河原梓水

福岡女子大学国際教養学科准教授。 日本のサドマゾヒズムとSMの研究をしています。『奇譚…

河原梓水

福岡女子大学国際教養学科准教授。 日本のサドマゾヒズムとSMの研究をしています。『奇譚クラブ』など雑誌の分析がメインです。 論文はこちらで読めます→ https://researchmap.jp/7000013338 Twitterでは研究余滴を→ @kawahara_azumi

マガジン

  • 『SMの思想史』補遺

    拙著『SMの思想史 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望』(青弓社)で引用した史料のなかで、入手が難しく参照困難なものについて、いくつか補遺として画像を掲載いたします。

  • 京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します

    京都大学で2020年10月24日に行われたシンポジウム「緊縛ニューウェーブ×アジア人文学」に対する学術的問題点について書きました。全部で6本あります。①をまず読んでいただければ、どこから読んで戴いても大丈夫かなと思います。長文で申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。

最近の記事

『SMの思想史』補遺③『風俗科学』に見られる『犯罪科学』からの流用その1

補遺3つ目は、拙著の第1部第2章、「第二世代雑誌と弾圧」でとりあげた『風俗科学』に関する補足です。 『風俗科学』は創刊号で「ソドミア(ソドミー)倶楽部」(ソドミア=男性同性愛もしくは男性同性愛者の意)を発足すると表明していることから、これまで男性同性愛の歴史研究で注目されてきました。 しかし拙著では、まず『風俗科学』創刊号の挿絵や執筆者をチェックし、挿絵は多くが1930年創刊の先行雑誌『犯罪科学』からの流用であり(『犯罪科学』はかなり売れた雑誌で、『風俗科学』だけでなく、

    • 『SMの思想史』・補遺②「(愛)読者の皆様へ」(『奇譚クラブ』1954年1月号)

      補遺②は、拙著第1部第2章「第二世代雑誌と弾圧 5 弾圧と廃刊」137~138ページで引用した、『奇譚クラブ』1954年1月号掲載「読者の皆様へ」です。 見ておわかりのように、「読者の皆様へ」ではなく「愛読者の皆様へ」でした。間違えました。申し訳ありません。 内容は、当時の『奇譚クラブ』に対してなされた厳しい弾圧状況を伝えるもので、かなり貴重な内容です。 さて、以前から『奇譚クラブ』を読んでいたり、拙著を隅から隅まで読んでくださった方には(いれば)、なぜこの記事が補遺と

      • 『SMの思想史』補遺①『風俗草紙』創刊予告広告

        先日刊行された拙著『SMの思想史 戦後日本における支配と暴力をめぐる夢と欲望』(青弓社)で引用した史料のうち、現在入手が難しく参照が困難なものについて、いくつか補遺として写真を掲載いたします。 まず、第1部第2章「第二世代雑誌と弾圧——「風俗草紙」以後」で引用した(105ページ)、『特集雑誌オール実話』特別増刊号(日本特集出版社、1953年6月発行)裏表紙掲載の『風俗草紙』創刊予告広告です。 『風俗草紙』は、日本特集出版社刊行の「特集雑誌オール実話増刊」として創刊されてい

        • 京大・緊縛シンポ 主催者からの応答

          はじめに2021年1月に、2020年10月に京都大学で開催された「緊縛ニューウェーブ×アジア人文学」というシンポジウムの問題点を指摘する記事を、noteで6本公開いたしました。 緊縛シンポは、主催者がYoutubeで配信したシンポ動画が、1件の「苦情」に基づき削除された、と広まったことによって、「学問の自由」への侵害、「緊縛は女性蔑視か否か」という論点で「炎上」することとなりました。 私がnote記事で述べたことは、以下のような内容でした。記事内容から転載させていただき

        『SMの思想史』補遺③『風俗科学』に見られる『犯罪科学』からの流用その1

        マガジン

        • 『SMの思想史』補遺
          3本
        • 京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します
          7本

        記事

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します⑥研究者の上から目線

          1.緊縛シンポの「炎上」対応について 緊縛シンポは、「これが学問か」、「女性蔑視」といった市民からの声に対して、「不愉快な思いをさせて申し訳ない」と謝罪し、その批判が来たとされる日(2週間が経過する1日前の11月5日)のうちに動画を公開停止しました。 ウェブ上で多く指摘されたように、この謝罪の仕方は、緊縛はやはり隠しておかなければならないもので、研究の対象にふさわしくない、といった偏見を強め、スティグマ化を強化するものです。非常によくない対応であったと思います。 出口氏に

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します⑥研究者の上から目線

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します⑤出口康夫氏報告&座談トーク

          さて、これまで縷々述べてきましたが、本記事では最後の報告、主催者である出口氏の報告内容と、「座談トーク」として設けられた議論の場を検討したいと思います。 出口氏の報告は、シンポの3報告の中で唯一、学術的な内容をもっていました。そのために、以下述べることは、私から出口報告への学術的批判であって、私の考えが一方的に正しいと主張したいわけではありません。先行研究を批判するようなものと理解していただきたいと思います。加えて、出口氏の報告は哲学の報告です。私の専門は歴史学ですので、こ

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します⑤出口康夫氏報告&座談トーク

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します④吉岡洋氏報告について

          本記事では、緊縛シンポ第2報告、吉岡洋氏「縄と蛇」について短く取り上げます。本記事で言いたいことは、シンポ登壇者の1人・吉岡洋氏は緊縛研究会のメンバーではなく、緊縛を研究したことはない、ということです。 1.吉岡洋氏報告「縄と蛇」について 第1報告のY氏・F氏報告は、先行文献を剽窃していたうえ、その文献が、アメリカの縄師によって書かれた正確ではない内容であり、学術的どころか、偽史を作り上げ流布させる、有害な報告であったと言えます。 第2報告の吉岡洋「縄と蛇」(広報されて

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します④吉岡洋氏報告について

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します③F氏報告パート:緊縛の戦後展開について

          本記事では、引き続き緊縛シンポの第一報告「緊縛入門ミニ講義」のうち、F氏が担当した後半部分をとりあげます。本記事で言いたいことは以下の2点です。 ①シンポでは、緊縛は本来歌舞伎や新派演劇などの舞台芸術に属するものであったが、戦後のSM雑誌ブームを通じてSMの一部として見られるようになった、という史観が提示されたが、これは誤りである。さらに、芸術としての緊縛を上位に、そうではない、SM的要素を含む緊縛を劣位に置くもので、後者への偏見を助長する危険がある。 ②緊縛の歴史を非専

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します③F氏報告パート:緊縛の戦後展開について

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します②剽窃について

          本記事では、私が出口氏に送った批判内容のうち、わかりやすい問題である剽窃について説明します。本記事でいいたいことは以下の3点です。 ①Y氏・F氏報告は、マスターK著『緊縛の文化史』(すいれん舎、2013年)からの全面的参照(剽窃)で成り立っている。 ②『緊縛の文化史』は学術書ではないため、内容に誤りを多く含む。そのためシンポで説明された歴史パートも同様に多くの誤りを含み、結果的に緊縛の歴史に関する偽史が世界に流布されてしまった。 ③緊縛シンポでは、緊縛の起源を武士文化と

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します②剽窃について

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します①ことの始まり

          はじめに はじめまして。日本のサドマゾヒズムとSMを研究している、福岡女子大学国際文理学部国際教養学科講師の河原梓水(かわはらあずみ)と申します。専門は、日本史、歴史学です。 昨年11月、シンポ動画の取り下げをめぐって「炎上」した、京都大学主催シンポジウム「緊縛ニューウェーブ×アジア人文学」(2020年10月24日・京都大学吉田キャンパスで開催。以下、緊縛シンポ)に関して、私はシンポへ批判文を送った者であること、そして、この件について適切な発言ができるのは日本で私のみであろ

          京大・緊縛シンポの研究不正と学術的問題を告発します①ことの始まり