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【感想】映画『落下の解剖学』

先日、『落下の解剖学』という映画を見ました。
物語の概要としましては、人里離れた雪山の山荘で、ある男が転落死している映像が映し出されるところから事件が始まります。
見つけたのは視覚障害のある息子であり、転落死していたのは父でありました。
夫の妻である作家の彼女に殺人の容疑がかかり、夫婦内の深淵な家庭環境があらわになっていく。
夫婦は共に作家であり、創作に対する考え方や意見の食い違いなどがリアルに描かれており法廷ミステリーというようなストーリーではなく、事件の真実について解明していくことはもちろん、ある家庭の人間ドラマとも見てとれました。
事件の真相に迫っていくにつれて、夫婦関係の闇に触れる度、胸を締め付ける感覚がありました。
嘘と真実から浮かび上がる事件の行方は家族の実態へと解剖することが本作に込められた‘‘解剖学’’という言葉の意味なのではないかと感じさせられました。
『落下の解剖学』におけるザンドラ・ヒュラーの法廷での演技力は圧巻であり、ダニエル君の不安定な心の動きを描き多面体の文脈が本作に宿ることによって、理解は観客側の私たちに委ねられるものだと思いました。
本作を改めて、まとめ考えると、法廷サスペンスの体裁をした、とある夫婦の物語であり、カメラワークとして演者の深層心理に迫っていく感じがとてもリアリティがあり、緊迫感のある演出がドキュメンタリー映画を見ているかのような感覚を覚えました。
裁判が進行するにつれて、この映画の中で夫の彼に何があったのかということは最後まで明らかにされません。
真相を知るのは被害者である夫だけしか分からないものであり、私たちは映画の中で真実を憶測でしか語ることが出来ませんが、何を学び、何を感じとるのか、‘‘解剖する’’ことで、初めて理解出来るものがあるのではないかと思いました。

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