ったままトートバッグをドサリと床に置いて、おもむろに腕を組んだ。 「なによこれ」 誰に言うともなく呟いて、もう一度鼻を鳴らした。 「棚」 部屋の奥から声が聞こえた。 「この間いっしょに注文したじゃん」 そう言って箱の
定期購読マガジン『浅生鴨の短編三〇〇』の購読者、およびメンバーシップ『名前はまだない。』…
カフェに入ってきた治夫は、壁際の席でパフェを食べている俊哉をすぐに見つけて手を振った。…
資料を送るからすぐに見て欲しいと言われ、古庄敏夫はリビングのソファに寝転んだままノート…
庭の隅に置いたプランターから勢いよく空に向かって伸びていた青草も、夏も終わりに差し掛か…
関係者用の駐車場に車を駐めた甲斐寺は、バックドアを開けてギグバッグを引き寄せるとストラ…
昼時の商店街に広がった香りに食欲を刺激されて、井間賀は思わずゴクリと唾を飲んだ。見ると…
休日を前にした午後のオフィスには、のんびりとした気配が漂っていた。昨日あれほど激しく降っていた雨はもうすっかり止んで、窓から外を覗けば、濡れて黒々としたアスファルトの駐車場では、陽射しを反射する水溜まりがキラキラと眩しく光っている。やたらと広い駐車場の先に並ぶ工場の屋根は、いつもの通りくすんだ灰色をしていたが、その上に広がる真っ青な空が、まもなくやって来る暑い夏を感じさせた。 可児は大きく伸びをした。あと数時間で業務が終わる。基本的には前もって計画された通りに車を運行させ